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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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私達の失敗

楽団の奏でる音楽にジュード殿下がバーバラ殿下をエスコートし会場の中央に躍り出た。

突然始まった夜会に呆然としていた者達が、二人を目にすると一際大きな声で歓声が上がる。

夜会が始まった事に、私とリオンはホッとし…互いにクスリと笑い合った。


「もっと、盛大に何か起こると思ってた。」

そう漏らすリオンに、私は笑みのまま眉間に皺を寄せ「え?ここ王城だよ?」と返す。

捕縛された二人のどちらかが暴れていたらえらい事だと身を震わせると、リオンはクスクスと笑う。


「何か起きても、僕とリリアが何とかしたでしょ?」

コソッと耳元で呟くリオンに、「それは勿論!」と胸を張る。

これが物語の世界だったのなら…恐らくはもっと大事になっていただろう。


「あ、そろそろ終わるようだね。」

「次はリシェ様とリナリアペアと、ネメアレオン殿下のペアだね。」

本来ならばジュード殿下のダンスの後に開幕宣言がなされるところだったが、既に開幕宣言が済んでいるので次のペアが互いのパートナーをエスコートし会場の中央に歩み寄る。

リシェ様とリナリアの登場に会場中が騒めいたが、音楽が始まり踊り出すと静かになった。

ライトに照らされたリナリアの美しさに息を呑み…そしてそれは異性の垣根を越え、男性も女性もウットリと二人を見つめていた。


ネメアレオン殿下とそのパートナーのダンスはキレがあり、情熱的なものだった。

時折、私に目を向けるネメアレオン殿下は何故か不敵に笑っていた。

…あれかな?嫁自慢かな?

ネメアレオン殿下のお相手は、話によると獣王国の公爵家の令嬢だそうで…何とも色っぽいお姉様だ。

殿下より一つ年上の彼女は胸元が広く…煌びやかなドレスは目が潰れそうなほどに眩しいゴールド。

真っ赤なピンヒールを履いているのに、安定したダンスを踊っている事から体幹はかなりしっかりと鍛えられていると思われる。

まぁ、一言で言うとケバくて派手な美女だな。


曲が終わり、今度は自国の公爵家が前に出る。

アレスが私の手を取り…ゆっくりと中央に歩み寄ると嬉しそうに微笑む。

「リリア、お疲れ様。ここからは夜会を楽しもう!」

「うん!ありがとう。」

アレスの笑みに釣られ、私も微笑むと曲が始まった。




「リオン、リリア、事件を解決に導いてくれて感謝する。」


ダンスを終えた私達はクロード殿下へ挨拶に来ていた。

少し離れたところにはジュード殿下とバーバラ殿下もいる。

無事、事件は解決したのだけど…と私とリオンは顔を見合わせた。


この会場にいるほぼ全ての方にはパートナーがいる。

それなのに、クロード殿下はお一人。

しかもダンスもしていない。

…確認なんだけど、これって良いの?


「ん?…あぁ、僕が一人で居るから驚いた?」

私達の戸惑いに気づいたクロード殿下は苦笑いを浮かべ、うーんと何かを考える仕草を見せた。

その様子に私達は更に困惑する。


「はは…まぁ、その内にどこかで婚約者は決まると思うし…それまでは自由にしていようかなって思ってね。変に令嬢を誘って勘違いされても困るしね。」

そんな軽い返事をされても、こっちも困るよ。

もう結婚していてもおかしくないお年頃なのに婚約者も居ないなんて…と思っていれば、近くに居たリーマスお兄様が頭を抱えていた。

恐らくだが、お兄様は宰相府へ就職し…お父様と同じ職を目指すのだろう。

将来の自分の上司に悩まされているに違いない。


「それに、今から自国の令嬢を婚約者に据えても王妃教育で五年くらいは結婚出来ないしね。」

王妃教育…その言葉にリナリアの姿が目に浮かぶ。

…そうか、唯一…王妃教育らしい事を終えているのがリナリアだったな。

それをリシェ様に横取りされてしまった訳ね。


「今回の事で父上も思う事があっただろうし…もう暫くは僕も自由でいられるんじゃないかと思う。」

ニコニコしながら話すクロード殿下に、私もリオンも呆れて引き攣った笑みしか出なかった。

…気づいてたのか、この人。

今回の事件で私達が失敗し申し訳なく思っていた事を、クロード殿下は最初から分かっていたらしい。


そう…私とリオンは事件解決の為に動き過ぎたのだ。

国王陛下は私達にクロード殿下に協力するよう命じた…つまり主導権はクロード殿下にあった。

それに対し、私達はクロード殿下に進捗を報告はしていたものの…ほぼ自由に動いてしまった。

そして…今日、夜会で断罪する事もそうだ。

本来ならばクロード殿下が断罪すべきだった。

国王陛下もそれを望んでいた筈だ…何故ならクロード殿下の力量を測りたかったのだと思う。

彼に王太子として…後の国王としての器があるかどうかを見極める為に。


それをこの方と来たら…もう少し自由でいたいからと、国王陛下の意図を分かった上で私達に断罪を押し付けたのだ。


あーーーーー…手のひらで転がされてる感が半端ない!

そういうの好きじゃないのに…。

なんか負けた気がする…悔しい…。


「父上に試されていたのは僕だけじゃないんだけどね?」


私とリオンが悔しさに悶絶しているのを嬉しそうに眺め…誰にも聞こえないような小さな声でクロード殿下は呟く。

唯一聞き取れたアレスはクロード殿下と目が合うと、小さな溜息を漏らすのだった。


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