聖女様からプレゼント
馬車を降りれば、一昨日来たばかりの教会についていた。
祖父母に続き中へと入ると、聖女様とお会いした部屋へ案内される。
部屋には既に聖女様がいて、その横には…真っ黒なローブを羽織り目深にフードを被った…子供?
私やリオンよりも年上…お兄様と同じ位だろうか?
その瞳は美しく光る碧い色をしていた…
吸い込まれるような美しい色に私は目を離せずにいた。
「リチャード、今日からこの子を頼んだよ。」
聖女様と祖父母は既に話が済んでいるのか来て直ぐに、席を立ちそうな勢いだった。
昨日、祖父母が聖女様に呼ばれていた事を思い出す。
確か預かって欲しい者がとか…言っていた気がするが…
「あぁ、二人に紹介してなかったね…この子はアレス・ハインツ。今日から二人と一緒に暮らす事になるからよろしく頼むよ?」
聖女様の後でアレス様は軽く頭を下げた。
私とリオンは姿勢を正すと…
リオンはボウ・アンド・スクレープをし、私はカーテシーをする。
「アレス様、初めまして!リオン・クリスティアです。」
「アレス様、初めまして!リリア・クリスティアです。」
私とリオンが挨拶をすると、何故かアレス様はビクッと肩を震わせ恐る恐ると言った感じに頭を下げる。
「なんだい、家族になるんだから様なんかいらないだろう?」
聖女様が敬称を付けなくてもいいじゃないかと文句を言ってきたが、どうなのだろう?
失礼でなければ確かにその方が有難いのだが…
アレス様の様子を窺うと彼は私とリオンを見つめ返した。
「初めまして、アレス・ハインツです。僕の事はアレスと呼んでもらって構わない。君たちもリオンとリリアと呼んで良いだろうか?」
「「はい!」」
アレスは、まだ少年なのに少し低い声をしていた。
彼からの提案で敬称を外す事となり、少し気が楽になる。
「自己紹介も終わった事だし、もう行ってもいいよ。」
聖女様は手で追い払うようにし私たちを部屋から出るように言う…が、何故か私だけ肩を掴まれた。
「リリアには渡したい物があってね、コレを持って行きな?」
手渡されたのが2冊の本…?
中を見れば驚く事に特殊スキルの名前と内容が分かる辞書だった。
吃驚して目を見開いていると、聖女様はもう一つの分厚い本を開くように促してきた。
「こっちが本命!」
本を開くと植物というか…世界の食品が書かれていた。
スパイスやら穀物やら野菜やら内容は様々で重たくて分厚い。
「私は料理は全く出来なくてね…同郷のよしみで故郷の味を作ってくれないか?」
聖女様も私と同じで、どうしても故郷の味が恋しくなるのだろう。
いつ転生に気づいたか知らないが、それこそ長い年月を我慢していたに違いない。
「既に、ハンバーグとプリンは作ってみ…」
「なんだって!!そういう事は早く言いな!!」
凄い勢いで怒られた…。
「す…すみません。前世の事は領地の家族にしか言ってなくて、両親や兄妹には秘密にしてるんです。」
領地でなければ作れない…と遠回しに伝えると、うんうんと頷かれた。
「それは黙っといて正解かもね。だが…使い魔に魔法鞄を持たせるから、手紙と一緒に何か持たせてくれないかい?」
聖女様は私の両肩を揺さぶりながら、料理を催促し出した…
少し酔ってきてしまう。
「頼んだよ!」
私を部屋の外へと押し出しながら、背中をポンッと叩かれた。
そして、挨拶を返そうと振り返ると扉は閉められてしまったのだった…
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