魔法と紅茶の時間
マリーに庭園へと案内されると、お祖母様は既に席についていた。
「「お待たせ致しました」」
私とリオンはお祖母様のサイドに座る様に席に着く。
「大丈夫よ?今日は花のフレーバー入りの紅茶を用意したわ。」
「「いただきます。」」
口に含めばフワッと甘い花の香りが漂い、鼻を抜ける。
前世のジャスミンの香りがして心が落ち着く。
「さて、ステータスボードの写しを見ていくわね。思っていた通り魔力が高いわね。」
「思っていた通り?」
リオンは不思議そうにお祖母様に聞き返した。
「そう。貴方達の魔力が高いのを見越して、いつも朝の練習の前に魔法制御をさせていたの。
魔力が高いと制御出来ずに暴走する事があるのよ。そうならない為にしっかり覚えましょうね?」
「「はい」」
お祖母様は諭す様に説明を続ける。
「私の魔力は2300あるわ。でも私が貴方達の頃は1000にも満たなかったのよ?」
「え!?」
吃驚して思わず声を漏らすと、お祖母様は人差し指を立てた。
「サリーに教わったでしょ?顔に出してはダメよ?」
「はい…すみません。」
お祖母様はふふっと笑うと「慣れよ?」と微笑んだ。
「もう一つ、今朝渡した魔導書も貴方達に魔力が高いのを見越して作った物よ。ふふふっ楽しみね!」
お祖母様はそれは嬉しそうに微笑んだ。
どんだけスパルタ教育をする予定なのだろうか…
「気になっていたのですが…我が公爵家には“神に愛されし者“が必ず生まれるのですか?」
リオンは“神に愛されし者が気になっていたらしく、お祖母様に質問をする。
お祖母様は少し困った顔をして答えてくれる。
「“神に愛されし者“に関する事は今夜にでもリチャードから話すと思うけど…そうね…」
そう言ってお祖母様は我が家に生まれてくるという“神に愛されし者“について教えてくれた。
“神に愛されし者“…ピンクグレージュの髪にヘーゼルの瞳を持つクリスティア家にしか生まれない稀少な存在。
その命が尽きるまで領地を安寧へと導き、土地は豊かになり恵まれる。
そして命が尽きる前までに必ず次の“神に愛されし者“は現れ、引き継がれていくという…
「え?え?私達のせいでお祖父様…亡くなってしまうの?」
「いやだよぅ…」
リオンと私の瞳からは涙が溢れ出す。
お祖母様は慌ててハンカチで涙を拭うと頭を撫でる。
「大丈夫よ?生まれる頻度は不規則で、生まれたからと言って今までの“神に愛されし者“がすぐに亡くなるという事はないの。」
よしよしと頭を撫でてもらい、私たちは落ち着きを取り戻す。
「いつかはお別れの時が来るかも知れないけれど、それは今ではないのよ?」
「「…うん。」」
紅茶のおかわりを勧められ頂くとホッと息を吐いた。
「吃驚させちゃったわね?他の話をしましょうか。」
そう言ってお祖母様は魔法についてより詳しく話し始めた。
魔法には火・水・土・木・風・光・闇の7種類がある。
魔力があって練習すれば誰でも使えるのが魔法だ。
しかし、光と闇だけは特殊で素質が無ければ使う事は出来ない。
お祖母様はどちらも素質があり使えるが、得意という訳ではないそうだ。
私達にも少しだけ素質は有るものの、使うのは難しいらしい。
因みに魔法を発動させる時は詠唱する。
…前世の記憶を取り戻した私としては少し恥ずかしい。
アラサーの女性にはムズムズするのだ。
「お祖母様…魔法は必ず詠唱しないと発動しないのでしょうか?」
思い切って聞いてみる…当たり前のことを聞いて怒られるかも知れないが…
お祖母様は掌を上に向け目を瞑ると掌からキラキラとした小さな氷が零れ落ちた。
「こんな感じかしら?慣れれば無詠唱でも出来るわよ?
だけど!貴方達はまず魔法をしっかりイメージする必要があるから詠唱して発動させること!」
「「はい!」」
聞いてみるものだ…無詠唱でも出来るのか!
これは将来は無詠唱を覚えよう!!
「因みに、無詠唱だと発動も早いから便利よ?励みなさい。」
「はい。」
この世界には魔法がある…
それは前世には無くて、やはり異世界の魔法には興味があっただけにとても楽しみだ。
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