お父様の友達
「今朝、宰相…君達の父君から新しい複合魔法の仕様書を見させてもらったよ。作られた経緯に驚かされたが、確かな証拠になるのは頷ける…さて君達がこれを元に証拠として提出したい事とはなんだ?」
手元の仕様書を捲りながら国王陛下が私達を見遣る。
発言…しても良いのだろうか?
いや、最後のは質問だから良いと思うけど…と不安に思いながらお父様を見た。
私達の不安を察したお父様は何やら国王陛下に耳打ちする。
「ああ、発言を許す…と、言うか君達と普通に話がしたくて人払いをしたのだから身分など関係なく普段通りに話しなさい。君達の父の友人と話すと思ってもらえばいい。」
よく拝見するキリリとした顔とかけ離れた普通のおじ様のような優しい顔で話す国王陛下…その顔や態度に正直困惑する。
言われた通り普通に話をして…突然、不敬だ!とか言われても困ってしまう。
暫し悩んでいると、相変わらず空気が読めない…いや読もうとしないリオンが答え出した。
…強者だな。
「今度、チャミシル辺境伯と彼の領地に行き探査魔法を使用する予定なんです。犯罪に関する事だから、証拠になれば良いなと思いまして。」
…本当に普通に話したよ。
しかも国王陛下は嫌な顔とかしてないし…大丈夫そうだな。
「そうか、チャミシル辺境伯からも話は聞いている。…そうだな、私の最も信頼のおける者を証人として現地に遣わそう。」
「へ…陛下!それでは執務に支障が出ます!!」
嬉しそうに提案する国王陛下に、お父様は慌てて止めに入る。
…国王陛下は一体、どれほどの重鎮を寄越そうとしているのか?
お父様の言葉に国王陛下は首を左右に振って掌を向ける。
「一日や二日…支障はなかろう?それとも、それ程までに他の者が無能だと言うのか?」
国王陛下が反論すると、お父様はグッと言葉を飲み「いえ…そのような事はありません。」と答えた。
二人の遣り取りに、私とリオンは顔を見合わせる。
だが、国王陛下が私達を見ている事に気づき慌てて姿勢を正した。
「それにしても、うちの息子達は君達が心配だったのだろうな。…まさか、ここまで入ってくるとは…。」
口の端を上げ愉快そうに話す国王陛下は、どこかクロード殿下を連想させた。
この黒い笑みは遺伝なのだろう。
そして…ジュード殿下の事で私は不思議に思っていた事を口にした。
「ジュード殿下の処遇はどのようにお考えでしょう?」
突然の私の問いに国王陛下は目をパチクリさせると…苦笑した。
聞いてはいけなかったかと不安になり、頭を下げようとすると…国王陛下は「そのままで。」と声をかけ話し始めた。
「咎めない…という選択は残念ながら出来ない。しかし、場合に寄っては…いや…今段階で口にする事では無いな。息子を心配してくれてるのだろう?頭を下げる必要など無い。むしろ私は君達に感謝しているのだ。」
そう言って国王陛下は私とリオンの頭に手を伸ばし……お父様にペシッと手を叩き落とされた。
不敬罪っ!?
「エド、私の子供の頭を許可なく撫でようとするなっ!」
「何をするリューク!…良いだろう、少しくらい。」
目の前で何故かお父様と国王陛下が揉めている…しかも、めっちゃ仲良さそうに呼び合っているではないか!
…不敬罪にはならなさそうだなと安心する。
そんな遣り取りをしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「そろそろ時間だ…執務に戻らなければな。」
何かの合図だったのだろう…残念そうに眉を下げた国王陛下は「では、またな。」と微笑むと部屋を後にした。
…なんか、思っていた感じとだいぶ違うなと驚いていると…お父様も「では、邸でな。」と国王陛下の後を追いかけていく。
「……えっと…僕達も…帰って良い…のかな?」
「…多分。」
取り残された私達は困惑しながら部屋を出た。
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