どこか似てる兄弟
「誰をお探しなのでしょう?」
…と、ルービン先生に問いかけるとルービン先生は首を振った。
「出来たら婚約者のいない男子生徒と思ったのですがね…。」
どうやら先生は説得させる人間を選んでいたようで、お目当ての人物はいなかったらしい。
「婚約者のいない…あそこのロマネス殿下や、そこのジュード殿下とクロード殿下です?」
三つ巴の中心で無意味な火魔法を発動させているロマネス殿下は今のところ婚約者はいない。
そして…カフェの入り口、つまり私達の背後でカフェの中を覗いている我が国の王族もまた婚約者はいない。
「気付いていたのか…?」
「…気付かれてないと思ってたんでしょうか?」
そう呟いてカフェへ足を踏み入れたクロード殿下。
その背後にはジュード殿下もいる。
…よく目立つ容姿をしてるのに、気付かれてないと思っていたのか?
「ルービン先生、僕達に何か協力できる事はありますか?」
私の問いをスルーして、クロード殿下はルービン先生へと歩み寄る。
少し愉快に見えるのはきっと気のせいだろう。
こんな状況で楽しんでいる訳はないな。
「おぉ!どちらでも構わないからクレアさんを説得してくれないか?…原因が色恋沙汰のようだから君達にかかればクレアさんの気持ちも動くだろう!!」
救世主が現れた!と言わんばかりにルービン先生は喜んだが…内容を聞いたクロード殿下は、笑顔のまま固まった。
…まぁ、要は誑かしてこいって話なのだ。
「…なるほど。では、それはジュードの方が良いね!」
暫し固まっていたクロード殿下だが、更に良い笑顔で背後のジュード殿下へ丸っと投げた。
いや、受け取らずにスルーしたみたいな状態か?
「えぇ!?僕ですか?」
突然の豪速球に狼狽えるジュード殿下。
協力しようと声をかけた人物がまさかの見送りをしたばっかりに…。
「クレア嬢はジュードと同学年で、面識もあるだろう?」
……同学年を除けばクロード殿下だって面識はあるはずなのだが?
確か…入学当初は色んな男性に声をかけていたクレア様。
上級生の所にも行ったと聞いている。
「え?いえ…覚えてないです。」
「「え?」」
ジュード殿下が首を左右に振って否定したので、私もリオンも思わず戸惑いの声を漏らす。
だって…ポツンとリオンした日にランチを一緒にしたはずだ。
それ以降もジュード殿下の周囲をウロウロしていたはず…謹慎になるまでは。
「あっ…えーと……僕、リナリア嬢とリリア嬢以外の令嬢には興味がなかったものですから…その他の令嬢は皆同じように見えてたんです。」
気まずそうに答えたジュード殿下に、クロード殿下は溜息を漏らす。
そうだよね、他の令嬢が同じって…カボチャにでも見えてたのかしら?
「ジュード…その気持ちは分からないでもないが、最低限は覚えてあげねば失礼だろう?」
クロード殿下が呆れたように返すが、それも失礼だと思う。
しかも気持ちが分からないでもないって…それは理解できる部分があるって事でしょ?
…この兄弟、変なところでそっくりだな。
「まぁ、それでも…ジュードが行くと良いよ。」
クロード殿下はニッコリと笑って、ジュード殿下の背中を押す。
ジュード殿下は戸惑いながら、一歩前に進むが…その場で止まってしまった。
…かと思いきや、クルリと反転しニッコリと笑う。
「僕では彼女を上手く諭せません。兄上、お手本を見せて頂けないでしょうか!」
ジュード殿下のまさかの返しにクロード殿下は笑顔を引き攣らせる。
二人は暫く笑顔で睨み合っていたが、クロード殿下が渋々折れた。
頑なに拒否してたクロード殿下が折れた!?
「兄が手本になりますから見てなさい。だが、次はちゃんとジュードがやるんだよ?」
そう念を押し、クロード殿下が三つ巴の場所へと近づいていった。
「……次なんて…あるの?」
「…さあ?」
そんなクロード殿下とジュード殿下を見つめながら、私もリオンも首を傾げるのだった。
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