リリア、優しさに触れる
声を揃えて頭を下げる若者達…いや、獣人達。
その光景に昔懐かしい童話を思い出す。
…何か恩返しに来たのだろうか?
いや…ネタバレが早すぎるから違うな…と頭を振った私は彼らに目を向ける。
そんな私達を見たお父様が慌てて駆け寄ってくると、獣人達に邸に入るよう促す。
そして、お父様が私達に顔を向けた。
「あぁ、説明していなかったね。」
そう言って、邸に入り広めの応接間に向かう道すがら簡単に説明してくれた。
獣人達が皆、完全獣化から解けたら王城で事情聴取をする事が決まっていたらしい。
完全獣化が解けたという事は…少しは心が落ち着いたのだろう。
本当に良かった。
それから皆んなでお茶をし、旅の疲れがあるといけないからと獣人達は各部屋へ案内する事になったのだが…。
部屋を出て行く際に何故か一人ずつ私とリオンの元に来て「ありがとうございました。」と頭を下げて行ったのだ。
こんな事は慣れてなくて、少しばかり照れてしまう。
私とリオンは、そんな彼らに「元に戻れて良かった。」と告げた。
彼らは嬉しそうに微笑んで部屋を後にする。
獣人達が部屋を出て行くと、お祖父様が私とリオンにソファーに座るように促した。
何かとても大切な話があるようだ。
「リュークから“リリアの事情“を聞いたと手紙を貰ったが…事実かな?」
お祖父様の言葉に私は真っ直ぐに見つめ返すと、一つ頷く。
そんな私の横で、リオンが慌てて私を庇う体勢になった。
「僕のせいなんです!」
だから、リリアは悪くない…と。
声にしなくとも悲痛な表情で、リオンの優しさが伝わる。
「それも聞いてる。安心なさい、怒っている訳では無いんだ。」
真剣な顔のお祖父様は、ふわっと優しい表情に変えると…私とリオンを交互に見つめた。
その表情にリオンがスッと元の体勢に戻る。
「それにリュークからは、口外しないと聞いているしな。」
私達から目を離すと、お祖父様はお父様を見た。
お父様は苦笑いを浮かべている。
「リリアの事情を口外などすれば、大変な事になるからね。それこそ…国内外からリリアが狙われてしまう。」
そう言ってお父様も苦笑いだった表情を和らげた。
…そうか、この国だけでは済まされないのか。
……恐ろしい…と、身震いする。
そんな私にリオンとは反対側の私の横に座ったアレスがそっと寄り添い肩を抱いた。
「大丈夫…その時は全力で守るから!」
力強いアレスの言葉に胸がきゅうっとなる。
両親も祖父母も…リオンも同じようにアレスの言葉に頷いた。
それが何とも心強くて目が潤みそうになる。
リーマスお兄様とリナリアは話が分からず首を傾げていたが、分からなくて良いと思った。
巻き込みたくはないのだ。
知らなければ知らないままでいて欲しい。
家族の優しさに触れ…私達が微笑み合っていると…突然、部屋をノックする音が聞こえた。
お父様が不審に思いながらも返事をする。
「すまない、リシェブールだ。…少し、話をさせてくれないだろうか?」
扉越しに聞こえたリシェ様の声が、いつもより緊張しているのか強張っているように思えた。
家族で顔を見合わせると…お父様が立ち上がり扉に向かった。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。
書き漏らしたくないと思いながら書いていると…引き伸ばしたい訳では無いのに長くなります。
申し訳ないです。




