いざ、チャミシル領へ
翌日、私とリオンは馬に乗り…チャミシル辺境伯から指定された待ち合わせ場所に到着すると、そこには20名ほどの護衛と、二台の馬車が停まっていた。
待たせてしまったかと先頭の馬車から顔を出していたチャミシル辺境伯へ謝罪に行くと、チャミシル辺境伯は私達が何者なのか理解出来ずに首を傾げた。
変装している事を思い出した私達は、慌てて名前を告げるとチャミシル辺境伯は馬車を降りた。
「突然の依頼だったが受けて頂き感謝する。君達にはもう一台の馬車の左右の扉を守るように並走してもらいたい。」
「「かしこまりました。」」
チャミシル辺境伯から指示を受け、私達は馬車を挟むように並ぶ。
それに気づいた馬車の中の人物が窓から顔を出した。
「今日は頼む!」
中から顔を出し、声をかけてきた人物に思わずギョッとする。
騎士団長のジン様だった…。
短い言葉ではあるが、話口調はとても真剣で…私達は元気よく「はい。」と返事をした。
ジン様は私達を見て頷くと顔を引っ込めた…かと思いきや次に顔を出したのは魔術師団長のビルショート様だった。
「やや?二人のことは聞いていたが、随分…雰囲気が変わるもんだね!今日は宜しくね!」
ジン様より少し軽く話しかけ、私達の風貌を愉快そうに見ると…顔を引っ込めた。
…二人もいるのに、護衛って必要?
騎士団のトップと魔術師団のトップだよ?
…と、馬車の窓が閉まる瞬間…中にもう一人居るのが見えた。
彼が恐らく”エドモンド・トンダ”様なのだろう。
偽名だけど…たぶん。
因みに今日の私達は魔法により変装している。
特徴的な髪の色は、よくある茶色の髪に…瞳の色は緑。
緩くカールしていた髪はストレートにし一つに束ねた。
性別までは変えられないので、胸には胸当てをして細い腰回りは布を巻く。
リオンは、髪はブロンドで瞳は青にし…此方は髪の長さは短めだ。
…映画のケビンを成長させたらこんな感じだろうか?
…私は少し前髪を後退させ、短くした方がよかったのだろうか?
いや、寄せなくて良い!!違うんだ…あのマクレーンとは違うんだよ!
悶々としていると、馬車が動き出す。
…頼むから何も起きないでね?
心の底から祈ったのが功を奏したのか、チャミシル領には何事も無く到着した。
無駄に神経をすり減らしたような気がする。
馬車の反対側にいたリオンもちゃんと付いてきていた。
一人ぼっちに置き去りにされなくて何よりだ。
馬車での行動だった為、もうすぐ日が暮れようとしていた。
探査魔法に関しては翌日に行う事となり、今夜はチャミシル辺境伯のお邸に宿泊させてもらう事になった。
え?公爵家の令嬢が侍女も連れずに泊まれるのかだって?
ノンノン、問題なくてよ?
着ているのはドレスじゃないし、前世は庶民!
そもそも騎士団の遠征にも参加したし、冒険者として野営もしている。
宿があるだけ有難い。
何より今は男装中なんだから。
そんな訳で…現在、護衛していたエドモンド・トンダ様のお顔を拝見しようと馬車の前で待機中なのです。
異世界人なのかしら…どうなのかしらと、ドキドキしながら見つめていればジン様とビルショート様が先に馬車を降りた。
いよいよね!
私もリオンもワクワクしながらその時を待つ。
そして…現れた人物は!?
…………え?
……………仮面の男?
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