歴代最強の侍女長
いや…トナカイの名前が「トニー」ならば、セーフなのか?
うーん。…うん?
聖女様の使い魔が気になり…暫くその事で頭がいっぱいになった私は、待たせていた馬車に乗り込み公爵家へと戻る。
馬車で数分の距離だ…歩いても着く。
だが、貴族という者は歩かないらしい。
体に悪そうだが、ステータスのようなものだと思う。
あとは…王都は危険で命を狙われたり、誘拐の危険も多い。
そういう意味でも馬車に乗るようだ。
公爵家のエントランス前には一台の馬車が停まっていた。
見れば領地の本邸から来た馬車のようだ。
馬車は直ぐに移動すると、私たちの馬車がエントランスの前に停まる。
馬車を降りれば二人の侍女が頭を下げており、その後ろには別邸の執事・スティーブがいた。
「おかえりなさいませ。」
執事のスティーブはまだ若く、お父様よりは少しだけ年上だ。
そして一緒にいた侍女を見れば一人は恰幅の良いおばちゃんで、もう一人はまだ若く20歳にも満たない感じだ。
「旦那様、ご無沙汰しております。」
恰幅の良いおばちゃんはお祖父様に挨拶をすると、お祖父様も頷き返していた。
お祖父様の後にいたお祖母様が嬉そうにおばちゃんに抱きつく。
「久しぶりじゃない!また会えて嬉しいわ、サリー!!」
「奥様もご無沙汰しております。お変わりない様で何よりでございます。」
おばちゃんは嬉そうにお祖母様とも挨拶を交わした。
そして、その後ろにいた私とリオンに目を向けるとカーテシーをする。
「お初にお目にかかります。以前、こちらで侍女長を勤めておりましたサリーでございます。」
私とリオンは顔を見合わせニッコリと微笑み挨拶を返した。
「初めまして、リオン・クリスティアです。」
「初めまして、リリア・クリスティアです。」
サリーは嬉しそうに微笑んだ。
「まだ1歳にも満たない頃に一度お会いしましたが、立派に育たれましたね。」
「そうなの!私の自慢の孫達よ?」
サリーの言葉にお祖母様はとても嬉しそうに胸を張った。
「ご紹介が遅れました。こちらは私の娘で、本日から此方に侍女見習いとしてお世話になりますケリーでございます。」
後ろに控えていた若い女性がカーテシーをし微笑んだ。
「お初にお目にかかります、ケリーでございます。本日より宜しくお願い致します。」
「「宜しくお願いします」」
リオンと一緒に返事をすると、直ぐに微笑み返してくれた。
「うむ、サリーとケリーには公爵家の次女リナリアを躾けてもらう。」
お祖父様はサリーに頼むと言って、邸へと入っていく。
私たちも行こうとするとマリーとアリーが邸から出てきた。
「おかえりなさいませ」
二人は私達に声をかけると、傍にいたサリーを見た。
「母さん、ケリー、お待ちしてました。使用人室へは私が案内するわ」
アリーの言葉に吃驚して目が見開き、思わずサリーとケリーを見てしまう。
リオンも同じ様に驚いてキョロキョロとしていた。
「ふふっ驚いた?彼女達は親子なのよ?」
お祖母様が嬉しそうに私とリオンの頭を撫でて教えてくれる。
呆けているとサリーが再び私たちの前に立ち、顔の前で人差し指を立てる。
「リオン様、リリア様?驚いたからと言って直ぐに顔に出してはなりませんよ?」
「「はいっ!」」
サリーは「よろしい」と言って柔らかく微笑む。
そして私たちは歩き出し中へと入って行く。
その間、彼女達は後方でお辞儀をしていた。
「今ので分かる通り、彼女は歴代最強の侍女長。彼女が居ればリナリアは立派な淑女になるはずよ?…よっぽどの事が無い限りね」
「…よっぽど…?」
歴代最強の侍女長に躾けられない事は無いそうだ。
そう…よっぽどが無い限り…
これってフラグ?
「さて!お茶にしながら、二人のステータスボードの質問に答えてあげるわよ」
「「はい!!」」
お祖母様はご自身の部屋へ入り、私たちも一度部屋に戻ると動きやすい服装に着替え、頭も結い直してもらう。
私の身支度を整えると、マリーは隣の部屋へ行きリオンの身支度を整えた。
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