補講
「ねぇ、リオン?」
「何、リリア?」
翌日はリオンと二人、学園に来ていた。
そう…出られなかった授業の補講である。
今は教室で先生を待っているのだが…私は一つ疑問に思っている事を口にした。
「普通…お茶会とか夜会って準備に一月は欲しいところよね?」
「うーん…そうだね。招待状を送り、出欠を取ったりとか当日の準備とか警備の調整とか…諸々に準備が必要だと思う。」
私の問いかけにリオンは頭に思い浮かんだ事を一つずつ上げていった。
それを聞きながら思う。
二週間でなんとかなる物なのだろうか…と。
だが、主催するのは王子だ。
謂わば、招待状という名の召集だ。
王族から声が掛かれば、欠席する者はほぼ居ない。
それに、呼ばれるのは貴族の子供だけだ。
それを踏まえれば出来なくもない…多分。
いや、あのクロード殿下の事だ…やれる筈だ。
リオンと共に結論が出たところで丁度、先生が教室に入ってきた。
補講…と言っても、私達は冬季休暇の前にテストを受けている。
しかもテスト範囲は出席していない二週間も含まれていたが、そこは何とか自分達で勉強もした。
つまり……。
「先日のテスト結果だ……えー…補講…したい?…分からない所はある?」
本来ならば休み明けに受け取る予定のテスト結果を手渡された。
…結果は私もリオンも満点だった。
その結果に先生は困り顔で私達に問いかけてくる。
「…補講はしたいです。テストの結果とは別に出席日数の方が困ります。」
リオンが挙手をして先生に告げた内容に、私も同意し頷く。
授業の内容もだが、補講を受ければ出席のカウントもされるのだ。
「うーん…じゃあ、授業で分からない所が無いようなら私の手伝いをしてもらっても良いかな?」
先生は悩みに悩んだ結果、そう提案した。
出席日数が稼げるのなら構わないので、先生の提案に乗る。
先生の手伝いとは、休み明けの授業の準備のようで…私達は教室を出て国史学準備室に向かった。
各教科には専用の準備室というものがあり、先生によって部屋の汚さはまちまちだ。
国史学の先生は几帳面な性格なようで机は綺麗に整頓されていた。
先生の机から少し離れた場所に、授業を準備する為の大きな机が置かれており…その上には大量に印刷された紙が幾つもの束に分けられていた。
因みに以前までは全て手書きだったらしいのだが、リーマスお兄様の発明品のタイプライターと複製機によって格段に作業が楽になったらしい。
国の機関や学園にも卸していると聞いていたが、実際に使用されているのを目にすると嬉しくなる。
その束から一枚ずつ取り、重ねていく作業を頼まれた。
授業を受ける生徒の分に先生の分と予備も含めるとかなりの量になるが、束を並べていき横に移動しながら纏めると…あっという間に終わってしまった。
その後は先生とお茶をし、国史学について語らい…何故か盛り上がって…先生は何故か論文のネタにすると言ってメモを取り出した。
そうして一日を終え、夕方になると先生は私達を笑顔で見送る。
本来なら数日の補講で出席日数を得るのだが、何故か他にやる事も無くなってしまったからと一日で貰えてしまった。
そして、翌日以降も何故か国史学と同じ事を繰り返した。
結局…一日一教科の補講で出席日数を得られた私達は、予定よりも早く補講が終わってしまったのだ。
…そういえば、ロマネス殿下が一緒に受けるような話をしていた気もするが…一度も私達の授業に顔を出す事は無かった。
まぁ、そもそも選択してない授業の補講など受ける必要は無いのだから…と気にも止めずにいたのだが。
…後日、ジュード殿下からロマネス殿下が全教科の補習を受けていた事を聞き…私達は驚愕した。
どうやら、一点も取れなかったテストがあったとか無かったとか。
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