柔らかな笑みと冷たい声
目撃者欄に私の名前が記載されているが、勿論…私には身に覚えが無い。
誰かが勝手に私の名を騙ったのだろうか?
「その様子だと、リリアさんは目撃してないのかな?」
私が黙り込んでいると、魔法学の先生は不思議そうに私を覗き込む。
「はい。目撃していたのであれば、クレア様の所在の確認などはしなかったかと…。」
私が返答すれば、先生は深く頷いた。
そして、事務員さんに向き直る。
「この書類を作成した人物を呼んでくれないかな?」
「は…はいっ!」
魔法学の先生の優しそうに聞こえる言葉は、それとは裏腹に何故か冷気を孕んでいた。
事務員さんは、その異様な雰囲気に顔を真っ青にして慌てて席を立った。
公爵家の令嬢を騙る人物…それは誰なのだろう?
魔法か何かで私に変装でもしたのだろうか…?
…でも、この世界に変装の魔法ってあったっけ?
暫くすると、先ほどの事務員さんは一人の女性事務員を連れてきた。
見た目は学生と言われても違和感が無いほどに若々しい事務員さんは、同じく真っ青な顔で震えている。
「あ…あの…わた…私に何か?」
吃りながらも何とか声を出した若い事務員さんに、魔法学の先生は笑みを浮かべた。
その表情に、若い事務員さんはホッとしたのか震えが治る。
「いえね?貴女の作成した書類におかしい点が見つかりましたので、来てもらいました。…因みに貴女、この女生徒に見覚えは?」
柔らかな物腰なのに、声に魔力が乗るのか…冷たく感じる。
近くにいる私ですらそうなのだから、言われた本人はもっと冷んやりしているだろう。
魔法学の先生は話しながら、若い事務員さんに私の事を知っているか問いかけた。
だが…魔法学の先生に促され、若い事務員さんは私を見ると首を左右へ振る。
そうだろう…だって私も初めて見るのだから。
「えっと…此方の生徒さんは?」
困惑しながら若い事務員さんは、先輩事務員さんと魔法学の先生を交互に見た。
「初めまして、高等部一年のリリア・クリスティアです。」
私はスクっと立ち上がり、一礼しながら自己紹介すると…若い事務員さんはキョトンとし…それからハッとして目を見開いて固まった。
「私が目撃したという、チャミシル様とクレア様の暴力事件に関して是非お話をお聞かせ頂けますでしょうか?」
顔を青褪め固まる事務員さんに、私はニッコリと微笑んだ。
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短めで長引いてて申し訳ないです。
そして、今日も遅くてすみません。




