リオン、やらかす
「「お…おかえりなさい、お父様。」」
お父様の声に驚き、再び魔法が消えると…私とリオンは慌ててお父様に頭を下げる。
お兄様も私達に続き「おかえりなさい。」と頭を下げた。
お父様が再び口を開こうとすると、邸からお母様とリナリア…その横にはリシェ様が現れた。
私達の騒ぎとお父様の声に驚き、駆け付けたのだろう。
…よく見るとリシェ様とリナリアは以前より親しくなったのか、腕を組んでいた。
それに気づいたのは私だけでは無かったようで、お兄様とお父様が二人を引き剥がしていた。
無意識で腕を組んでいたらしく、二人は互いに顔を見合わせると真っ赤になって顔を逸らした。
私の知らないところで、まさか…進展していたとはね。
「コホンッ…先に夕食にする。その後で二人は私の書斎に来なさい!」
「「はい。」」
お父様は私達を一瞥すると、邸へ入って行ってしまった。
その後をお母様が続き、リシェ様とリナリア…そしてお兄様が邸へ入っていく。
「……お説教かな?」
「…なんか、ちょっと怒ってたよね?」
リオンと互いに顔を見合わせ肩を落とす。
この歳になってもお説教とは、何とも恥ずかしい。
それから、何とも気まずい雰囲気で夕食を終えると私とリオンはお父様の書斎に行く。
声をかければ中から入室を許可する声が返ってきた。
意を決して中に入ると、すぐにソファーに座るように言われ…お父様と対峙する。
「二人共、先程のあれは何だ?…説明しなさい。」
眉間に皺を寄せ、お父様が険しい顔で私達を見つめる…。
…説明しなさいと言われても、何から話そう。
「今現在の探査魔法は、発動者のみ見る事が可能です。それを…他の方に見せる事が出来たら良いなと思いまして…その…。」
魔法の説明からしてみたが、その後どうしようかと悩んでしまい…最後はゴニョゴニョと言葉を濁す。
そんな私の様子にリオンが何とかしようと話し出した。
「ほら、リリアは“前世の記憶“を持ってるじゃないですか…だからその知識から閃いたみたいで。他の方が見る事が出来たら…それが国の機関の方なら事件などの証拠としても…。」
リオンがお父様に一生懸命に説明する…その言葉にお父様は一度だけ目を見開いた。
その表情の変化に…私は慌ててリオンの肩を掴んだ。
『待って!お父様に私が“前世持ち“だって話してないっ!!』
リオンにテレパシーで話しかければ、リオンは慌てて両手を口に当てた。
そして…そろそろと私を見る。
やってしまった……。
互いの顔にそう書いてあるかのように思えた。
みるみるうちに顔から血の気が引いていく…なんて誤魔化す?
「…今のは聞かなかった事にする。」
「「……え?」」
お父様が信じられない事を口にしたので、私もリオンも慌ててお父様に向き直る。
お父様は深い溜息を一つ吐き出すと、私達を交互に見た。
「……二人からは新しく複合魔法を作ったと…他は耳には入らなかった事にする。…父上が…お祖父様が口止めしたのだろ?」
「知って…いたのですか?」
その通りだったので…私は思わず問い返した。
私の問いにお父様は左右はゆっくり首を振る。
…知らなかったんだ…。
「二人には他にも秘密があるな?先程の肩に触れた時の遣り取りに違和感があったように思うが?」
探るような目で見られ…私とリオンはどうしようかと互いに顔を見合わす。
テレパシーの事は誰にも言っていない。
「マリーやアリーから日頃の二人の様子は聞いている。時々…不思議な事が起こる…と。突然会話が始まるが…それまで会話していたかのように話すらしいな?」
使用人に…日頃の私達の事を報告させていたのか。
そうだよね…報告しちゃうよね。
普通の事なのに、何故か驚いちゃう私とリオンに…険しい顔のお父様が突然「ふっ…」と吹き出した。
「二人は相変わらず表情が豊かだな、貴族としては良くないが父親としては有難い。」
それまでの険しい顔はどこえやら…お父様の顔は柔らかく、困ったように微笑んでいる。
初めて見るその顔に私もリオンも思わず目を見開くと…何が面白いのか再び声を漏らしながら笑った。
「まあ、二人の秘密なのだろうから…これ以上は詮索はしないよ。」
そう言ってお父様は執事のスティーブが用意した紅茶を優雅に味わった。
…あまりの衝撃に動けずにいると、お父様はスティーブに声をかけ「ここでの話は他言するな。」と口止めした。
その心遣いに嬉しくなった。
「さて…これからの話をしよう。」
と、私に先程の魔法の仕様書を今夜中に書くように言ってきた…。
そして、今日の帰宅が早かった理由を話す。
どうやら昼間の学園での事を確認したかったらしい。
私達に事情を聞くと、お父様は仕事があるからと私達を私室へ戻るように促した。
「あぁ、大切な話が残っていたな。」
部屋を出る際、お父様が私とリオンを自身の腕の中に抱き込んだ。
突然の出来事にキョトンとしていると、耳元でお父様が囁く。
「二人は私の大切な子供なんだから、あまり無茶をしないように!」
そう言ってお父様は私とリオンを解放した。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。
なんか文章が上手く書けなかったです。
週末は法事がある為、もしかしたら更新できないかもしれません。




