もしかして…イベントでした?
ロマネス殿下と共にカフェに行くと、何故か周囲が騒ついた。
先日、魔法の模擬戦を行ったからだろう…と特に気にもせず私はジュード殿下を探す。
それなのに、何故かロマネス殿下は私を背後に隠し他の方々からの好奇の目から私を庇うように立った。
…目の前に立たれると、ジュード殿下が探せないから困るんだけど。
私よりも先にジュード殿下を見つけたのだろうロマネス殿下は私の手を取り「こっちだ。」とエスコートしながら歩き出した。
…なんだこれ?
この人…ついさっきまで私の事、嫌がってなかった?
不思議に思いながらもロマネス殿下に続くと、ロマネス殿下は私をチラッと見て口元を綻ばせた。
「「「「きゃあぁぁーー!!」」」」
その表情に黄色い声を上げる周囲の令嬢方。
ちょっと煩い…と、思わず溜息を吐きそうになる。
私もチラッとロマネス殿下を見たが…確かに王子様だから格好は良いかもしれない。
客観的に見てだけど。
だって私は既にもっと格好良い方が旦那様なのだから。
「リリア嬢!…と、何故…ロマネス?」
ジュード殿下の座るテーブルに到着すれば、ジュード殿下はロマネス殿下を見て困惑していた。
それもそうだろう…何故か敵対しているように見えた私達が一緒なのだから、
私だって困惑するわ。
ジュード殿下の隣には当然のようにリオンが座っていた。
そんなリオンも珍しく驚いている。
「偶にはランチを一緒にしても良いだろう?」
「あ…あぁ、勿論だ。リオンとリリア嬢も良いだろうか?」
「「光栄です。」」
リオンも私も笑顔で頷くと、ジュード殿下はホッとし…ロマネス殿下は嬉しそうに笑った。
…笑顔で頷きはしたが、本心は勿論別ですけどね!
「中庭でジュードを待っていると言っていたから、一緒にカフェに来たんだ。ジュードは随分前にカフェに向かった筈なのに、待ちぼうけを食っていたが…待ち合わせはしていたのだろう?」
「え?…あ、すまない。すっかり抜けていた…。」
ロマネス殿下の問いに、ジュード殿下は待ち合わせていた事を思い出し…そして眉を寄せ申し訳なさそうに私を見た。
私は笑顔で首を振り「大丈夫です。」と答える。
「リオンはどうしてジュード殿下と一緒にいたの?」
私とロマネス殿下にもランチが運ばれてくると、私はリオンに声をかける。
「ん?ジュード殿下が一人で来たからだけど?リリアは一緒じゃないんだなって思って声をかけたんだよ。」
私とリオンは同じ授業を受けていたが、私がいつものようにジュード殿下と合流してからカフェに行くと思っていたらしい。
まさか…約束を忘れるなんてね。
お陰でちょっと色々とありましたよ。
そんな事を思っていた私だが…。
ふと、ある事に思い至る。
なんか…これってヒロインのイベントっぽくない?
いやいやいやいや…そんな…まさか。
そんな…ねぇ!…無いよ、ある訳ないって!
何故か脳内で一人ツッコミを入れる私。
いや、やっぱりない。
だって″ヒロイン誰よ?″って話だし。
まさかのチャミシル様?辺境伯家のご令嬢がヒロイン?
ヒロインなのに既に犯罪者な訳?
無いって!やっぱり無い。
それに、イベントなら何かしら助けに来たり…。
来たわ…ロマネス殿下!
いやいや、間に合ってないし…って私が台無しにした?
いや、それにしても……。
ちょっと冷静になりましょう。
令嬢達に詰め寄られるヒロイン。
それを助けたのは偶然、通りかかった王子様。
ヒロインを元気づけるためにランチに誘う。
そして好感度アップ。
…詰んだ。
こんなイベントありそうじゃない?
偶然も何もカフェに行くのに通る中庭だけどね。
でも…ありそう。
って事はチャミシル様はそれを狙っていたのかな?
既にロマネス殿下に助けに来るように言ってたって事は…ヒロインとして前世の記憶があるのかな?
でも、それなら…ロマネス殿下が来るまで待つか。
イベント成立させたかったら、私なら意地でも待つと思うし。
うーん…と考え込んでいると、突然ロマネス殿下が私のお皿のおかずを奪う。
私が食べたくて残しておいた物を…奪いやがった!
「僕と食事をしているのに考え事か?」
「い…いえ、冬季休暇の事が気になっていただけですわ。」
ロマネス殿下がムスッとして私を見つめるので、適当に誤魔化す。
すると、ロマネス殿下はニヤリと笑った。
「そういえば…聞いたぞ。二人は補講があるんだってな!」
意地悪そうに笑うロマネス殿下。
恐らく、成績が悪いからだと勘違いしているのだろう。
だが、説明するのも面倒なので苦笑いを浮かべて頷くと…。
何を思ったのか、ロマネス殿下はとんでもない事を口にした。
「よし!僕も一緒に受けてやる。」
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リリアはいつだって無自覚にやらかしますよね。




