恋愛小説家
「…で?どうやって残りの二人を捕まえるんだ?」
正気を取り戻したネメアレオン殿下は、ソファーの背に身を預けると紅茶を口に含んだ。
何とも偉そうな態度だ…いや、偉いのか。
「それなんですが…次の週末にジュード殿下が王城に数名の貴族を招待し、そこで動こうかと思ってます。」
昨日のエドモンド様の話を思い出しながら答えると、ネメアレオン殿下は何かを思案するかのような仕草を見せた。
「茶会か?」
「はい。」
昼のガーデンパーティーのような催しを考えていると聞いている。
それを確認すると、ネメアレオン殿下はジュード殿下とクロード殿下に顔を向けた。
「一週間遅らせ、茶会では無く夜会にして欲しい。そして、出来たら私とバーバラも招待してもらえないか?」
ネメアレオン殿下の申し出にクロード殿下はすぐに真意が読み取れたのか、黒い笑みを浮かべる。
「すぐに招待状を書き替えよう。警備面の事も心配だから、此方としても一週間先に伸ばせたら助かるしね…ワインバル王国側も招待して良いだろうか?」
クロード殿下の言葉にネメアレオン殿下は「勿論だ。」と言ってニヤリと笑った。
…案外…二人は似ているのかもしれないなと思えた。
「では、その時に全てを終わらそうじゃないか。」
そう締め括るネメアレオン殿下に、私達も頷いた。
…やっと終わるのか。
その後、ネメアレオン殿下が国王陛下に謁見の申込がしたいとの事でクロード殿下と二人だけで話をしていた。
ジュード殿下は未だにバーバラ殿下と見つめ合っている。
私は聖女様にコソッと近づくと…チャミシル様の事を相談する。
「…彼女が同じ転生者?」
私がここ最近起こった出来事を踏まえて、その可能性を口にすると…聖女様はうーん…と悩む。
「話を聞くと…有るかもとは思うが……いや、待てよ?」
何かを思い出したのか、聖女様は扉を少し開け…外に待機していた自身の侍女に何やら頼み事をする。
暫くすると侍女は一冊の本を聖女様に渡し、再び扉を閉めた。
「それは?」
聖女様が持っているのは、どう見ても文芸書だ。
…だが、それが何だというのだろう?
「とある恋愛小説家の小説でね…書かれたのは9年程前だが、ここ数年で再ブレイクしてる物だよ。販売はワインバル王国のみと限定的だが…購入の機会はあっただろう?」
そう言って私に手渡す聖女様。
著者を確認し…私は呆れた顔を聖女様に向ける。
「……マドモアゼル・ヒミコって、聖女様でしょ?」
私の問いに聖女様が目を逸らす。
「…その顔は、何かやましい事でも書いてあるんですか?」
そう言ってペラペラと数頁捲る。
聖女様が慌てて私の手を止めた。
「目の前で読まれるのは恥ずかしいから、家に戻ってからにしなっ!」
そう言って本を閉じさせられる聖女様。
その言葉は本当のようで、ほんのり頰が赤みを帯びている。
「読めば分かるが、ジェシカ・チャミシルは恐らくこの本を自分に重ねているだけだろう。」
…つまり、前世の何かしらの物語を知っている訳では無い…と。
「分かりました、家でゆっくり読みます。」
そう言って話を終えると、クロード殿下方も話が終わったようで私達は聖女様に別れを告げた。
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今日は少しばかり頭痛が酷く、誤字が多かったら申し訳ございません。




