本邸へ帰ってきました!…可愛いのどっち?
「お帰りなさいませ。」
門を潜りエントランスへと馬車を停めると、執事のセバスチャンを筆頭に全ての使用人が出迎えてくれた。
久しぶりの本邸に思わず笑みを溢すと、使用人たちも嬉しそうに微笑んでくれる。
帰ってきたんだ!って気持ちが湧いてきた。
「支度を整えたら食事にしよう!セバス、アレスを部屋へ案内してくれ。」
「かしこまりました。」
お祖父様を先頭に邸へと入る。
私とリオンは隣同士のお部屋で、その向かいの部屋がアレスの部屋になるそうだ。
部屋の前で別れると、マリーが私の身支度を整えてくれる。
「久しぶりに帰ってこれて、皆んなの顔が見れたらなんかホッとしちゃった。」
思った事をそのままに呟くと、マリーも嬉しそうに頷いていた。
あっという間に身支度が整うとダイニングへ向かう。
ダイニングの前でリオンと合流し、中に入ると私たちが一番乗りだった。
バルトさん達、料理人さんが珍しくダイニングの方へと顔を見せる。
「バルトさん、プリンありがとう!」
「とても美味しかったです。」
王都の邸に着いた日にバルトさんからと、プリンをもらった事を思い出したので声をかける。
「それは良かった!また何かレシピがあれば教えてくださいね。」
そう言われると、色々と作ってもらいたくなってしまう。
次は何がいいかな?
「お兄様もプリン食べたいって言ってたから、来た時は出してください!」
リオンが思い出したかのように、バルトさんにお願いする。
そういえば、お兄様もプリンを気に入っていたな。
「かしこまりました。」
バルトさんは頭を下げ、仕事に戻って行った。
「次はどんなお菓子を作ろうかな?」
私が呟けば、リオンは目をキラキラさせて私を見つめる。
「えっと…希望ある?」
何か好みのお菓子はないかと聞いてみると、更に目を輝かせた。
「どんなお菓子があるの?」
「うーん…何がいいかな?甘いのが良い?それとも少し大人な味がいい?」
ショートケーキやチョコレートケーキ…少し大人なと言ったのはティラミスも食べたくなったからだ。
紅茶を好んで飲む習慣があるが、珈琲もあるしココアもある…チーズも手に入る。
無論、チョコレートもある。
料理の種類は少ないのに、やたらと材料が揃った不思議な世界だ。
「えー!大人の味のお菓子って何?」
「ちょっと苦いの。」
リオンは嬉しそうな顔で首を左右に傾けては、どっちがいいかと悩んでいた。
その仕草がとても可愛くて思わず…
「リオンは可愛いね。」
と呟くと、リオンは動きを止めて私を見た。
「え?リリアのが可愛いよ?」
さも当たり前のように返された。
「いや、リオンの方がこう…仕草に華がある!」
私も負けじと返す。
そっくりな顔立ちなのにリオンは笑えば花が舞うように愛らしい。
私だと…なんだろう、嫌味な感じが出る気がする。
「ボクはリリアのが可愛いと思ってるし…それにボクは可愛いよりもカッコよくなりたい!」
確かに男の子だ…
可愛いなどと言われても嬉しくないのかもしれない。
それでも私のが可愛いはずはなく…
「あっ!でもね、可愛いって言われるのが嫌な訳じゃないよ?ボクが可愛いって事はリリアも可愛いって事でしょ?」
なんだと…私も可愛い認定されるから、可愛いと言われるのも嫌じゃない…だと?
「リオンのそういうところが、私と違って可愛いんだって!」
私は力一杯にリオンの可愛さをリオン自身に説明していると、祖父母とアレスがダイニングへと姿を見せた。
「あらあら!ふふふっ…二人とも可愛いわよ?」
お祖母様が嬉しそうに話に参加する。
「うむ、二人とも愛らしいぞ?」
お祖父様も笑顔で答えてくれた。
「えっと…僕も二人とも可愛いと思うよ?」
アレスに気を使わせてしまった…何だか申し訳ない。
しゅんっと座ると、何故かアレスが慌てて「違うからね?本当に思ってるからね?」とフォローしてくれる。
言われれば言われるほどに現実味が薄れていく気がした。
「「…ありがとうございます。」」
皆んなに言わせた感が半端ないが、とりあえず有り難く受け取っておくことにした。
「セバス、食事後のお茶の時に邸の者たちに大切な話がある。全ての使用人へ周知し大広間の準備を頼む。」
食事をしながら、お祖父様は執事に指示出した。
アレスに関する話をするのだろうか?
邸の中でもアレスは耳や尻尾を隠してはいなかったが、使用人は誰もその事を気にした様子もない。
私も淑女としてもう少し表情を隠す練習をしなくてはと思う。
バルトさんにプリンのお礼をしたせいか、デザートにはプリンが出てきていた。
しかも…これはプリン・ア・ラ・モードだ!
早速、表情を崩す私…だが仕方ないと思う。
「プリン・ア・ラ・モード…最高!」
「プリン…?そういう名前なの?」
リオンが聞いてきたので説明する。
おそらく、バルトさんは知らずに盛り付けただけだろうけど。
「プリンを中心にフルーツやクリームを盛り付けたものを言うの。あとはアイスクリームもあると良いよね。」
「…アイスクリーム?」
この世界には一般的に冷凍庫がない。
だが、ここの本邸には冷蔵庫と冷凍庫もあるので作れるかもしれない。
「この邸には冷凍庫があるから、今度作ってみようか?」
「うん!」
リオンと二人だけで会話して気づかなかったが、バルトさんもこの会話を聞いていたらしい…
ダイニングを出たところでバルトさんに捕まり、後日レシピを教えるという事で解放してもらった。
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