目覚めるとそこは!
薄っすらと瞳を開ければ、カーテンから漏れた淡い光が部屋を明るくし始めていた。
可愛らしい淡いピンクを基調とした部屋は見慣れているのに、違和感があった。
私の部屋だけど…
私(立花 葵)の部屋じゃない
目覚める前に見た光景は…今の私の記憶ではない?
少し離れたところにあるドレッサーに目をやると、そこに映る私の姿が見える。
リリア・クリスティアの姿だ
ピンクグレージュの髪は緩やかなウェーブがついていて、ふわふわと揺れる
ヘーゼルの瞳は目尻が少しキツめに吊り上がっっている
6歳の私の記憶もあるけれど、先ほどの夢は…
夢のようで懐かしい記憶のようだ
つまり、あれだ。
転生ってやつだな?
…ネット小説の読みすぎで冗談半分に考えてみたが、冷静に考えてみても同じ結論になる。
この見た目からするに悪役令嬢って感じが否めない。
きつい印象の顔立ち…
そして公爵家という高い身分。
間違いなく将来は悪役令嬢に違いない
まあ、ヒロインってキャラじゃないし
ヒロインて好きじゃないしね
誰にでも愛されるキャラより、一人だけに愛される方がいい
平和が一番である
だが、しかし…
悪役令嬢と言えば、断罪イベントとか国外追放とか処刑とかありそうだな
リオンや祖父母と離れるのって嫌だな
ふと…ある事に気づく
死ぬ前に私は悪役令嬢が運命に立ち向かう系の小説を好んで読んでいた。
所謂、異世界転生ものだ
そして悪役令嬢の誰もが通る『あの作品の悪役令嬢!?』的な閃きを…
私は持っていない
そう…どれだよ?って気持ちでいっぱいなのは、私がネット小説を一度に5種類以上も読んでいたからだ。
因みに乙女ゲームは5年前に辞めたし、こんな如何にも『外国貴族』ってやつは趣味じゃなかった。
つまり…私がどのような結末を迎える悪役令嬢になるかは分からないし
どんなキャラが出てくるのかも分からない
詰んだな…
絶望しかないよね
思わずシーツを握りしめる
すると思いもしないところから声が聞こえた
「リリア…?」