忘れ去られたヒロイン
グラタンを食べ終えた私達は、私室へと移動した。
夕食の時間まで少しあるので、先程の話をもっと詳しく…詳しくっていうか纏めるっていうか…。
とにかく、二人だけで話せる場所で一旦落ち着こう。
厨房でもリオンが然りげ無く防音の魔法をかけていてくれたけど…やっぱり心配だしね。
「ヒロインの話は一旦置いておこう…まずは今まで起こったであろうイベントについてだね。」
マリーがお茶を用意し、すぐに壁際へと移動したの確認するとリオンは早速本題へと入る。
部屋の扉は開いているが、リオンの魔法によって私達の周囲だけ防音になっている。
「この世界が物語だったとして最初に起こったイベントは…高等部の…って、クレア様って最近見ないよね?」
ヒロインが消えたと思っていたけど…居たじゃん!
ちゃんとヒロインぽい人が居た事を思い出したが…何故か途中でフェードアウトしたな?
「クレア嬢?…あぁ、居たね!…あれ?そういえば最近は全然見かけないよね…確か最後に見たのはジュード殿下とランチに行った時だったっけ?」
「そうだね、でも…あの日のランチの後から姿を見てない気がする。」
リオンが話しているのは…私がクレア様に対し嫌がらせをしていると、クレア様がリオンに相談した日の事だろう。
あの時…ジュード殿下がフリーになったと知ったクレア様は見事な転身ぶりでジュード殿下へ乗り換え…リオンが取り残された。
それから学園で見かけた記憶が無いな…。
私がジュード殿下にベッタリしてたのとか、他の方々と一緒にいる時も…見ていない。
なんなら、今の今まで記憶から消えていたのだ。
「授業が被らないからって、不自然なくらいに会わなくなったよね?…学園に通っているのかな?」
登下校も休み時間もランチも…他の時ですら見なくなってしまったクレア様が少しだけ心配になる。
確か…元は庶民の出だったから、学園に馴染めず不登校になったとかかな?
「明日…学園で所在を確認した方が良いかな?」
「そうだね、その方が良いよね。」
互いに頷き合うと、再び高等部入学の頃を思い出してみる。
そもそもクレア様がリオンに突撃してきたのもイベントだったのかな?
普通は…突撃などせず、不自然に出会い…自然に仲良くなるんだけど。
あとは、同じ日に騎士団で初めてロマネス殿下を見かけたのよね。
生理的に無理って笑顔をしていて…思い出しただけで悪寒がする。
「ふふっ…今、ロマネス殿下を思い出したでしょ?」
「え!?なんで分かったの?」
私が両腕を摩っていると、リオンは愉快そうに笑う。
何故分かったのかと不思議に思っていると、リオンはすぐに答えてくれた。
「僕も初めて騎士団に行った時の事を思い出してたからね。あの日、リリアは”生理的に無理”って言ってたよね…ふふっ」
思い出しながら更に笑うリオン。
騎士団で殿下方を見かけたのは…イベントだったのだろうか?
イベントならば、クレア様は騎士団か魔法省のどちらかを選択して…殿下方はそれに合わせて行動していた筈だった。
騎士団に来たのはクレア様がどちらも選択しなかったからだろう。
「高等部に入学して三ヶ月ほどなのに…色々あったね。それも…もしかしたら、物語の世界のせいなのかな?」
まだ三ヶ月が過ぎたところなのに…本当に色々な事が起こったと思う。
色々な人に出会い…巻き込まれ…ゆっくりした記憶が無い。
「色々と終わったら…領地で温泉にでも行きたいなぁ。」
「そうだね!その為にも頑張らないとね!」
決意を新たに…私達は、その後も夕食になるまで二人で今までの事を纏めたのだった。
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ヒロイン…いましたね。




