私の優しい祖父母とリオン。
足元を見るともぞもぞと動く影があった。
私と同じピンクグレージュの髪はゆるくウェーブがついたショートヘアで、髪を揺らしながら小さな頭が起き上がる
私と同じヘーゼルの瞳が私を見つめてきた
男女の双子としてはとても珍しいが、私と彼は瓜二つ…
双子の兄リオンが私に気づくとう嬉しそうに微笑んだ。
「リリア、おはよう。目が覚めて良かった!」
ぎゅうっと抱きしめられたかと思うと、思い出したかのようにリオンは慌てて部屋を出ていった。
暫くすると祖父母を連れて戻ってくる
「リリア!目が覚めたのか!?どこか痛いところはないか?」
部屋に入ってきたかと思ったら凄い勢いでお祖父様が私の肩を揺さぶる
力が強いせいで私は揺れに酔い、目を回してしまう
「ちょっと!力が強すぎてリリアが目を回してるわよ!」
お祖母様が慌ててお祖父様を止めてくれたので何とかリバースすることはなかったが、暫く気持ち悪さが残った
お祖母様は私の様子を心配そうに覗き込んできた
「3日前、馬車が崖から転落したのだけれど覚えているかしら?
あなたが目を覚さなくて皆で心配していたの。
そうだわ!お医者様に診ていただかなければいけないわね!」
執事のセバスチャンが連絡していたのか、すぐにお医者様に診てもらう事となった。
特に問題がないと分かると3日ぶりの食事として優しい味のスープを食べて、ゆっくりとお風呂に入る。
侍女のマリーに手伝ってもらいながら体を綺麗にすると、体中の怠さも抜けてリフレッシュできた。
もう少し休むからとベッドに入るとマリーは気を利かせて部屋を出ていく
ベッドの心地よい感触に目蓋を閉じた
私はどんな人生を送るのだろうか…
想像もできない未来に不安になる
結婚も出産も経験できなかった前世を今更ながら惜しくなった
「結婚…したかったな…って言うか、子供は欲しかったな!」
今世でも結婚や出産を望めないかもしれない
断罪されてしまえば、良くて平民落ちだ。
結婚出来たとしても素敵な旦那さんは望めないんだろうなと暗い気持ちになる。
せっかくの美しい見た目なのに勿体無いな…
コンコン…と控えめなノックに気づき起き上がり返事をすると、リオンが部屋に入ってきた
「リリア、もう本当に大丈夫?どこも痛くない?」
心配そうに眉を寄せ、私の顔を覗き込むように見つめるリオンは整っていて美しい顔立ちだ。
コクンと頷けば、ぎゅうっと抱きしめられる。
温もりが感じられて心が落ち着く…
リオンの肩に顔を埋め、抱きしめ返した。
「それなら、どうして…いつものリリアじゃないの?」
落ち着いたはずの心が暴れだす
いつもの私ではない…それは、私が記憶を取り戻したから?
困惑する私にリオンはさらに続けた
「リリアはまだ結婚も出産もできる年齢じゃないのに、なぜ過去形に話していたの?」