証拠をご提示下さい
「私の罪とは一体、何の事なのでしょう?」
人に指を差したまま、ドヤ顔のロマネス殿下にどうしたものかと思いつつ問いかける。
鼻息荒く私を睨み、ニヤリと嫌な笑みを浮かべると…ロマネス殿下が語り出した。
そう…語り出したのだ…生まれてから今までの自分が如何に素晴らしいかを…。
私の罪がどこで出てくるか分からないので、語り始めた最初のうちはちゃんと聞いていたが…流石に十分くらい経つと飽きてきた。
しんどいです…誰か助けて…と隣で私を抱くアレスを見つめる。
…はぁ、格好良いなぁ…と現実逃避してみた。
現実逃避もしたくなるでしょう?
だって自分自慢をするロマネス殿下と、それを恍惚の表情で見つめるチャミシル様。
その背後に見える扉は少し隙間を開け、顔を覗かせるジュード殿下とクロード殿下。
因みにネメアレオン殿下は面白がって、扉から出てきちゃってます。
今はロマネス殿下の後方でリオンと笑いを堪えてますよね?
見えてますからね?後で覚えておくと良い…。
「おい!聞いてるのか!?」
現実逃避しているのがバレたのか、突然目の前のロマネス殿下が私に怒鳴った。
それを庇うようにアレスが私を背後に隠す。
「あ?お前は誰だ?」
「リリアの夫です。」
アレスに怪訝な表情で問いかけるロマネス殿下。
その問いかけに間髪入れずに答えるアレス。
…聞きましたか?
私の夫ですってよ?
キャァーーー!!って、やりたいのをグッと我慢しロマネス殿下に目を向ける。
「…おっ…と?…どういう事だ!リリアは私に惚れていたのでは無いのか?」
とんでもない事を呟くロマネス殿下に、私は思わず顔を顰める。
気持ち悪いからそんな勝手な妄想しないで欲しい。
そして口にも出さないで欲しい…気持ち悪い。
「リリアは私の妻だ…変な言い掛かりはやめて頂きたい。」
ギュッと私を抱きしめ、ロマネス殿下を睨みつけるアレス…好き。
何これ…格好良すぎるんだけど…好き。
って、惚けている場合ではなかった。
「…ところで、私の罪って何でしたっけ?」
アレスの胸をそっと押し、私はロマネス殿下に問いかけた。
いい加減…本題に入ってもらわなくては。
「お前は、私と恋仲のジェシカ嬢に嫉妬し…ジェシカ嬢へ数々の嫌がらせをしたらしいな!」
「してませんけど。…それに私が愛しているのはアレスだけです、勘違いしないで下さい。」
ビシッと決めたつもりのロマネス殿下に、私は首を振って否定する。
勘違いも甚だしい。
「お前がやったという事は分かっているんだ!」
スルーした。
私の返答をスルーし、話を続けるロマネス殿下に思わず溜息が出そうになる。
「では、私がやったという証拠をご提示下さい。」
仕方無いから付き合ってやるか…と、嫌がらせの証拠を求める。
「……………。」
私の言葉に何故か固まるロマネス殿下。
何故…黙るんだ?分かってるって断言したなら証拠があるだろう?
「……………証拠を出して下さい。」
一向に証拠を出さないロマネス殿下に再度問いかけると、ロマネス殿下は困ったようにチャミシル様を見る。
チャミシル様は私を睨み返す。
「まさか…証拠も無しに私を断罪しようなどと思ってませんよね?」
ニッコリと微笑むと、チャミシル様は眉間に皺を寄せ叫んだ。
「貴女が私を虐めていたのは知っています!被害者の私が言うのだもの、それ以上の証拠は無いわ!」
………え?馬鹿なんですかね?
あれ?ジュード殿下の話じゃ、成績はそこそこって言っていたよね?
え?馬鹿なんですかね?
「ならば、その被害にあった日付け、内容…あと怪我などしていたら診断書もご提示下さい。」
被害者ならば分かるでしょう…多分。
私が何をしたか知らないけど。
「そ…そんなものは無いわ!」
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タイトル…悩みに悩んで、ちょっと妥協しました。




