適任者
「さて、そろそろ本題に入ろうか。」
沈黙を破るように、クロード殿下が場を仕切る。
それに関してリシェ様も、ネメアレオン殿下も意義を申し立てる事はなかった。
来る三日後、王家主催の夜会の打ち合わせが始まった。
「まず、ライルは一度…ジュードの侍従に戻す。これはロマネスとチャミシル嬢を油断させ夜会に留まらせる為だ。」
初っ端からとんでもない事を言い出すクロード殿下だが、それに対して誰も不満は無いようだ。
ネメアレオン殿下は「最終的にはライルという男も捕らえるならば問題無い。他を油断させる事が出来るのなら、使えるものは使うべきだろ。」と、むしろ賛成していた。
「夜会の翌日に私とリナリア嬢の婚約の儀を行う事が決まったから、私の父上は夜会までにオステリア王国に来るそうだ。騎士団が既に捕らえているメイカー公爵とテッド商会長も連れてくると手紙にあったよ。」
リシェ様は父親である国王陛下がオステリア王国に来る事を話すと、ネメアレオン殿下も「私の父上も同じ理由でオステリア王国に来ると手紙が来ている。」と教えてくれた。
ジュード殿下の方も婚約の儀を行うようだ。
……なるほど。
夜会で事件関係者を集め、捕らえる前に…三国で話し合うのかも知れないな。
だから、ワインバル王国で捕らえた罪人も連れてくるのか。
獣人達も、ライルもハンザン様も…マッコリン子爵も。
全てを王城に集め、速やかに裁くのだろう。
「問題は…誰が二人に事件の事を突き付けるのか…だな。」
最後に本日集まった一番の目的を口にするクロード殿下。
それに対し…互いに顔を見合わせる殿下方。
私とリオンとアレスは、その様子を他人事のように見つめる。
一体…誰が言うのかしら?
『犯人は貴方方だ!』みたいなやつ。
そんな事を考えながら、一人一人見つめていくと…クロード殿下と目が合った。
慌てて次のネメアレオン殿下を見るも…目が合う。
…リシェ様に目を向けても…合う。
嫌な予感しかしない。
「やはり、決められない時は“くじ引き“が宜しいと思います。」
何とか関わらずに済むように提案すると…御三方が首を振って断った。
「まず、私は被害を受けた国で自分で調査をした訳でも無いから無理だ。」
最初に口を開いたのはネメアレオン殿下だった。
相手に細かい事を聞かれた時に答えられない…と、断られた。
「僕は事件の加害者側の人間だから、相応しくは無いかな。」
そう断ったのはリシェ様。
「そうなるとは思っていたけど、僕だけでは心許ないかな?」
ニッコリと笑って私とリオンを見つめてくるクロード殿下。
「「…証言はしますよ?」」
リオンと顔を見合わせ、答えれば…御三方は笑顔で首を振る。
「やはり、此処は…事件を解決に導いた二人に頼みたいと思うんだが?」
「賛成だな。」
「あぁ、それが一番だね。」
何故か私達の意見はスルーされ、殿下方が話を纏めていく。
私とリオンは、御三方に不服そうに口を尖らせる。
「ここまで首を突っ込んだんだ。頭の先までどっぷりと付き合ってもらうよ?」
ニッコリと黒い笑みを浮かべたクロード殿下と、その横でニヤリと笑うネメアレオン殿下とリシェ様。
これ…絶対に日頃の仕返しされてるんじゃない?…と、疑わずにはいられなかった。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。
遅くなってしまい申し訳ないです。




