家族からの祝福。
マリーに乱れたドレスはシワになるからと着替えさせられ、髪の毛も結い直してもらう。
流石に身内だけのお祝いなので他所行きのドレスではなく、少し豪華なドレスとなった。
リオンと手を繋ぎ、一階へと降りる。
ダイニングで行われると思っていたが、お祖父様の計らいで使用人達も混ざり立食パーティーとなった為に向かい側にある広間で行うそうだ。
広間に入ると家族や使用人達が既に揃っていた。
シャンパンに似たアルコールが入ってない飲み物を手に持ち、お父様が挨拶をし乾杯をする。
家族や使用人の方々に「おめでとう!!」と声をかけられ食事がスタートした。
ピンチョスやカナッペを取り、口へ運ぶ。
フレッシュな野菜とクリームチーズが美味しい。
デミタスカップに入ったスープもあり、どれも少量ずつ色々と楽しめる食事となっていた。
お肉はその場でステーキを鉄板で焼いてくれて、熱々の美味しい状態を味わえた。
白身魚は一口サイズのムニエルになっていてレモンの輪切りが乗せてある。
昨日は昼間でお菓子ばかりだったから、今夜の食事はとても楽しかった。
一頻り食事を堪能すると、お父様が再び壇上から声をかけ私達を壇上へと上げた。
「リオン、リリア、誕生日おめでとう。私からのプレゼントだ。」
私とリオンにそれぞれに箱を渡す。
何が入っているのかとワクワクしていると、お父様は小さな声で「開けてご覧?」と囁いた。
リボンを外し箱を開けると、一粒の真珠の周りに数種類の小さな石が付いた可愛らしいネックレスが入っていた。
リオンの箱を見れば、同じ様なデザインのタイタックが入っている。
「「ありがとうございます。大切にします!」」
お父様に笑顔で感謝を伝えると、お父様は蕩けるように微笑んで頭を撫でてきた。
この顔は外ではしてはいけない…という程にデレデレとしている。
お父様ってクールなイメージだったんだけどな。
「私からも良いかしら?」
お母様が壇上に上がり私達に少し大きめの箱を手渡す。
「お誕生日おめでとう。これは私からのプレゼントでもあるし、お願いでもあるの。」
そう言って箱を開けるように言われ開くと2冊の本が入っていた。
よく見ればダイアリーと書いてあるので日記帳のようだ。
しかし2冊?
「お誕生日に何を渡したら喜んでくれるかしらと悩んでいて気づいたの。
私は二人が何を好きなのか、どんな物に興味を持つのかを知らないって…
だから二人には毎日、日記を付けてもらって定期的に見せてもらおうって思ったの。」
お母様は笑顔で私達の頭を撫でる。
離れて暮らす私達の事をもっと知りたいと思ってくれていた事が嬉しい。
「2冊あるのは、私が預かっている間にも書けるように。だからプレゼントでもあり、お願いでもあるのよ。」
「「ありがとうございます!毎日書きます。」」
笑顔で答えるとお母様もお父様のように蕩けるような笑みを浮かべた。
「ぜひ、僕も二人の事をもっと知りたいので見せてもらっても良いかな?」
お兄様が壇上へと上がり、私達に話しかける。
「「はい!!」」と返事をすると嬉しそうに微笑んだ。
「ですが、私達からもお願いがございます。」
そう私が切り出すとリオンが頷き言葉を繋げる。
「お父様やお母様、お兄様の事も知りたいので…日記帳に返事を書き込んでくれませんか?」
お母様達が私達を知りたいように、私達も家族の事が知りたいのだ。
「ええ、もちろんよ。」
「僕も書くよ!」
「私も書こう。」
お母様達と一緒に一度離れたお父様も返答してくれた。
「「ありがとうございます!」」
嬉しくて笑顔で返事をすると、皆んなも笑顔で返してくれる。
「じゃあ、僕からのプレゼント!僕も二人のことをよく知らないから…流行りの小説にしたんだけど」
お兄様は苦笑しながら私とリオンにそれぞれ別の小説を渡した。
私の方は女性に人気の恋愛小説ーーーー
恋愛小説好きの私としては凄く嬉しかった。
リオンには勇者が出てくる冒険物だ。
あっちも…読みたい。
そんな顔で見ていると、リオンが私に微笑む。
「読み終わったら交換して読もうね」
「うん!」
優しい…そして笑顔が眩しい。
「「ありがとうございます!読むのが楽しみです。」」
お兄様に感謝を伝えると、お兄様は不安そうだった顔がパアッと笑顔に変わる。
「喜んで貰えて嬉しいよ!」
そしてお兄様も私達の頭を撫でる。
すると離れていたリナリアが走ってくるのが見え、顔を向けるとすごい勢いでタックルされる。
堪えきれずに隣にいたリオンも巻き込み倒れ込んだ。
慌ててリオンから退こうとするが、リナリアが私のドレスから離れてくれないのでモタモタする。
「いててっ!」
リオンは自力で私の下から退き、お兄様と一緒にリナリアを引き剥がしてくれた。
「大丈夫?怪我はない?」
リオンは私を気遣い声をかけてくれると、リナリアは面白くなかったのか喚きだした。
「なんで!?なんで私に構ってくれないの!?」
どうやら構ってくれないので気に入らなかったらしい…
再び私を睨み飛びかかろうとしたところで、リナリアはサリーに捕獲された。
「やだ!!離して!やだっやだっ!!!」
サリーの腕の中で暴れるが、サリーはビクともしない。
「リナリア様、今日はお兄様とお姉様のお祝いでございます。お二人におめでとうとお伝えするのでは無かったのですか?」
サリーの腕の中で唸りながらリナリアは大人しくなっていく。
「…お誕生日おめでとう…」
リナリアは凄く小さな声で呟き、口を尖らせる
その声を聞いた私とリオンはリナリアを見つめ微笑む。
「「ありがとう!」」
するとリナリアは顔を真っ赤にして照れて頷くと、吃驚するほど大人しくなった。
そして、サリーの手によって運ばれていった。
本当に凄い侍女だと思う…




