招かれざるお偉い人
時に招待した覚えのない人が来た時こそ焦る事はないと思う。
仲間良しグループで集まった同級会や、結婚式の二次会などに偶に来る招かれざる客。
そんな事を思い出しながら今…現実逃避中である。
確かに…彼らは兄、リーマスと仲良しかも知れない。
だが、突然来たことで大人達は顔面蒼白になり会場中の全ての者が膝を折り頭を垂れていた。
クロード・オステリア
我が国の第一王子である彼はリーマスと同級生だ。
光が当たると青く光る黒髪は顔立ちをハッキリと見せるように短めで、金色の瞳の中は深い青が星屑のように広がる。
王族にしか生まれないとされる黒髪&金目だ。
ジュード・オステリア
我が国の第二王子で私たちと同じ今年7歳だ。
兄クロードとは違い赤く光る黒髪は肩以上に長い。
瞳は金色で所々茶色が混ざっている。
こちらも王族特有の黒髪&金目だ。
そんな二人が数人の近衛兵しか連れずに来たのだ、周りの大人が慌てないわけが無い。
子供達は皆、彼らを見つめては見惚れていた。
お兄様の友人達も見目麗しいが、王子達はレベルが更に上だ。
とても美しく、私は一目で恋に…
…落ちなかった。
いや、多分…記憶を取り戻す前のリリアなら恋に落ちたかもしれないが、記憶が戻った私としては無い。
美しい人は鑑賞用であって、自分のものにしたいとは思わないのだ。
それに…経験上、美しい人は本人も周りも面倒なのが揃っているから嫌だ。
巻き込まれたく無いというのが本音だ。
『リリア、リリア?』
私が半目で王子達を見ているとリオンが心配そうに声をかけてくる。
『リリア…殿下が好きなの?』
『いや、それは無い』
眉を寄せて尋ねるリオンに私は即答した。
リオンは吃驚した顔をし、そしてふわっと笑う。
『良かったー』
ニコニコしながら私に笑顔を向けるので、私も笑顔になる。
その時、場がやけにザワザワし何事かと周囲に目を向けると第一王子達がこちらに向かってきていた。
クロード殿下は私たちの集団に近寄って、同級生たちに声をかける。
王子達が来た事で慌てて私とリオンは頭を下げた。
クロード殿下は暫くお兄様達と話をすると、私とリオンに目を向けニッコリと笑った。
「初めまして、今日は君たち双子の誕生日とリーマスに聞いてお祝いしたくて来てしまった。突然の事で申し訳なかったね、さあ頭を上げて顔を見せて」
「「ありがとうございます。殿下自ら来て頂きとても嬉しいです。」」
私たちは下げていた頭を上げ、笑顔を作った。
もちろん台詞はシンクロしている。
「改めて、僕はクロード・オステリアだ。よろしくね!」
「ボクはリオン・クリスティアです。」
「私はリリア・クリスティアです。」
クロード殿下が名を名乗ったので私たちも名乗り、私はカーテシーをしリオンはボウ・アンド・スクレープをする。
「ふふっ。そっくりで可愛らしいね」
クロード殿下は嬉しそうに笑うと私たちの頭に手を置いた。
「「「「「「あっ!!」」」」」
殿下は頭を撫でると、お兄様や友人達が思わず叫んだ。
さすがのお兄様も殿下相手では止められなかったらしい
「兄上、何をなさっているのですか!」
第二王子のジュード殿下がクロード殿下の裾を掴んで、こちらを非難する目をした。
「ん?僕もこんな可愛い弟妹が欲しいなと思ってね」
「ボクがいるではありませんか!?」
ジュード殿下は顔を真っ赤にして怒るが、クロード殿下は気にした風もなく私たちと話し続けた。
「いつもは領地にいるんだってね?僕も行ってみたいな。ダメかな?」
「光栄です。ぜひ、機会があればお越し下さい」
殿下自らが領地に行きたいというのはとても珍しく、周りの貴族たちもザワついている。
だが、恐らくは難しいと思う。
殿下が領地に来るには護衛の数や領地までの道中もだが、領地内での安全性など事前に調査などもしなければならない。
きっと陛下からも直ぐには許可は下りないだろうからと私は安心していた。
「え?許可は下りないの?」
私の心の声が漏れたらしくリオンは思わず声に出して呟いた…
私は瞬時にリオンの口に手をやると、リオンも気づいたのか慌てて口を押さえた。
「ん?許可が下りないとは?」
クロード殿下はリオンを見つめながら首を傾げる。
「いえ…えーっと…えーっと……てへっ」
リオンは焦ってモゴモゴし、誤魔化すように最高の笑みを作り首を傾げた。
な…なんという…あざとさ満載の笑み!
可愛過ぎるだろっ!!
思わず脳内で悶えてしまったが、リオンを助けなくては!
「えーっと…えーっと……てへっ」
色々と思考を巡らしたが何も思い浮かばずに私もリオンに続き同じポーズを取ってしまった。
くそぅ、リオンの可愛さには勝てないから意味がないのに!
「ふふふっ、何?その可愛いポーズ!本当に僕もこんなに可愛い弟妹が欲しいよ。」
何とか誤魔化されてくれたらしい。
無理があったな…
リオンは『ごめんね』とテレパシーで謝ってきた。
この時、殿下だけではなく周囲の人々も流れ弾に当たって悶絶していた事に私たちは気づかなかったのである。
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