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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第1章 私リリア!7歳になるの。
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幕間 ある日のクリスティア家

アレスが領地に来て数週間が経った、ある日の午後。


ーーーーーコンコンコン。


お勉強のために今日はリオンの部屋で過ごしていた私。

そこにアレスが顔を覗かせた。

お勉強の合間のお茶を一緒にしようと入ってきたのだ。


「勉強の邪魔だったかな?」

アレスは少しだけ申し訳なさそうにしていたので、私もリオンも首を振る。

ちょうど休もうと思っていたところで、教えてくれていたアリーがお茶を用意していたのだ。


「ちょうど良いタイミングでした。さあ、どうぞ。」

アリーがアレスを席へと案内する。


肌寒くなってきたから、温かい紅茶がホッとさせてくれた。


アレスの頭の上にはモフッとした耳があって、猫舌なのか「アツッ!」と言いながら耳をピクピクさせていた。

実は…アレスの耳をずっと触ってみたいと思っていた私は思い切ってお願いしてみる。


「アレス。」

紅茶に夢中のアレスに声をかけてみたが、反応がない。

おや?っと思いながら、何度か名前を呼んでみた。


「ねえ、アレス。」

三回ほど呼んでアレスはやっと私の声に気づき、ビクッと体を震わせて赤面した。

コホンと咳払いをして気持ちを落ち着かせている。


「ごめん、呼んでた?まだ名前に慣れなくて…。」

「「名前に慣れない?」」

私とリオンは意味が分からずに首を傾げる。


「そう言えば、話してなかったね。身の安全の為にと聖女様に名前を変えてもらったんだ。」

え!?そんな事できるの?

吃驚して目を見開くとアリーがコホンと咳払いをした。

いけない…また顔に出てた。


「聖女様に付けてもらった名前だから、まだ聴き慣れなくてね…。」

アレスはどこか切ない顔をしてしまった。

ご両親の事を思ったのだろう…


「アレスはアレスのお父様と似ているところはあるの?」

話を変えようと思ったのか、リオンがアレスに質問を始めた。

アレスも少し吃驚した顔をしたけど、フワッと微笑んだ。


「うん、僕の父も同じ虎の獣人だったよ。色は白ではなかったけど…目の色は同じだった。」

聞けば獣王国の王族は虎の遺伝子なのだとか…

リオンはウンウンと頷いて更に質問を続けた。


「じゃあ…アレスのお母様とは似ているところは?」

「あぁ、母は猫の獣人でね…真っ白な毛並みだったから僕は白虎になったんだ。」

真っ白なニャンコ…さぞや可愛かったに違いない。


「アレスはご両親から、それぞれにプレゼントされたんだね。」

リオンはにっこりと笑いアレスに微笑むと、アレスは瞬きを繰り返していた。


「ご両親から貰った名前も…いつか元に戻せると良いね。」

リオンの意図に気づき、私も微笑む。

アレスは私たち双子を交互に見て微笑んで首を左右へ振った。


「ありがとう…だけど、名前はこのままでも良いんだ。僕はここに来たあの日…生まれ変わった気がしたんだ。」

切なげに微笑むアレスに…私とリオンは顔を見合わせる。


「だけど、リオンに言われて気づいた。僕は両親から色々なプレゼントを貰っていたんだね。」

リオンはアレスの言葉に嬉しそうに照れ笑いをして「そうだよ!」と返した。


そしてリオンは何かを思いついたのか、ハッした顔をして…その後にうーんと悩み出した。

その表情が可愛くて私は頬を緩ませる。


「アレスお兄ちゃん…って呼ぼうかと思ったんだけどね…?」

うーんと悩みながらリオンは呟いた。

アレスも吃驚しながらリオンの言葉の続きを待つ。


「だけど、アレスはリリアにお兄ちゃんて呼ばれたくないと思ったんだよね!」

うん!と確信したようにリオンは頷く。

アレスはその意味を理解したのか、顔を真っ赤にさせて口元にシーっと指を当てた仕草をリオンに向けた。


「うん?どうして、私にはお兄ちゃんて呼ばれたくないの?」

訳が分からず、私はリオンとアレスを交互に見やる。

アレスは苦笑いを浮かべ…リオンは少し呆れた顔をしている。


「それは…リリアにはまだ分からなくてもいいかな?」

アレスは少しだけ冷めた紅茶を飲みながら、手で顔をパタパタと仰ぐ。

リオンは深い溜息をついて…アレスに内緒話をする。


「リリアは鈍いからね!それに人タラシだから他に取られる前に言葉にして伝えないとダメだよ?」

アレスは飲んでいた紅茶をゴフッと噴き出しそうになった。

私に内緒で一体何を話していると言うのだろうか…

二人ばかりが仲良くて…私が少しだけムウッとするとリオンが私の方を見た。


「そういえば、リリアはアレスに何か話があったんじゃないの?」

あっ!そうだった。

リオンに話を振られるまで忘れていた。


「アレスにお願いがあって…耳とか尻尾を少しだけ触らせてもらえないかな?」

「え?…えぇ!?」

再びアレスは真っ赤な顔で驚く。

表情豊かになったなと思う。


「ダメ…?」

私は上目遣いでアレスにお願いしてみる…

リオンの上目遣いには負けるが、私だって出来るもん。


「うぅぅ…少しだけなら…」

そう言ってアレスは席を立ち、私の横に屈んでくれる。

目の前には待ちに待った猫耳…違った、虎耳!

そっと撫でるように触ると、耳がピクピク動いた。

ふぉぉぉ!!モフモフだ!もっふもふだぁーーー!

暫く撫でているとアレスが自身の手で耳を隠してしまった。


「擽ったいから、もうお終い!」

「うん!ありがとう!!」

名残惜しいが、触らせてくれたことに心から感謝だ。

私は満面の笑みで感謝を伝えるとアレスが頬を赤くし微笑む。

思わず美しい顔にドキッとして、顔が熱くなる。

何故かドキドキが止まらず…頭には?マークが浮かぶ。

どうしたと言うのだろうか?



その様子を見ていたリオンは誰にも聞こえない小さな声で「鈍い…」と呟いていた。


ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

次の章までいくつかの番外編が続きます。


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