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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
番外編
317/318

二度目の婚約の儀(リナリア)

リナリアの番外編の続きです。

夜会の翌日、“婚約の儀“を執り行う為…両親と共に登城する。

“婚約の儀“には両家の親とオステリア王国の国王陛下、そして今回は特例で聖女様もご出席される。

馬車には参加する事の出来ない筈のリーマスお兄様も同乗していた。

…もしかして、心配してるのかな?なんて都合の良い事を考えては首を振る。

でも…どうしてなのかな?


王城の“婚約の儀“が執り行われる一室…その扉の前まで来ると、それまで沈黙していたリーマスお兄様が私の手を掴んだ。

「リナリア…。」

私の名前を呟くと、手を引き…私を抱き締める。

突然の出来事に驚いていると、頭の上に顎を置かれ…お兄様は深い溜息を吐いた。


「嫌になったら、いつでも帰って来ると良いよ…リナリアの部屋はずっと残しておくからね。」

「あ…ありがとうございます。ですが…嫁ぐのはまだ先の話ですよ?」

よしよしと背中を摩るリーマスお兄様に、私は思わず苦笑する。

気が早いです…リーマスお兄様。

でも、その気持ちが嬉しくて…私は顔を上げて微笑んだ。

お兄様も笑顔で返してくれたので、本気で言っている訳ではないのかな?


「……本気だからね?」

心を読んだかのようにリーマスお兄様は笑顔のまま私に告げる。

やっぱり私は兄姉達には敵わないのだと改めて感じた。


「さぁ、行こうか。」

私達の遣り取りを見ていたお父様が声をかけてきた。

いよいよだ!と心の中で気合を入れているとお父様が私の手を取ったので、どうしたのかと顔を上げる。


「リーマスの言うように部屋はそのままにしておくから、いつでも帰ってきなさい。」

そうお父様に真顔で告げられ、思わず笑みが引き攣りそうになった。



“婚約の儀“は二度目だが、以前は四歳と幼い時で…正直言うとジュード殿下とお茶をした記憶しかなかった。

互いの紹介から始まり、婚約期間中の取り決めや結婚の時期…更には取り決めを破った場合の賠償なども決める。

もっと言うと…婚姻時の持参金やらワインバル王国での王妃教育の期間とその間の住居や待遇なども事細かに決まっていった。

……幼い自分はこの緊張する空間でよく物が食べられたものだと思う。

全体での取り決めを終えると、聖女様が誓約の魔法をかけた。


全てが終わった事にホッとしていると、何故か私とリシェ様は聖女様に呼ばれ家族から離された。



「互いにステータスを開示しなさい。」

聖女様に言われるままに、私もリシェ様もステータスボードを開く。

私とリシェ様のステータスボードを見ながら、聖女様はサッとペンを走らせた。

その行動に驚きはしたものの…ふと、昔を思い出す。



七歳の誕生日の数日後。

私が聖女様と初めて会った日の事…あの日はリオンお兄様とリリアお姉様と一緒に教会へ足を運んだ。

誕生日の当日に両親と教会に行きステータスを調べ終わっていたのにも関わらず、何故か私は聖女様の隣に座らされてステータスボードを見てもらったのだ。

リオンお兄様に、それは特別な事だと教えてもらい…私は大人しく聖女様の言葉を待った。


「特殊スキルが一つ…。」

そう告げられ…数日前に知ったばかりの特殊スキルが頭を過ぎる。

特殊スキルが有る事は分かっていても、それがどんな物なのか分からなかった。

名前からすると、あまり良いスキルだとも思えなかった。

そんな私の特殊スキルの事を聖女様もお兄様もお姉様も嬉しそうに教えてくれたのだ。

そして…リリアお姉様は最後にこう言って笑みを深めた。


「リナリアの特殊スキルは大切な人を助け、支える為のものなのね。」


あの日の出来事は今も胸に残っている。

私は自身のステータスボードに記された特殊スキルを指でなぞった。


「ふっ…懐かしいね。昔、リリア達と話したスキルだ。」

聖女様は走らせていたペンを止めると、私の指の先にある特殊スキルに目を向けた。

どうやら聖女様も覚えていてくれたらしい。


聖女様は私とリシェ様に一枚ずつ羊皮紙を渡すと、互いに魔力を込めるように指示をした。

言われた通りに羊皮紙に魔力を通せば、何も書かれていなかった羊皮紙に文字が浮かび上がる。


「それは互いのステータスボードの内容だ。魔力量などは変動があるかもしれないが、特殊スキルや属性は変わる事は無いだろう。自身の魔力を流してもらったのは、自分以外が見れないようにする為…他の者にはただの白紙にしか見えない筈だよ。」

以前のジュード殿下との婚約時には私が幼すぎたせいもあり、ステータスを開示する事はなかった。

通常は婚姻時に互いに教え合ったりするそうだが…聖女様曰く、今回は特別なんだとか。


「前のように、二人が離れる事は無いだろうからね。」

そう言って聖女様は私達を残し…国王陛下方の元へと戻って行ってしまった。

私とリシェ様は互いに顔を見合わせ、そして…手元の羊皮紙に目を向ける。

だが、すぐに両親から声がかかり私達は部屋を出る事となった。


部屋の外ではリーマスお兄様が心配そうな顔で待っていて、私達が部屋から出ると駆け寄ってきた。

「無事に終わりました。」

心配そうにするリーマスお兄様に笑顔で告げれば、嬉しそうに頷き…そして私達の手元の羊皮紙に目を向けた。

そして…再び私とリシェ様を交互に見やるリーマスお兄様。


「リオン達も王城に来てるから馬車はあるし…二人は少し話してから帰ってくれば良いよ。」

何かを察したリーマスお兄様は、両親とも話をつけ…何故か先に帰って行ってしまった。

リーマスお兄様の心遣いに感謝し、私とリシェ様は王城のリシェ様が使っている客室へと移動する。


「…さっきのリーマスの言葉…あれって僕もクリスティア家に戻って良いって事なのかな?」

客室に向かう途中、リシェ様は困ったように眉を下げ呟いた。

本来なら事件が解決した事もあり、リシェ様は王城で用意した客室に泊まり帰国を待つ筈だ。

それなのに、リーマスお兄様はリシェ様が邸に戻ると思っているのか…声をかけた。


「…リナリアが許してくれるなら、僕はクリスティア家に帰りたいんだけど…ダメかな?」

「…え?…いえ、許すも何も…リシェ様はそれでも宜しいのですか?」

リシェ様の言葉に戸惑いながらも答えれば、リシェ様は困った顔のまま頷いた。


「帰国したら暫く会えなくなるから、出来たらそれまでは少しでも一緒に居たいんだけど…どうかな?」

困ったような照れたような顔で、私を覗き込むリシェ様。

その言葉に思わず私も照れてしまい…そんな私にリシェ様は困ったように笑う。


「やっぱりダメだよね?」

覗き込んでいた体勢を戻し、リシェ様は諦めたように呟いて歩き出す。

私は慌ててリシェ様の袖を掴んだ。


「…ダメじゃないですよ?」

恥ずかしい…でも、勘違いされて…そのままなのは嫌。

私が告げた言葉にリシェ様は振り返って目を見開く。

そして…嬉しそうに顔を綻ばした。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

本当に遅い更新で申し訳無いです。

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