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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第3章 私リリア!運命が動き出したの。
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物語の真相

チャミシル様とロマネス殿下は私が犯したという罪の証拠を何一つ用意していなかった。

その事に私は手で目元を覆い…天を仰ぐ。

誰か…誰か…彼らに「証拠も無しに断罪するな。」と諭してくれないだろうか…。


それもこれも…聖女様が書いたという物語のせいなのかもしれない。

今回の断罪劇が始まったのも、ロマネス殿下の最初の台詞も…本に書いてあったものに似ていたように思う。

私はクラッチバッグ型の魔法鞄から例の本を取り出した。

夜会やパーティーなどに便利なクラッチバッグ型の魔法鞄は、クリスティア家の商会で来シーズンに販売予定だ。

私が本を取り出した事で、周囲の女性が騒ついた。


「……これはマドモアゼル・ヒミコ著の“私だけの王子様“という本です。」

タイトルめっちゃ恥ずかしい!!

声に出しただけでこんなにもダメージがあると思わなかった…聖女様のネーミングセンスを疑うよ。


「チャミシル様は…これが“ご自身の物語“だと思っていませんか?」

私の問いかけに、チャミシル様は顔を真っ赤にしワナワナと震えている。

どうやら心当たりがあるようで良かった。

これで違ったら本当に恥ずかしいし、タイトル言った事を後悔していただろう。


「フンッ…それが何だって言うのよ!初めて読んだ時に、吃驚するほど私と同じだったのだもの…きっと未来視できる方が私の物語を書いたのよ!!」

そう言ってチャミシル様は胸を張り…私を見下すように顔を上げる。

…顔を上げたのだが、私の方が背が高い為…見上げる形になっている。


「先日、この本の著者に話を窺いました。未来視をして書いたとは一言も仰られませんでしたよ?」

「言わなかっただけで、そうに決まってる!だって、そっくりじゃない!」

いや、そっくりでは無い。

むしろ共通点は辺境伯の娘ってだけだ…と、再び口を開こうとした時だった…。

それまでロマネス殿下の後方で様子を見ていたリオンがスッと私とチャミシル様の間へ割り込む。


「確かにこれはフィクションでは無いよ。」

そう言って私を振り返るリオン…その言葉に私は眉を寄せ、チャミシル様は嬉しそうに笑って口を開きかける…。

「でも、チャミシル嬢の話でも無いよ。」

チャミシル様の開きかけた口をすぐに閉じさせたリオン…何を考えている?

私もチャミシル様も怪訝な顔でリオンを見つめると、リオンは“僕に任せて!“と私にだけ見える角度でウインクした。

…こんな時ですら、あざとい。


「これは恋愛小説家が書いた本だと思われているけど、実際は自伝だよ。マドモアゼル・ヒミコ…いや、聖女様の自伝書の一部に過ぎないんだ。」

そう言ってリオンはジャケットの内ポケットから別の本を取り出した。

因みに男性ジャケットの内ポケットを魔法鞄と同じ仕様にした事で夜会やパーティーなど様々な場面で男性はスマートに物が取り出せる事を実現したこのジャケットも来シーズンにクリスティア家の商会で販売が始まる。

こちらも男性方の反応はかなり良かったようだ。


「九年前…ワインバル王国の建国二百年を記念して、聖女様の自伝の中でもワインバル王国の女性達に人気が高かった部分を恋愛小説として出版された物が今リリアが手にしている物だよ。」

リオンは説明すると、私から本を取り上げ…自身の持っていた本と一緒にチャミシル様に手渡した。

チャミシル様は大慌てで本を読み比べ…呆然とし…本を落とした。


「リオンはどうして自伝の一部だって…気づけたの?」

チャミシル様ではないが、私もリオンが気づけた理由が知りたくてリオンに問いかける。

リオンはチャミシル様が落とした本を拾い上げ、コテンと首を傾げる。


「巻末の下に“聖女自伝書より“の文字に気づいたからだけど?」

そう言って、リオンは巻末を見せる。

…書いてあるし!

そこまで読まないし…!!

だから聖女様はこの本を渡した時に恥ずかしがっていたのか…てっきり自分が書いた恋愛小説だからだと思っていたよ。

ガクッと肩を落とした私だが…慌てて体勢を戻す。

今の私は公爵令嬢…しゃんとせねば!


「チャミシル嬢は王子に選ばれ、自分よりも身分の高いリリアを蹴落としたかった…だから有りもしない罪を王族主催の夜会ででっち上げた…この小説が自分の物語だと勘違いしてね。この小説の通りならば、リリアは断罪されチャミシル嬢は王子と結ばれる運命にある…そう信じて疑わなかった訳だ。」

リオンの言葉にチャミシル様は下唇を噛み、目線を左斜め下へ向ける。

図星…なのかな?


「さて、では僕達からも良いかな?」

本を内ポケットへ収納すると、リオンは私の横に立ち…私の肩をポンっと叩く。

そんなリオンに顔を向けると、リオンも私を見つめ互いに頷いた。


「公爵令嬢である私を貶めようなんて、それ相応の覚悟があるのでしょう?」

私は腕を組み、胸を張ると…不敵な笑みを浮かべ叫んだのだった。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

然りげ無く自社の製品をアピールする双子。

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