門外不出の魔導書
「…それ、私に聞く?」
そもそも、どんな魔法かすら分からなかった私に…聞くの?
と、リオンに返せばリオンは苦笑いを浮かべた。
「おや?君達もまだまだ勉強不足ですね。来年は是非、私の授業を受けてみては如何かな?」
私とリオンの背後から声がし、慌てて振り返るとルービン先生がニコニコしながら立っていた。
いや、笑ってる場合ではないのだけど。
「それにしても…君達といい、クレアさんといい…どこで禁術を覚えたんだろうね?」
和かに笑っているが、その目は怒っているようにも見える。
そんなルービン先生に、リオンは首を左右に振った。
「僕が知ってるのは、どんな魔法かだけですよ?やり方までは知りません。」
「おや…では、どこで知ったのかな?」
リオンの答えに、ふむふむと言いながら更に質問を続けるルービン先生。
リオンは魔法鞄から一冊の魔導書を取り出し…私とルービン先生に見せる。
すぐにピンときた私も同じように魔法鞄から魔導書を取り出した。
「それは…?見たところ魔導書のようだね。」
ルービン先生は魔導書を眺めながら首を傾げる。
世に流通している物では無い為、先生はまじまじと見つめる。
「これは僕達が7歳の時に祖母から頂いた物です。門外不出と言って渡されたので中は見せられませんが、この魔導書の最後の方の“危険な魔法・禁術“という項目に書かれていました。」
リオンに言われて魔導書をペラペラと捲ると、たしかにあった。
…載ってたよ!
「…7歳?……え、お祖母様って…え?アリア・クリスティア様かい?」
「「あ、はい。」」
困惑気味に返すルービン先生に、私もリオンも頷くと…先生は目を見開いた。
「なんと!それはアリア様の魔導書なのか!?…門外不出…そうか…くそぅ!」
ルービン先生は悔しがりながら、自身の膝に数回拳を叩き込む。
…魔法オタクには堪らない一冊なのだろう。
「…あれ?他にも対処法が載ってるよ?」
先ほどのリオンの説明の他にも対処法が載っていたので、私は慌ててリオンを見る。
だが、リオンはふいっと顔を逸らした。
その反応に不思議に思いながら、対処法を見る。
………光属性の魔力を発動者に流す。
魔力を流すって…?
コテンと首を傾げると、正気に戻ったルービン先生が私へ声をかけてきた。
「同属性の魔力を発動者に流す事で、その魔法は相殺されるんだよ。……顔を逸らしたという事は、君は知っていたんだね?」
先生と共にリオンを見つめると、リオンは諦めたのか溜息を吐いた。
「魔力の流し方…って、手っ取り早くて抵抗もされないのが口からなんだよ。」
リオンは人差し指で唇をトントンしながら答えた。
それに対しルービン先生も「確かに…。」と頷く。
口から…つまり、口と口?
接吻?キスって事!?
なっ!!
「ね?言わなかった理由が分かったでしょ?僕にはキャティがいるんだし、するなら他の人に頼んで下さいね。」
プンプンと怒るリオンは、こんな時でも何処かあざとい。
そんなリオンにルービン先生は苦笑する。
「いや、本人に何とかしてもらう他ないよ。あんな膨大な光魔法の魔力はそうそう無いからね…下手するとこっちの魔力まで取り込まれかねない。」
そう言ってルービン先生はクレア様の方へ顔を向ける。
先ほどよりも魔力が増加しているように思うのは気のせいだろうか?
「…さて、問題はどうやって説得するかだな。」
ふぅ…と溜息を吐いたルービン先生は、誰かを探すようにカフェを見渡した。
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