久しぶりの抱擁
夜会まで一週間となった週末。
王都の別邸に祖父母とアレス、そしてキャティ様がやってきた。
と、思っていれば何故かもう一台…大きな馬車が門を潜る。
いつものように両親と兄妹、そして使用人一同で迎入れる為、待ち構えていた私達は不思議に思って首を傾げた。
馬車に入っている紋章は我が家の物だが…はて、他にもお客様が来る予定だったかしら…と馬車が停まるのを待った。
「元気だったか?活躍は耳に入っているぞ!」
「新しい魔法が出来たのですってね、是非あとで見せて頂戴?」
いつものように祖父母とハグをし、嬉しそうに私達に語りかける祖父母。
その笑顔に私もリオンも顔を綻ばせる。
祖父母との挨拶が終わると、続いてアレスが私の前に来て…私の手を取った。
チュッとリップ音がするように、アレスは私の手の甲に唇を落とす。
そんなアレスに私は「おかえりなさい。」と微笑めば、アレスも嬉しそうに「ただいま。」と返した。
…そして、見つめ合うとアレスはその逞しい腕の中に私を閉じ込める。
胸に頬を寄せ…アレスの温もりと鼓動を感じ顔が綻ぶ。
「コホンッ!」
…邪魔が入った。
…じゃなかった!私が周りが見えていなかっただけだった。
此処はエントランスで、家族も使用人も皆んないるのだ。
ついついアレスしか目に入らなくなってしまっていけない。
そそくさと離れると、アレスは私の腰を片手で抱いた。
いつもの事ながら恥ずかしくなって…ある違和感に気づく。
…いつもなら呆れたリオンの声が聞こえてくるのに、今日は無いぞ?
そう思い、隣にいたリオンを見ると……!!
なんと!?
キャティ様の腰をしっかりとホールドし、顔中にキスを落としているではないかっ!?
「リオン!?って、ちょっとストップ、ストップ!!…キャティ様が困ってるわ!」
私が慌ててリオンとキャティ様を引き離すとキャティ様は全身真っ赤になりながら、プルプルしていた。
リオンは…というと、ケロッとしていて。
「なんで?久しぶりに会えたんだよ?邪魔しないでよ!」と口を尖らせていた。
「リオンとキャティ様はまだ結婚して無いでしょ!キャティ様が困っているから止めたのよ?」
そう言ってキャティ様の肩を摩ると、キャティ様は次第に震えが治まった。
「アレスとリリアだって結婚前にイチャイチャしてたじゃん!!」
「それをいつも呆れて止めてたのはリオンじゃない!」
私とリオンは側から聞けばどうしようもない事で口論となった。
最終的に「じゃあ、プライベート空間なら問題ないよね?」と言ったリオンの言葉に私が「まぁ、それなら…。」と同意し…それを聞いていた家族が「いやいやいやいや、ダメだから!」と止めた事で収束した。
そして、改めて後続の馬車に目が止まると…そこから降りてくる方々に注目が集まる。
扉が開くと…数名の若者が馬車から降りてきた。
…が、その顔ぶれに首を傾げる私とリオン。
若者達は私とリオンを見ると嬉しそうに駆け寄って来たのだが…はて?
その顔ぶれに、自身の記憶を辿るが思い出せない。
そう思い、リオンを見るが…リオンもまた首を傾げたままだ。
「「「「「その節はありがとうございました。」」」」」
若者達がガバッと一斉に頭を下げ、私達にお礼の言葉を投げかけてくる。
「えっと…?」
「どちら様でしたっけ?」
そんな彼らに私とリオンも失礼だとは思ったが、問いかけた。
「「「「「あの時、助けて頂いた獣人です!」」」」」
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