厄介には変わりない
「“運命の番“と言うのはどういったものなのか…詳しく教えてもらえないだろうか。」
隣のジュード殿下を揺さぶりながら、クロード殿下が私と聖女様に問いかける。
揺さぶられているのに、それでもバーバラ殿下を見つめているジュード殿下。
私やリオンは自身に既に“運命の番“がいるから知っているが、獣人ではないクロード殿下には耳慣れない言葉だったのかも知れない。
「まあ、一言で言えば…その人以外は目に入らない。」
…聖女様が本当に一言で終わらせた。
うん…まあ、その通りなんだけどね。
「それは、獣人同士では無くても?」
獣人には“番“がいるとは知っていたらしいクロード殿下は、相手が自分の弟でもかと疑問に思ったようだ。
それに対し聖女様は頷く。
「獣人同士とは限らない、リリアもリオンも“運命の番“がいるからね。」
聖女様の言葉にクロード殿下は私とリオンを見た。
それに対し私達は笑顔で頷く。
「獣人ならば必ず出会うものなのですか?」
クロード殿下はネメアレオン殿下とバーバラ殿下を見て問いかけると、ネメアレオン殿下は首を振って否定する。
「出会えない者のが多い…でも、なんで厄介なんだ?」
ネメアレオン殿下が今度は私達に疑問を投げかけた。
私もリオンも眉を下げ…何と答えようかと困惑する。
…それを見兼ね、クロード殿下が口を開く。
「ジュードは…今回の件に関与しています。」
クロード殿下の言葉にネメアレオン殿下が目を見開き、ジュード殿下とバーバラ殿下を交互に見て…目を瞑り天を仰いだ。
…お分かり頂けたようだ。
「……なるほどな……どの程度、関与してるんだ?」
深い溜息を溢し、ネメアレオン殿下は鋭い眼差しをクロード殿下に向ける。
クロード殿下は怯む事なくジュード殿下の話をした。
ジュード殿下は、自身の従者とロマネス殿下、チャミシル様が人身売買に関わっている事を知っていながら見て見ぬ振りをし止める事もしなかった…と。
「……は?……それだけか?」
クロード殿下の話を聞き終えたネメアレオン殿下が呆れたような声で聞き返す。
それに対し微妙な顔でクロード殿下は頷くと…ネメアレオン殿下は再び溜息を溢した。
「…まあ、王子として…貴族としては問題かも知れないが…罪という罪でもないだろ。…その辺はオステリア国王と交渉するしかないか…?」
然程…ジュード殿下の罪を重いと感じてないのか、ネメアレオン殿下は「問題ない。」と結論を出してバーバラ殿下の肩を揺すった。
「はっ!?…どうかなさいましたか?」
我に返ったバーバラ殿下は、自分を揺するネメアレオン殿下に顔を向けると首を傾げた。
「どうもこうもない!…“運命の番“に出会えたんだろ?」
ニヤリと口角を上げ、ネメアレオン殿下は揶揄うようにバーバラ殿下を見る。
一瞬…理解が追いつかなかったバーバラ殿下だったが、次第に何の事を言われているのか分かり…頰がピンク色に色付いた。
「あ…え…えぇ。」
それだけ答えると、向かいに座るジュード殿下を見る。
そんなバーバラ殿下から目を逸らす事なくジュード殿下は見つめていた。
そして二人は再び見つめ合い…二人の世界に入ってしまう。
「……違う意味で厄介そうだな。」
二人の様子にネメアレオン殿下が小さく呟くと…私達も同意するように頷いた。
…本当、厄介そう。
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