お祖父様からの贈り物
公爵家の朝は早い。
それは王都の邸であっても例外はない。
いつものように白いシャツにパンツスタイル、ポニーテールで集合場所の裏庭へと向かった。
裏庭にはまだ誰も来ていなくて、私が一番乗りだった。
軽くストレッチを行っていると、リオンがやってきた。
「おはよう、早かったね?」
「おはよう、よく眠れたから目覚めもスッキリだよ!」
リオンも一緒にストレッチを行う。
ラジオ体操のような動きをしていると祖父母も姿を見せた。
「「おはようございます」」
「おはよう」
祖父母と挨拶を交わすと、すぐに始まると思っていた鍛錬が祖父母の話から始まった。
「晴れて7歳になった2人にプレゼントがある」
お祖父様は嬉しそうにニコニコしながら、私とリオンにそれぞれ剣を差し出してきた。
てっきりお揃いの物を貰うと思っていたが、どうやら違うらしい。
「他の者がいる時に渡すと面倒だから、今日渡そうとアリアと話していたんだ。
リオンに渡したのが氷の魔剣でリリアに渡したのが炎の魔剣だ。」
「「ありがとうございます」」
お礼を言いながら受け取った剣は見た目よりも軽く感じた。
魔剣…そんな物を7歳児に渡すとは…
相変わらず、お祖父様は規格外だ。
お祖父様は私たちの小指の先に小さな針を刺すと、1滴の血を剣へと垂らす。
こうする事で剣は持ち主を認識し、他の者には決して扱えなくなるという。
「この剣は私の古い友人に頼んで特別に誂えてもらった物だ。成長に合わせて剣のサイズも変われば形状も変化する」
そう言ってお祖父様は自身が身につけていた剣を見せてくれた。
同じ職人が手がけ、お祖父様だけが扱える剣だという。
私が受け取った剣は鞘から抜くと薄っすらとピンク色をしていた。
リオンの方は水色に近い青色をしている。
よく見れば剣には誂えた方の名前が彫られていた
…ゴシゴシ、おかしいな目は覚めてると思ったんだけど?
不思議に思い顔を横に傾けると、リオンの頭と打つかった。
リオンも同じポーズをしていたらしい…
「あの、見間違いでなければ誂えた方は伝説の鍛治職人ドワーフのエルバフさん…ですか?」
いや、きっと見間違いだろう。
世界の童話で語り継がれるような鍛治職人の名前な訳がない。
そもそも物語の話ではないか。
「うむ。如何にも、友人で鍛治職人のエルバフの作品だ、よく分かったな!」
偉いぞと言わんばかりにお祖父様は私達の頭をワシャワシャと撫でる。
茫然と立ち尽くしていたリオンと私はされるがままだ。
魔剣なだけで凄いのに誂えた方がまさかの超有名人て…
「彼奴は本にもなる位に有名だが、もう仕事は引退しておってな。昔の誼で作ってもらったのだよ」
ふふふっと笑いながらお祖父様は嬉しそうに説明してくれる。
だが、私達は驚きすぎてどこから突っ込んでいいのかすら分からずに固まるしかなかった。
…伝説の騎士は、伝説の鍛治職人と友人だったという事か…