それは轟きと共に(再)
「二人の服は、合わせているのかな?男女の差を除けばよく似た作りなんだね」
クロード殿下は双子ファッションに興味を持ったらしくマジマジと見てくる。
「領地にある裁縫師ティアのお店で特別に作って頂いた物なのです。」
私とリオンはクルリと回り服全体を見せた
「裁縫師ティアのお店の物だったのか、昔は王都にお店を構えていたが今じゃ幻と言われてる…」
クロード殿下はますます領地が気になってしまったらしい…
まずい事をした。
出来るならば、これ以上は殿下と仲良くしてはいけないと…思考を巡らせているとクロード殿下の後ろに居たジュード殿下が文句を言い出した。
「兄上、このような者たちといつまで話しているのですか?他の者への挨拶などは宜しいんですか?」
「このような者とは失礼だろう?今日の主役達と話しているのにジュードこそ、祝いの言葉一つ伝えてないだろう。」
クロード殿下は不機嫌になり、ジュード殿下を諫めた。
言われてみれば、ジュード殿下はただの腰巾着だった。
本当に腰に付いてんだな…などと呑気に見てると、邸のテラスの方から足音が響く。
来る…きっと来る…的な事を連想してしまった。
そんなもんじゃなかった!どっちかというと土砂崩れとかに近い轟だ。
「私の王子さま~~~!!」
変わらずの大音量。
母の手をうまくすり抜けたそれは、ジュード殿下に抱きついた。
抱きついたというか、むしろタックルに近い。
ジュード殿下はなんとか持ち堪えたようだ。
我が家の面々は真っ青になり、慌ててジュード殿下の元へ来るとリナリアを引っぺがそうとした。
しかし、全くびくともしない4歳児は少しずつ泣きそうな顔になっていく。
「申し訳ございません、殿下。すぐに離しますので…」
お母様がジュード殿下に謝罪すると、お母様を見たジュード殿下はボンっと音が出て真っ赤になって固まった。
この世界の人たちはよく固まるのだなと呑気に思ってしまうほど、何処か現実逃避がしたくなった。
「かっ…構わぬ。」
その様子にリナリアは面白くないのか怒り出した。
「王子さまは私の王子さまなのー!」
リナリアは更にしがみつくとジュードに上目遣いで笑顔を振りまいた。
母に似たリナリアの顔を見たジュード殿下は、顔だけでなく見えている皮膚が全て真っ赤になる。
「そ…そうか。ボクは君の王子さまなんだな?君の名は何というのだ?」
「私はリナリアよ、王子さまは何ていうの?」
リナリアは嬉しそうに聞き返す。
見ているこちらはヒヤヒヤしていると言うのに…
「ボクはジュード・オステリアだ。リナリアか、ボクの姫になるか?」
おうふ…さりげに結婚を申し込みやがった。
そして、その発言に周囲の貴族たちは更に騒ついた。
「なる!私、お姫様になれるの?やったー!」
「ふっ、よろしくな。」
大喜びのリナリアはいつになく大騒ぎで…かと思えば突然に電池切れをおこした。
「申し訳ございません、殿下。リナリアは幼い故にお昼寝を挟まなくてはならなくて…」
お母様が申し訳なさそうに説明するとジュード殿下は「ならば、私も一緒に行こう」とリナリアに付き添いながらこの場を去っていった。
呆気にとられる私たちや呆然とする大人たちを他所にクロード殿下は嬉しそうに笑った。
「ふふふ、良かった。これでジュードは僕から離れてくれるや」
「「……え?」」
私とリオンはクロード殿下を不思議そうに見る
「ジュードの事は嫌いではないんだけど、どこに行くにも付いてくるから迷…困っていたんだよ」
満面の笑みで答えるクロード殿下。
今、明らかに迷惑って言いかけて変えたな?
「きっと婚約になると思うから、その時は君たちも王城においで?僕が案内するよ」
「「ありがとうございます」」
殿下自ら案内して貰うのは申し訳ないが、興味はあるので嬉しかった。
クロード殿下はお兄様のところに行こうとして、不意に振り返り私たちを両腕で抱くと凄く小さな声で囁いた
「その時は君たちだけの秘密も教えてね」
そして背を向けヒラヒラと手を振ってお兄様の方に歩いて行ってしまった。
「こ…怖かったね。」
「うん、それ以上に色々あり過ぎて処理が追いつかないよ」
「「はぁー…。」」
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