本音を漏らす
…再び重苦しい沈黙が訪れた。
誰も何も言わない…し、言えない空気。
お…重すぎる。
使用人さんもどうしたら良いかと、少しソワソワっとしている。
そして、沈黙を破るのは…やはりチャミシル辺境伯だった。
「…私の名を騙る不届者は、捕まえてじっくり話を聞かなくてはならないようだ。二人は冒険者だったな、ギルドで指名依頼しても良いだろうか?」
額に青筋を浮かべ…笑顔で話すチャミシル辺境伯。
目が笑っていないように思う。
「はい。勿論、引き受けます。」
見つけるのは骨が折れるが、その人物は他にも何かやらかしているかもしれないので私達も話が聞きたい。
そう思って返事をすると、隣に座るリオンも頷いた。
「それと学園側の対応だな。本人確認もしないとは…どうなっているのか、後日…話を聞きに行くとしよう。」
「その時は私も同席するよ。」
ルービン先生へ顔を向けながら学園の話をすれば、ルービン先生は笑顔で応えていた。
「はぁ…娘は一体何をしてるんだか…。」
チャミシル辺境伯は、とりあえずの目処を立てると…ソファーへ深く座り背もたれに体を預けた。
溜息と共に漏れたのは、本音だろうか?
気心の知れた友人に見せる本性といったところだろう。
ただ、私もリオンもいるのを忘れてはいけないと思う。
…それにしても。
チャミシル辺境伯は娘が罪を犯していると分かった時…どうするのだろうか?
伝えた方が良いのか…既に証拠も証言も揃っているので、あとはタイミングだけなのだが。
「君達は娘と同じ歳だったな…娘は学園でどんな感じなんだい?」
事件のことで頭がいっぱいだった私と…隣のリオンに向かってとんでもない質問をしてきたチャミシル辺境伯。
こ…これは、誤魔化す?
えっ…と、どんな話をしたら良い?
「僕達とは授業が被らないので詳しくは知りませんが……オブラートに包んだ方が宜しいですか?」
うーん…と、困った顔をしたリオンの答えもとんでもなかった。
オブラートって!
「オブラートが何なのかはよく分からないが…そうだな君から見た娘をそのまま教えて欲しい。」
チャミシル辺境伯は首を傾げながらも、リオンに真剣な顔で頭を下げた。
リオンも、コクリと頷く。
「分かりました。…あっ、僕もオブラートが何かはよく分かってないですからお気になさらず。」
って!!分かんないのかいっ!
じゃあ、何で使ったのさ!?
……と、言ったところで返ってくるのは”リリアが使ってた”とかなんだろう。
一人でツッコミを入れていれば、リオンと目が合う。
そして、パチっとウインクされた。
…合っていると言いたいのか?
「では、僕が見た”チャミシル嬢”のお話をします。」
リオンは居住まいを正し、ゆっくりと話し始めた。
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今日も遅く、しかも短くて申し訳ないです。




