初めての王城
城門へは直ぐに到着したが、門を潜ってからは案外時間がかかった。
門から城までは遠いようだ。
お城は某お姫様が舞踏会のために向かった…いや、某遊園地にある水色の屋根に白い城壁で有名な建造物に似ていた。
お城の周囲には幾つもの塔が連なっていた。
王城には騎士団もあり魔法省もあるので、そういった建物なのだろう。
城へと到着すると馬車を降りた先で第一騎士団の団長さんが待っており、お祖父様の元へと駆け寄る。
「ご無沙汰しております、リチャード先生!」
「うむ、活躍は耳に入っておるぞ!頑張っておるのだな。」
お祖父様と騎士団の団長さんは挨拶を交わすと、今度はお父様へと挨拶し城の中へと進むよう促す。
ジン・マティーニ侯爵は第一騎士団の団長を務めている。
先日の誕生日パーティーに来ていたジル・マティーニ様のお父様だ。
シルバーの髪は短めで見た目は少し怖そうだが、イケオジだ!
ちょい垂れ目だが鋭い眼差しが大人の色気を感じさせる。
結構に渋い…そして、カッコいい!!
前世の私のタイプど真ん中だ!
そんな事を思いながら、目に焼き付けるように見つめていると…
リオンに腕を突かれた。
『リリア、見過ぎ!騎士団長さんが好きなの?』
むうっとした顔でリオンがテレパシーを送ってくる。
何故むうっとしているのだろうか?
『前世の…“葵“の好きなタイプでした。』
今の私では無く、前世を強調して伝えると険しかった顔が少し和らいだ気がする。
『騎士団長さんはとても渋くてかっこいいね!』
思ったままを伝えると再びリオンの顔がむうっとなった。
『ボクの方が将来はカッコよくなるもん!』
何故か将来イケメンになります宣言をされてしまった。
まあ…おそらくリオンは将来はとてもカッコ良くなると思います。
騎士団長さんの案内で到着したのは、とても大きな扉の前。
扉の両脇には衛兵さんがいて、騎士団長が私達の到着を伝える。
暫くし許可が下りると扉が開いた。
とても広い部屋の一番奥の玉座には陛下が座っており、王妃様とクロード殿下とジュード殿下もいた。
お父様から順に進んで行き、陛下の前で跪く。
私たちも同じように跪き、陛下のお言葉を待つ。
「顔を上げ、楽にせよ。此処には他の臣下もおらぬから普段通りで構わぬ。」
お父様が顔を上げたのを確認してから私達も顔を上げた。
目の前にはクロード殿下にそっくりな陛下がいた。
エドワード・オステリア陛下
クロード殿下と同じ青みがかった黒髪、輝くような金色の瞳をしている。
お父様と同じくらいの年齢だが、とても若々しく見える。
隣には王妃のキャサリン様が座っている。
ピンクがかった綺麗な金髪にアメジストのような美しい瞳…
その美しさに思わず見惚れてしまう。
「リチャードにアリアも久しいな。」
「はっ、陛下!大変ご無沙汰しております。」
陛下とお祖父様は挨拶を交わすと、陛下は一度私達を見て再びお祖父様に話しかけた。
「二人が“神に愛されし者“だな?」
「はい。」
お祖父様は返事と共に私達を陛下の御前へと近づけさせ紹介する。
「そうか、公爵家の長女であるリリア嬢をクロードと婚約させようかと話した事もあったが叶わぬか。」
申し訳ございませんと祖父母は頭を下げていた。
公爵家の長女は王子の婚約者候補の可能性が高い…
つまり私が“神に愛されし者“で無ければ婚約もあったかもしれないのか…
クロードに目を向けると何故か目を見開いて固まっていた。
何故…固まっているのだろうか?
「構わぬ、此度はリナリア嬢とジュードが婚約する事となったからな。」
陛下はうんうんと納得して頷いている。
「聖女様からリチャードに預けたい者がいると連絡が来ておる。私からも是非、頼みたい。」
「はっ、かしこまりました。」
そう言うと陛下の許可を取り、祖父母は退室していった。
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