噂好き
高等部のテストは三日間行われる。
それも通常と同じ午前のみ。
午後は基本的に何もない。
騎士団などに鍛錬に行っても良いが、殆どの生徒は翌日のテスト勉強をする。
…殆どと言うか、行く人は居ないだろう。
だから騎士団や魔法省に行くという生徒がいるとしたら…余程の自信があるか、頭おかしいかのどちらかだ。
……行かないよ?
絶対に行かないからね?
そんな訳で、私とリオンは教室で勉強に励んでいると…ラライカ様が隣の席から声をかけてきた。
「相変わらず、テスト勉強の範囲を越えてますわね。」
その言葉に私もリオンも慌てて自身のノートや教科書を見る。
夢中になり過ぎて、テスト範囲を過ぎてしまっていた。
ラライカ様に声をかけられなければ…教科書を読破していたかもしれない。
…既に何度か読破しているような気もするが、気のせいだろう。
「遠征などで出席できなかった分の補講を受けるとお聞きしましたが…必要ありますの?」
少し呆れながらラライカ様に問いかけられ、私もリオンも顔を見合わせる。
必要は…あるかな?
「内容はともかく…出席日数を稼ぐ為にも補講は必要ですわ。」
ただの欠席とは違う為、補講さえ受ければ出席した事になるらしい。
なので、稼げる時に稼がなければ…今後何があるか分からないしね。
それに、驚くべき事にこの補講…私とリオンの二人だけで受ける事になっているのだ。
単に他に同じような状況の方が居ないだけなんだけどね。
因みにロマネス殿下やジュード殿下が受けるのは補習だ。
勉強が足りてない方々が対象となるので、此方は補習後に簡単なテストも行われるそうだ。
そんな説明をしてくれたのは、国史の先生だった。
他の教科の先生と予定を組み、私達に補講の日程を伝えにきた際に教えてくれた。
何やら嬉しそうに説明してくれたのが印象的だったが…あれはなんだったのだろう?
良い事でもあったのかな?
「そういえば、久しぶりにクレア様を見かけましたの。…以前とだいぶ雰囲気が違っていて驚きましたわ。」
ラライカ様は何やら思い出したのか、私達の傍に寄ると…ヒソヒソと話した。
クレア様は謹慎が解け、今週から登校するとは聞いていたが…そういえば見かけなかったな?と首を傾げる。
同じ授業を取っている訳では無いので見かけなくても不思議では無いのだが、カフェでジュード殿下やロマネス殿下と一緒にいた時も気づかなかった。
以前のクレア様なら、空気も読まずに割り込んでくるのに…。
「チラッと見ただけなんですが、目付きが鋭くて…少し怖い印象になってましたわ。…あと、メアリ様方の一団とすれ違う際は逃げるようにし…物陰から睨んでおりましたの。」
手をクイっと手招きするように話すラライカ様はさながら近所のオバチャンのようだ。
…そして、チラッと見たレベルでは無いと思う。
「特にチャミシル様には、こう…ハンカチを噛んでギリギリしておりましたわ!」
そう言ってラライカ様は、ハンカチを唇に当てた。
流石に噛んだりはしないようだ。
…ガッツリ見てんじゃん。
「その辺りは色々あったみたいですよ?」
「あら、何やら詳しそうですわね!」
私が苦笑しながら匂わせば…ラライカ様はすぐに食い付いてきた。
…だが、実際の経緯がはっきりしない事なので告げるのをやめると何やら肩を落としガッカリするラライカ様。
噂…大好きなのね…。
「お二人は冬季休暇は領地は戻りますの?」
クレア様の事は諦めたのか、すぐに次の話題へと移る。
そのスピードに私もリオンも吃驚したが、リオンはすぐに切り替え答えた。
「補講もあるし、前半は王都で過ごす予定だよ。」
リオンの言葉にラライカ様は嬉しそうに微笑んだ。
そして…。
「では、何処かのお茶会や夜会などでお会い出来るのを楽しみにしておりますわ。」
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今日も遅くなり申し訳ないです。




