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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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王城の庭園で

王城の一室では“婚約の儀“が行われている。

直接、立ち会う事は出来ないので私とリオンは隣の部屋で見守る事にする。

防音魔法を施されているので中の声は聞こえないが、その様子は窓越しに見え…リナリアとリシェ様はどちらも緊張した面持ちだ。

時折、二人が見つめ合い微笑んでいる様子が窺え…そんな二人についつい顔が綻んでしまう。


リシェ様とリナリアの“婚約の儀“は粛々と執り行われ、次はジュード殿下とバーバラ殿下の“婚約の儀“が始まる。

聖女様の指示で残るように言われていた私達は、外の空気を吸う為…庭園へと足を向けた。



「昔来た時は、確か此処でマリナ様に絡まれたのよね。」

「懐かしいね…彼女、今どうしてるのかな?」

リオンと共に、ジュード殿下とリナリアが婚約した日の事を思い出す。

確か…扇子で弾き飛ばしたんだっけ?

あれ?風の魔法で撃退したんだっけ?

んん?魔剣を取り出したんだったけかな?

…よく覚えていない。


「今度は…幸せになると良いね。」

「うん、そうだね。…泣かせたら潰そうかな。」

先程のリナリアの幸せそうな笑顔を思い出し、リオンがしみじみと頷く。

それに合わせ私も同じようにウンウンと頷いた。

でも泣かせたら許さない。


「…リリア、そういうのは言っちゃダメ。」

「…分かった、気をつける。」

ポスンっと頭を叩かれ、私は舌を出して反省すると…リオンは苦笑した。



「おい、何を潰すんだ?」



風の音に紛れて何か聞こえた気もするが…気づかなかった事にしよう。

私とリオンは四阿を見つけ、腰掛ける。

すると、ツカツカと渡り廊下の方から此方に向かって歩いてくる人がいた。

一度、目を向けたが…用がないのでお茶菓子を取り出しリオンに渡す。


「おい!無視するな!!」

肩で息をし、興奮状態のネメアレオン殿下が私達に怒鳴る。

私もリオンもお菓子を齧りながら様子を窺っていると、ワナワナと震え出した。


「だ・か・ら!!無視するなよ!」


………コテンと首を傾げると、リオンの頭にぶつかった。


「「何を怒っていらっしゃるのですか?」」

何に対して怒っているのか分からず問いかけると、ネメアレオン殿下は地団駄を踏む。

…子供かっ!



「はぁ…もういい。…俺にも寄越せ。」

何かを諦めたのか、私の向かいにドカッと座り…手を出してお菓子を強請るネメアレオン殿下に私はお菓子を渡す。

それを慌てて背後に控えていた従者が受け取った。


「あぁ?」

「ダメですよ!毒見します。」

目の前でお菓子を奪った従者にキレるネメアレオン殿下に、従者は慌てて毒見を申し出る。

よく出来た従者だと感心して見ていれば、私達の視線に気づいた従者が申し訳なさそうに頭を下げた。


「当然の対応かと思いますよ?」

首を振ってニッコリと微笑めば、目の前のネメアレオン殿下は更に不機嫌になって「毒でも入ってんのか?」と聞き返してきた。


「王太子になられるのであれば、必ず毒見はしてもらって下さい。」

私の代わりにリオンが答えれば、ネメアレオン殿下は「そういうもんか。」と素直に頷いた。

従者が毒見を終え、ネメアレオン殿下へお菓子を差し出すと…ネメアレオン殿下は嬉しそうにお菓子を頬張る。

…子供かっ!


「ロマネス・ワインバルの尋問を行っていた。」

お菓子を堪能し、従者が用意した紅茶を優雅に飲むネメアレオン殿下は何かを思い出したかのように話し出した。

ワインバル王国の騎士団が取り押さえたが、よくよく考えたらエスティアトリオ王国側が彼らを裁くのかもしれない。

…ん?そこのところ…どうなんだろう?


「ロマネスは…話が通じなくて骨が折れる。まだ暫くは尋問が続きそうだ。」

深い溜息と共に愚痴を吐き出すと、ネメアレオン殿下は城の一室に目を向けた。

彼の見つめた先にロマネス殿下がいるのか…あの辺りが若干騒がしいように思う。


「兄のリシェブールが悪いだとか、どうせ幽閉されるだけだとか…そうなったら女を連れ込んで悠々自適の生活だとか……馬鹿だろ。」

尋問し出てきた言葉がそれだったと頬杖をついたネメアレオン殿下に、私とリオンはかける言葉も無い。

いや…声すら出なかった。


「贖罪の気持ちも無いとか…頭痛がする。一発も殴らずに部屋を出た私を褒めて欲しいものだ。」

そう言って頭を押さえたので、私もリオンもとりあえず拍手してみた。

褒めたつもりなのに「馬鹿にしてんのか?」と睨まれた…解せぬ。


「…幽閉で済むわけないだろ。」

ボソリと呟いた言葉に、私とリオンはウンウンと頷く。

幽閉なんて甘い罰で済まされる訳がない。

そもそも幽閉するにもお金がかかるじゃないか!

そのお金は国民の血税だ、何で罪を犯した奴にお金を使わなきゃならない!

それならば逆に働かせた方が世の為、人の為、ロマネス殿下の為にもなるだろう。

…いや、一緒に働く人には害かもしれないけど。


「……休憩終わったら、また尋問しに行くから…お前らも来い。」

「「えぇ?」」

ムスッとしたネメアレオン殿下は紅茶を飲み干すと、勝手に私達を尋問するメンバーに加えてきた。

それに対し不満の声を上げると、ネメアレオン殿下はニヤリと笑った。


「お前らが解決させた事件だ、最後まで付き合うのが筋だろう?」

そう言って私達の手元のお菓子まで口に放り込み……背後に控えていた侍従が慌てて近づいてきた。

それに対してもやはりニヤリと笑って、ネメアレオン殿下が席を立つ。


「コイツらが毒見したんだ、問題ないだろ?ほら、行くぞ!」

そう言って私達を強引に立たせると…私とリオンは渋々ネメアレオン殿下の後に続いたのだった。

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