幕間 クロード・オステリア
クロード・オステリア
僕はオステリア王国の第一王子だ。
僕は優秀が故に、何をやってもそれなりにこなしてしまう。
常に新しいものを追い求めては達成されていくので、いつだって物足りない。
そんな僕が次に興味を持ったのは、友人リーマスの双子の弟妹だ。
僕にも弟がいるが、比べ物にならないくらい可愛い。
ついつい構いたくなってしまう。
そんな双子は常は王都ではなく領地に住んでいるらしい。
先日、初めて会ったのは双子の誕生日パーティーだった。
パーティーの数日前…リーマスが上機嫌で双子の話をしてくれた。
普段はクールなリーマスを蕩けるような笑顔に変えた双子が気になって仕方なかった僕は、招待されていないのに勝手にパーティーへと顔を出した。
王子だから許されるが、本来ならば咎められても文句は言えない。
そのパーティーで双子に出会い、そしてその可愛さに僕も魅了されてしまった。
シンクロする仕草といい…可愛らしい声といい、何を取っても可愛くて興味深い。
更には双子だけの秘密もあるように感じ取れる一幕もあった。
二人だけの秘密を僕は知りたくなってしまった。
だが…父上でもある国王陛下とリチャード氏の会話で僕は何故か胸が締め付けられた。
初めての感情に訳も分からずにいた…。
リーマスに聞いてみるが「話せない」と言われてしまったので、僕は仕方なく父上に聞いてみることにした。
この国で一番偉いお方だが、家族の時間をとても大切にしてくれるので助かっている。
父上の執務室へ行くと、中には母上もいて何やら少しだけ揉めていた。
母上の用件が終わるまで待とうと部屋の隅にいると会話が聞こえてきた…
どうやらジュードと婚約したリナリア嬢のことのようだ。
母上はリナリア嬢のことを、あまりよく思っていないのか…
「ロザリアの娘だというのに」とか「リリアちゃんはしっかりしていた」とか聞こえてきた。
父上も「リナリア嬢はまだ幼い」だとか「リリアちゃんは私の師であるリチャードとアリアが面倒をみてるからだ」と母上に話していた。
「ところで、クロードは何の用でここに?」
母上の話が終わると、父上も母上も私の存在を思い出したようだ。
「はい、先日お話ししていたリリア嬢の事です。」
僕が話し始めると父上と母上は顔を見合わせる。
「何故、リリア嬢は僕の婚約者候補にならないのでしょうか?」
僕の言葉を聞いた父上は珍しく瞠目し、母上は扇子で口元を隠していた…が隠す寸前に微妙に口角を上げたのが見えた。
「リリアちゃんが好きなのか?」
父上が驚きながらも聞いてくる。
そもそも何故、父上も母上もリリア嬢の事を「リリアちゃん」と可愛らしく呼ぶのだろうか…
「好き…という訳では…。ですが、公爵家の長女のリリア嬢は僕の婚約者候補として真っ先に名前が上がってもおかしくないではありませんか?」
好き…とか、そういう事ではない。
ただ、何故…という思いからだ。
「リリアちゃんもリオン君も“神に愛されし者“だからだよ。」
さも当たり前みたいに父上は話すが全く分からない。
「“神に愛されし者“とは何なのですか?」
そもそも、それと婚約者候補と何が関係すると言うのだろう?
「“神に愛されし者“については勉強ついでに図書室で調べてみるといい。
もし…どうしてもリリアちゃんを婚約者にと言うのであれば、国王になるのを諦めるしかないだろうな。」
父上は面白そうに話すが…そこまでしなければリリア嬢と婚約出来ないという。
「まあ、ジュードを国王にするとなると…残念ながらジュードでは難しい。」
父上がジュードの事をと考えてみたらしいが、ジュードの性格では恐らくは国王へは向かないと判断したようだ。
「…残念ながら、諦めなさい。」
「そうね…リリアちゃんはとても良い子だけど、諦めるしかないわね。」
父上と母上は残念そうに眉を寄せ、僕に同情するような顔をする。
結局、何故ダメなのかを教えてもらえなかったので…図書室に行く事にした。
父上から禁書のコーナーにある書物を教えて頂き、ついでに閲覧の許可証も渡される。
王城の図書室へと入り管理者に許可証を提示すると、禁書のコーナーへと案内された。
図書室の中の最奥の小さな部屋で、扉には魔法陣が描かれていた。
部屋に入れば鍵がかかり、防音などの結界が作動する。
書物は思いの外、早く見つかった。
僕は書物から目的のページを探すと“神に愛されし者“についての記述を見つける。
そして…“神に愛されし者“がどのような存在なのか知る事となった…
リリア嬢と何故、婚約出来ないのかを知り…
僕は再び胸に痛みを感じた。
この痛みは一体なんだと言うのだろうか…
どうしてこんなにも胸が締め付けられるのだろうか?
暫く僕はその部屋から動くことが出来なかった…
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