登城準備とお姫様。
今朝は少し寒くて目が覚める。
冬が近づいて来たので、外はまだ薄っすらと暗さが残っていた。
いつものように白いシャツとパンツスタイルで外へ出る。
今日は登城する予定だが、なんだか重苦しい空をしていた。
日課の鍛錬を終え、支度を整える。
朝食を済ませてから登城する準備をするので、今はシンプルなドレスを纏った。
ダイニングに集まると今日もサリーが付きっきりでリナリアの食事の世話をしていた。
今日は彼女が主役だ。
よく見れば、今日はまだ泣いていないのか目元は腫れていない。
そしてどこか大人しい。
嵐の前の静けさ…
そんな不吉な言葉が私の頭を過ぎった。
「リナリア様、今日は一日お姫様ですよ。」
サリーが魔法の言葉を唱える。
リナリアは満面の笑みで信じられない程、大人しく食事を済ませた。
サリーは事あるごとに魔法の言葉を唱えてはリナリアを笑顔にさせていた。
なるほど…あれで今日は乗り切るのか。
朝食を済ませ、部屋で身支度を整える。
今日もどうやらリオンと合わせるようだ。
淡いグリーンの生地のドレスは胸元が広めで、中はアイボリーのレース生地のハイネックにドレスと同じ生地の細いリボンが首を一周して後ろで結ばれた。
腰には同系色のサッシュベルトを巻き、スカートはAラインで広がり過ぎない。
ちょっと大人っぽいデザインで、いつ仕立てたのだろうと不思議に思っていると…
昨日、ティアさんから公爵家に届いたのだとマリーが教えてくれた。
「お誕生日プレゼントだそうですよ?」と嬉しそうに着付けてくれる。
今度、ちゃんとお礼をしに行かなければと私も笑顔になった。
髪の毛をハーフアップにし、毛先を少し巻いてもらう。
白い花をモチーフにした髪飾りで仕上げてもらい、昨日お父様から頂いたネックレスを合わせた。
部屋を出るとリオンが待っていて、思った通りお揃いの生地で仕立てられていた。
そして首元を見るとタイをしており、同じようにタイタックが付けられていた。
お揃いのアクセサリーに思わず笑顔になると、リオンも微笑み返してくれた。
今日のリオンも変わらず可愛いが、やはり服装が大人っぽいので雰囲気がいつもと違って見えた。
エントランスに向かうと、ドレスアップしたリナリアが既に待っていた。
リナリアの瞳と同じ淡いピンクのドレスはふんわりとボリュームがあり、レースやリボンがたっぷりと使われていた。
お母様に似て目元はパッチリとしていて少し垂れ目…そしてバサッと音が出そうなほどの睫毛のボリューム。
口は閉じていれば小さく、ほんのり桜色をしている。
まさに美少女!と言って良いだろう。
……これは、ヒロイン顔だなと改めて思った。
「リナリア、とても可愛らしいお姫様ね。」
私はリナリアを見つめ、その可愛らしさを褒める。
リナリアは嬉しそうに笑顔になると、私に抱きついてきた。
「うん、とっても可愛らしいお姫様だね。」
リオンも隣でリナリアを褒めると…次はリオンにも抱きついていた。
昨日から何度か睨まれていたのだが、どうやら嫌われていないようだ。
姉妹で敵対はしたくないからね。
両親やお兄様もリナリアを見ては褒めていた。
そして、祖父母もリナリアを褒めると…何故か吃驚した顔をしていた。
エントランスには馬車が2台停まっていた。
両親はお兄様とリナリアと共に乗り、私とリオンは祖父母と乗って出発した。
馬車の中ではお祖母様が嬉しそうに「似合っているわ」と私達を褒めてくれた。
ティアさんにお礼がしたいと告げると嬉しそうに頷き「また出かけましょうね」と約束してくれる。
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