王都を出発?
誕生日パーティーの為に王都に来て、およそ一週間が経った。
正確には一週間に満たない。
ただ、とても濃い時間を過ごした。
濃厚すぎて胸焼けがしそうな程に…
昨日のマリナ様の件をお父様に報告すると、それは恐ろしい笑顔で怒っていた。
どうやらクリスティア家は皆、怒ると笑顔になるようだ。
後日、キャロリーヌ男爵に抗議すると言っていた。
それよりも問題なのはリナリアだった。
婚約の儀では、婚約に関する取り決めをする。
王族に嫁ぐ事になるリナリアは、今後は様々な教育を受ける事になる。
更には結婚の時期や、それまでにやってはならない事…
後はジュード殿下の婚約者としての公務なども場合によっては参加しなければならないそうだ。
そんな難しい話の間…リナリアはジュード殿下の横に座り、ずっと腕にしがみついていたらしい。
しかも目の前にあるお菓子に我慢できず、ずっと食べ続け…汚れた手をジュード殿下の上着で拭いていたという…
話を聞きながら、私もリオンも顔面から血の気が引いてしまった。
よく…よく、それで婚約の儀を終える事が出来たなっ!
聞けばジュード殿下はリナリアがする事を嫌がる事もなく、むしろ笑って許していたそうだ。
陛下も幼いリナリアの事を咎めなかったが…
問題は王妃のキャサリン様だ。
扇子で表情を隠してはいたが、お母様曰く激怒していたらしい。
お母様はよく王妃様のお茶会に招かれるので、機微には直ぐに気付くという。
それでもジュード殿下がリナリアを気に入っており、怒らなかった事から王妃様も何も言わなかったようだ。
本当…よく婚約の儀を終わらせられたなと思う。
恐らく、今後はその辺りも教育されるからと目を瞑ってくれたに違いない。
「もう…領地に戻っちゃうんだね。」
お兄様は寂しそうに私とリオンを見つめる。
王都に来て、お兄様とはいっぱいお話しする事が出来た。
今まで以上に仲良く過ごせたと思う。
お父様もお母様も寂しそうな顔をしてしまう…
こういう時はどうしたらいいのか分からなくて困る。
家族の顔を交互に見ては困惑して、最後にはリオンに助けてもらおうと横を見れば…
やはり私と同じように困った顔で私を見ていた。
そんな私達の気持ちを汲むように、お母様は優しく私達を抱きしめる。
「寂しいけれど、貴方達からの日記を楽しみにしているわ。」
プレゼントして頂いた日記帳を書いて必ず送る事を再び約束すると、お兄様も横から私達の頭を撫でた。
「冬季の長い休みに入ったら必ず領地に行くよ!」
「「はい、楽しみにしてます!」」
家族へとお別れの挨拶を終えた頃、リナリアがサリーと一緒にお見送りに来てくれた。
「リナリア、これからお勉強頑張ってね。」
「リナリア、沢山お勉強するんだよ。」
私とリオンはリナリアの頭を撫でながら応援した。
きっと辛くて逃げ出したくなるだろう…
それでもジュード殿下の婚約者として頑張ってもらいたい。
「わたし、頑張る。お兄さまもお姉さまも頑張ってね。」
何故か…私とリオンはリナリアに撫で撫でのお返しをされてしまった。
「「それでは、お元気で!」」
祖父母と私とリオンは家族に見送られながら王都の別邸を出発した。
久々の我が家…領地までは半日とかからない。
帰ったら何しようかなー…
と、思っていると何故か馬車は直ぐに停まった。
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