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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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断罪

「覚悟…だと?」

チャミシル様に投げかけた言葉なのに、何故かロマネス殿下がゴクリと喉を鳴らす。

あれかな?全部、自分に投げかけられた言葉だと思い込んじゃうのかな?


「えぇ、此処からは私達がお二人を断罪させて頂きますわ!」

ズビシッと畳んだ扇子を二人に向けると、二人は身を震わせたじろいだ。


深呼吸し、心を落ち着かせると…私とリオンは二人に今回の事件の事を話し始めた。


「僕達が高等部に入学して間も無い頃、騎士団の遠征で訪れた森で獣人の少女を助けました。」

そう語り出したリオンはキャティ様の手を引き、抱き寄せる。

愛おしそうに髪に指を絡ませ…話を続けた。


「彼女がどこの誰なのかを探る為、彼女が来た森の先のエスティアトリオ王国との国境に向かった僕達は、驚くべき事に国境の塀が破壊されている事に気づいたのです。」

リオンが一息つくと、交代とばかりに私に目を向けた。

私はコクリと頷き、リオンの続きを話し出す。


「探査魔法を使い、その塀から小動物系の獣人が人の手によって入国した事が分かりました。そこで今度はどこに向かったのかを調査したのです。…近隣の町村でも聞き込みを行い、馬車の目撃情報を得ると…その馬車はワインバル王国の公爵家の物だと分かったのです。」

語りながらゆっくりと二人から目線を外し、リシェ様を探す。

それに気づいたリシェ様が、ゆっくりと私達の元へ歩き…ロマネス殿下の前へと姿を見せる。

ロマネス殿下は目を見開き…「兄上…?」と声を漏らした。


「その少し前、ワインバル王国でその公爵が人身売買に関与しているという情報が僕の耳に入った。そして…オステリア王国に来た私は彼らと共に調査を始めた。」

リシェ様が今度はリオンの番だと、リオンに目を向ける。


「両国の協力を得た僕達は、獣人の救出の為にワインバル王国に向かった。…そして、ワインバル王国の騎士団の協力の元…メイカー公爵とデッド商会長を捕縛したのです。」

淡々と…そしてどこか鋭い声で話すリオンの言葉に、ロマネス殿下とチャミシル様は驚きを隠す事なく目を見開いた。

そんな二人から目を離し、リオンは私達の方向へ顔を向ける。

背後から顔を出したペルノが、チャミシル様を睨みつけた。


「彼を…ご存知ですね?」

静かに問いかけるリオンに、チャミシル様は眉間に皺を寄せる。


「彼は…チャミシル嬢に無理やりメイカー公爵の元へ連れて行かれた青年です。」

誰にともなく説明するリオンに、チャミシル様は明らかに不機嫌になると…ペルノを睨み返した。

それに怯む事なくペルノも睨み返す。


「オステリア王国に戻った私達は、事件に関与した他の方々を捕らえる為にある罠を仕掛けました。そして…我が家で開かれた夜会である人物が罠へと掛かったのです。」

そう言って私は王族が入場する予定の扉に目を向けた。

扉の脇に控えていたライルはゆっくりと近づいてくると、チャミシル様の前に立った。


「…ライル…貴方、今までどこに?」

チャミシル様は驚愕の表情を浮かべ…震える声でライルに問いかける。

そんなチャミシル様から目線を外すと私達に振り返り、苦笑した。


「ちょっと!ライル、答えなさい!」

自分を無視するライルにチャミシル様は我慢出来ずにライルの両腕を掴んだ。

だが、ライルはその手をやんわりと外し…無表情で口を開いた。


「…今の今まで僕がいない事に関心が無かったとはね…僕はずっと、クリスティア家に拘留されていたよ。」

そう答えたライルはチャミシル様から一歩離れ…再び私達に顔を向ける。

チャミシル様は自分がライルに拒まれると思わなかったのか、再びライルに縋ろうとした。


「…僕は二人が会場に入る時からずっとそこに居た…君は気付きもしないで目の前で他の男に縋り、僕を裏切ったよね?」

低い声で冷たく言い放つと、ライルはチャミシル様を完全に拒み…再び壁際に移動する。

信じられない…と呆然とするチャミシル様。


「ライルの証言を元に、更にマッコリン子爵とその子息の情報を得た私達はすぐに子息の救出へと向かったわ。彼はマッコリン子爵が所有するチャミシル領にある別荘に閉じ込められていたの。」

ハンザン様の事を話すと、チャミシル様は呆然とした顔をすぐに変え…私達に顔を向けた。

その顔を青く…自分達が置かれている状況を理解しているようだ。


「最後に…僕達は再びチャミシル辺境伯の元を訪ねました。塀を壊した犯人を突き止める為に!」

リオンが声を張ると、会場を警護していた熟年の騎士が一人…私達の元に歩み寄ってきた。

ロマネス殿下もチャミシル様も近寄ってきた騎士に身を震わせる。

だが、騎士が顔を上げるとチャミシル様は驚きに目を見開いた。

「お父様…?」


そう、チャミシル辺境伯をこの場に居合わせる為に私達はチャミシル辺境伯に騎士団に紛れ込むようにお願いしていた。

夜会前日の警備の打ち合わせはこの為でもあったのだ。


「私から二人に頼んだ事だ。…国境の塀を壊し、犯罪が行われていたなどと許せる訳が無いだろう。まさか…自分の娘がその犯罪者だとは思いもしなかったがな…。」

苦虫を噛み潰したような顔をし、深い溜息を漏らすチャミシル辺境伯に…チャミシル様は真っ青な顔で首を振る。

「違う!私じゃないわ!証拠はあるの?」

縋るようにチャミシル辺境伯に掴みかかると、チャミシル辺境伯は苦痛に顔を歪ませる。


「彼らの探査魔法により、ジェシカとそこのライルが塀を壊した事が判明した。」

何かを堪えるように…眉間に皺を寄せチャミシル辺境伯が答える。

「そんなの…証拠でもなんでも無いわ!探査魔法だと嘘を吐いたに違いないのよ!私じゃない…信じてお父様!!」

涙ながらに訴えるチャミシル様を辺境伯はやんわりと引き剥がした。

「…どうして…?」と信じられないものを見る顔でチャミシル様は呟く。


「探査魔法を映像化し確認させてもらった…そして、それを確認したのは私や彼らだけでは無かった。」

愕然とするチャミシル様にゆっくりと語ると、チャミシル辺境伯は自身の背後にいる人物へと目を向けた。

その目線を追いかけたチャミシル様は更に目を見開く。

…そこにはオステリア王国の国王陛下と騎士団長のジン様、魔術師団長のビルショート様がいた。


チャミシル様は驚愕の表情のまま…膝から床に崩れ落ちる。

そこに数名の騎士が駆け寄ると、チャミシル辺境伯は一歩後に下がった。


「その者を連れて行け!」

国王陛下の命令により、グッタリと肩を落としたチャミシル様は連行されていく。

その後ろ姿を…チャミシル辺境伯は悲痛な表情で見つめていた。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

更新が遅くなり、申し訳ないです。

長すぎる為、二話分けます。


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