チャミシル家の別邸へ
魔法学の先生こと、ルービン先生にチャミシル辺境伯家へ訪問する許可を取って頂き…私達は王都にあるチャミシル家の別邸に訪れた。
別邸を指定したのはチャミシル辺境伯で、どうやら忙しいルービン先生の為に王都に出向いてくれるそうだ。
チャミシル様…ジェシカ様が邸に居ると上手く話を聞けないと思い、ジュード殿下にお願いし当日はロマネス殿下と他の令嬢方と共にジェシカ様も誘い王城でお茶会を開いてもらう事になった。
公爵令嬢の私が行かないと不味いかと悩んだが、そこは何とかしてくれるそうだ。
どうやるのかは…聞かない事にした。
チャミシル家の別邸は、王都でも王城からは少し離れている。
王城に近い我が家から馬車を出し、途中でルービン先生の邸に寄ってから向かった。
邸自体はそれほど大きく無いが、邸も庭も手入れが行き届いている。
門を潜りエントランスへ馬車を停めると、チャミシル辺境伯と使用人は緊張した面持ちでお出迎えしてくれた。
…そうだろう、だって来るのはルービン先生だと思っていたら公爵家の馬車が来たのだから。
「やぁ、チャミシル…久しいな。」
公爵家の馬車から最初にルービン様が降りて、チャミシル辺境伯へ挨拶をする。
チャミシル辺境伯は公爵家の馬車から先生が出て来た事に更に驚いていた。
続いてリオンが降りると、私に手を差し伸べ…私も馬車を降りた。
「先日は、ありがとうございました。」
「今日はルービン先生にお願いして、ご一緒させて頂きました。」
リオンと共に挨拶をすると、チャミシル辺境伯は困惑しながらも邸へ案内してくれた。
邸に入れた事に安堵する。
応接間に案内してもらい、使用人がお茶とお菓子を用意し退室していく。
それを見計らい、ルービン先生はお菓子とお茶を味わう。
「毒見は私で良かったかな?チャミシル家の菓子は素朴だが、とても美味しいから是非とも食べた方が良いよ?」
てっきり…食いしん坊だと思った事に心で謝罪しつつ、私もリオンもお菓子に手をつける。
ルービン先生の言う通り、素朴で懐かしい味のするお菓子だ。
…ただ、何故に勧めるのがチャミシル辺境伯ではなくルービン先生だったのだろうか。
出されるお菓子の味を覚えている程には仲が良いのだと思った。
「…さて、チャミシル。今日は私だけでなく、私の教え子も一緒に連れてきてしまって申し訳なかった。
だが…どうしても気になる事があるのだよ。」
ルービン先生は一通りのお茶菓子を堪能すると、チャミシル辺境伯へ謝罪し…そして本題に入った。
「一月以上前の事だが、ポンシュワール伯爵家の令嬢が君の娘に暴力を振るったそうだね。…その時の目撃者がリリアさんだと聞いたんだが、本人は目撃してないと言うのだが…?」
本当に仲の良い二人なのだろう…普通ならば、これ程までに直球で話をするなど考えられない。
ルービン先生の言葉に、チャミシル辺境伯は手に持っていた紅茶を置くとルービン先生と私を見て……。
…そして、目を瞑り沈黙した。
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