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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
番外編
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王妃様と二人のお茶会(リナリア)

リナリアの番外編(続きです)

「…情けない。」


自国の国王陛下に挨拶に向かう馬車の中、そう呟いたリシェ様に私は困った顔をする。

落ち込むリシェ様は可愛いのだけど…その原因が私にあるのは申し訳ないと思う。


…まさか、逆プロポーズをする自分など…誰が想像出来ただろう。


「ごめんなさい…。」

リシェ様の立場も考えられない私は、やはりまだまだレディとして未熟だと思う。

しゅんと俯くと、向かい側にいたリシェ様が慌てて私の隣に来て肩を抱き寄せる。


「謝らないで?リナリア嬢からの告白に感動したんだから!…情けないって言うのは僕の心の問題だから…なんて言えば良いかな?その…出来たら、やり直させて貰えたら嬉しいんだけど。」

私を抱きしめながら…私の頭上で困ったように笑うリシェ様。

私がコクンと頷くと、リシェ様は嬉しそうに笑顔になる。


そんなリシェ様に釣られ、私も顔を綻ばせると…リシェ様が私の肩に乗せた自身の手に目を見開く。

慌てて退かそうとするから…私は負けじとリシェ様に寄り添った。

レディとしては端ないけど、お姉様やお兄様はご自身のお相手といつも寄り添っている。

仲睦まじい兄姉に私はいつも羨ましいと思っていた。


そんな私の気持ちを知ってか知らずか…リシェ様は迷いながらも再び私の肩に手を置いた。

それが嬉しくて、リシェ様を見上げると吃驚するほど距離が近い。

リシェ様の頰はほんのりと赤に染まり…その瞳は真剣に私の目を覗き込んでいる。


カタンッと馬車が揺れ…私とリシェ様は更に距離が近づく。

そして…リシェ様の唇が、私の唇に優しく重ねられた。

初めての事にどうしていいのか分からずリシェ様を見つめていると、リシェ様が眉を少し下げ…少し照れたように微笑む。

その顔に胸がキュッとなって、誤魔化すように微笑んだ。


王城に到着すると、国王陛下と王妃様が待つ謁見の間まで案内される。

扉の前にはお父様が心配そうに私達を待っていた。


三人で扉の中に入り、国王陛下と王妃様の前まで進むと膝を折った。


「ワインバル王国王太子のリシェブール・ワインバルです。この度は陛下にリナリア嬢との婚約の許しを頂きたく参りました。」

片膝をつき、リシェ様は真剣な顔で国王陛下を見つめる。

凛々しい顔のリシェ様を見慣れていない私の胸が高鳴る。


「うむ、ワインバル王国の国王からも…そして我が国の宰相からも知らせは受けておる。此度の婚約は今後の我が国とワインバル王国を結ぶ架け橋になろう。私は此処にリシェブール・ワインバルとリナリア・クリスティアの婚約を許可する事を宣言する!後日、両国間で婚約の儀を執り行う。」

王座から立ち上がった国王陛下は部屋の隅々まで聞こえるような大きな声で宣言すると、お隣の王妃様は嬉しそうに微笑んだ。

お父様も笑顔だったが…どこか引き攣っているようにも見えたのは気のせいかしら?


国王陛下が退室すると、何故か王妃様が私の元へ降りてきて私の両手を握り…その手を自身の額に当てた。

「おめでとう…貴女の幸せを心より願うわ。」

額から手を離した王妃様は、ふわっと嬉しそうに微笑む。

そして、私はそのまま王妃様にお茶会へと誘われた。


王妃様のお気に入りの庭園で、王妃様と二人…近くにいるのは王妃様に長年仕えている侍女が一人だけ。

少し離れた場所に近衛兵が見え、少しだけ安堵した。


「まずは婚約おめでとう、リナリア。」

「ありがとうございます。」

紅茶を口に含み、王妃様は和かにお祝いの言葉を口にした。

それに対し、私も微笑みながら答える。

すると、王妃様は…ふぅ…と溜息を溢した。


「貴女が…新しいお相手を見つけられて本当に…本当に嬉しいのよ。貴女にはジュードの事で迷惑ばかりかけていたから、私は誰より貴女の幸せを願っていたの!」

肩の荷が降りたのか、王妃様はいつもの砕けた様子で話し出した。

王妃様とお母様と私だけのお茶会は、いつもこんな感じなので驚くこともない。


「ジュードとの婚約中にリナリアが学んだ王族の勉強はワインバル王国でも役立つはずよ?何より今、貴族の令嬢の中で貴女ほど素晴らしいレディは居ないのよ。…もう、クロードは何をしてたのかしら。」

王妃様は私を誇らしげに見つめたかと思うと…憂いを帯びた顔でクロード殿下に対する愚痴を溢す。

「王妃様から、そのように言って頂き…とても嬉しいです。」

ニッコリと笑うと、王妃様はガバッと私に抱きついた。


「もう…何でウチの子にならなかったのかしら。本当に…それだけが悔しくて堪らない!」

抱きついてきた王妃様を侍女が優しく引き剥がす。

出会った頃の王妃様は私に好意的では無かったが、今ではこんなにも私を大切に…それこそ娘のように想って下さる。

それが嬉しくて私は再び、ふふっと笑みを溢した。


「…リシェブール王太子がリナリアに惚れてしまうのは自然な事なのよね。こんなにも愛らしいのだもの…嫌になったらいつでも帰っていらっしゃい。」

どこか寂しそうに微笑む王妃様には申し訳ないと思いながら首を振る。


「ご安心下さいませ、嫌と思う以前に…私がリシェ様を幸せにして差し上げますわ。」

私が力一杯の笑顔で応えれば、王妃様は目を瞬き…「それもそうね。」とふふっと笑った。


その後、王妃様からジュード殿下も婚約が決まりそうだと教えて頂いた。

だが、すでにリリアお姉様から話を窺っていた私の方が詳しかったらしく…その後はジュード殿下のお相手の事で話に花が咲いた。


「いつでも遊びにいらっしゃい。」


お茶会の終わり…別れの挨拶の後に王妃様は嬉しそうに微笑むと先に席を離れた。

私は暫しリシェ様が迎えに来るのを待つ事になる。


何度も王妃様とお母様と…時にはリリアお姉様も一緒にお茶をした庭園は、季節毎に景色は変わるのに…私はこの景色を懐かしく思う。

次に訪れる時は…私は隣国の王太子の婚約者としてだろうか。

それとも王太子妃としてなのかな?


私はこの景色に誰にも聞き取れないほど小さな声で「ありがとう。」と呟いた。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

本編を頑張った反動か…なかなか、リナリアの番外編が更新出来ずに申し訳ないです。

リナリアは大人しいのか、リリアほど私の脳内で活発に動いてくれないのです(言い訳)

もう少し、お付き合い下さい。

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