事件の終わりと始まる夜会
「ロマネス…お前が関与している証拠も見つかっている。」
チャミシル様が去った後、リシェ様がゆっくりとロマネス殿下に顔を向けた。
呆然としていたロマネス殿下は、リシェ様の言葉に俯く。
それを了承を捉えたリシェ様がワインバル王国の騎士を呼び寄せる。
「何が悪い…?」
騎士がロマネス殿下に駆け寄ろうと足を踏み出すと…ロマネス殿下は俯きながら呟く。
よく聞き取れず、私達はロマネス殿下に目を向けるとロマネス殿下はガバッと顔を上げた。
「獣人を奴隷に欲しいと思ってる奴らに売りつけて何が悪いんだ!獣人など人では無いだろう?」
大声で怒鳴り散らすロマネス殿下の言葉は…とても王族とは思えなかった。
獣人を差別し、蔑むその姿に私はグッと奥歯を噛む。
手に力が入り…握られた手のひらに血が滲んでも緩める事など出来なかった。
人じゃ無い…だと?
アレスもキャティ様も、ペルノも…助けた獣人もちゃんと人だ!
私達と同じように話し、同じように笑い、同じように悲しむ…ちゃんと感情を持った人達だ!!
我慢出来ずに一歩前に踏み出そうとすると、そんな私をアレスが抱き止める。
どうして!?とアレスを見ると、アレスは首を振り…そしてロマネス殿下の背後に顔を向けた。
「…ほう?獣人は人で無いと申すか…。」
「あぁ!人では無いだろ?バケモノと一緒だろ!」
自身の背後から聞こえた声に勢いよく振り返り、怒鳴り返すロマネス殿下。
だが…その声の主が目に入ると…今度は顔を真っ青にし震え出す。
「ほう…では、今の私はバケモノ…と言う訳か。」
グルル…と喉を鳴らし、低い声が響く。
声の主は態と半獣化し、ロマネス殿下を睨みつける。
その姿にロマネス殿下は腰を抜かし、床に尻餅をついた。
「…我が国の大切な民を勝手に売り飛ばすとほざいていた先程の威勢はどうした?」
黄金の鬣、鋭い眼差し…半獣化から更に完全獣化になったネメアレオン殿下は腰を抜かしたロマネス殿下へとのしかかる。
ロマネス殿下は「ヒィィ!」と悲鳴を上げ、何とか逃げようと暴れるが…そこから逃げる事は叶わなかった。
「おい、リシェ!!…早くコイツを連れて行け…目障りだ。」
腰を抜かし…今にも泡を吹きそうなロマネス殿下にフンッと鼻を鳴らすと、ネメアレオン殿下はリシェ様に目を向けた。
それに答えるとように頷くと、リシェ様は騎士達に連行するように命令する。
ロマネス殿下が連行されて行くのを見つめながら、ネメアレオン殿下がリシェ様に声をかける。
「お前んとこの王子は最悪だな………お前は違うだろうな?」
睨むような視線に、リシェ様は慌てて「違うに決まってる!」と否定した。
その返答にフンッと鼻を鳴らし、ネメアレオン殿下は獣化を解いた。
殿下方の様子を見ていた私達に、国王陛下がゆっくりと歩み寄ってくる。
ポンッと私とリオンの頭に手を置き「ご苦労だったな、後は私達が処理する。」と私達にだけ聞こえる声で囁くと…国王陛下は会場中を見渡した。
「クロード!ジュード!」
大きな声で叫ぶ国王陛下に慌てて二人が扉から出てくると、国王陛下は再び会場に目を向けた。
「夜会の邪魔をしたな…改めて息子達が仕切り直す!是非、楽しんでいってくれ!」
会場中に聞こえる声でそう宣言すると、殿下方の肩にポンと手を置き…国王陛下は下がって行ってしまった。
クロード殿下とジュード殿下は顔を見合わせ、互いに一つ頷くと大きく息を吸い込んだ。
「「此処に夜会の開幕を宣言する!」」
その声を合図に美しい音楽が会場中に響き渡った。
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本日二話目の投稿。
なんて書こうかと悩みに悩んで長くなり…そして更新が遅れました。
もっと細かく事件関係者の思いとか入れようかと思いましたが、長くなり過ぎるからと証拠になる部分しか入れませんでした。
事件は終息しましたが、まだ少し続きます。




