あざとくって難しい
…何と言われても、まさか覗いていたなど言えないし。
私は虫を避け…スッと姿勢を正す。
「ジュード殿下をお待ちしていたら、声がしたものですから…何事かと確認していたところですの。」
然りげ無く…貴女方の声がデカいのが悪い的なニュアンスで微笑んでみる。
あくまで!あくまで、人の声がしたから覗いたという体で通す。
「人通りの多い所ですから…そういった事は、此処ではあまりなさらない方が宜しいのではなくて?」
こんな目立つ所で虐めてる方が悪いのよ…と、遠回しに言ってみる。
態と嫌味に聞こえるような言い回しにしたせいか、メアリ様方はターゲットを私へと切り替えた。
「だからって、覗き見なんて恥ずかしくはないのかしらぁ?」
「いくら声がしたからって覗くなんて考えられませんわ!」
「日頃から色々な男性方と仲良くされてる方は、″はしたない″という言葉を知らないのかしら?
」
…凄い。
練習する暇ないのに息が合ってる!!
思わず拍手しそうになったが…よく考えたら私が貶されているので、拍手したら認めてると思われちゃうわね。
私はニコッと一度微笑むと、右手の人差し指を右顎に当て…コテンと首を傾げる。
口は少し尖らせながらも口角は上げ気味に。
「日頃から…って、私の事をそんなにも見ていらっしゃいますの?気づきませんでしたわ。…そんな事より、先程のお話で気になる事がございましたの。」
いつも貴女は私を盗み見してるのか?と惚けてみる。
メアリ様方は黙ったまま、私を睨んでいるので…それなら遠慮なく話させて頂こう。
「ジュード殿下をお慕いしている方が減ったのに、どうして怒っていらっしゃいますの?恋敵は少ない方が宜しいのではなくて?…もしかして、ジュード殿下が他の方と婚約したら皆様もロマネス殿下に鞍替えするおつもりなのかしら?だから怒っていらっしゃるのね!」
なんて浅ましい!…とまでは言わないけども。
言葉の最後は口の前で両手を重ね…微笑む。
自分で言うのとなんだが…このあざとそうなポーズは、やっていて恥ずかしい。
むむぅ…リオンならこんな事を思わないし、自然なのにな!
「ところで、他の方が抜け駆けしたら…同じように問い詰めますの?仲良し小好しで過ごしてますのに恐ろしいわね。…そんな事をしてる間に他のご令嬢に殿下方を取られてしまったら、目も当てられませんわね!」
コロコロと表情を変え、最終的に笑顔に戻す。
私の言葉にメアリ様方は顔を見合わせる。
互いに目が合うと、気まずそうに顔を逸らした。
「も…もう…こんな時間ですのね!私達もランチに行かなきゃ!!…そういう事ですので、失礼しますわ!」
メアリ様がなんとも気まずそうに声を発すると、他の令嬢方も頷き…私とチャミシル様を残したまま去っていく。
…きっと、これからの彼女達は互いに気まずくなるんだろうね。
前世で読んだ小説なんかでも、抜け駆けした令嬢を問い詰める…みたいなシチュエーションがあった。
やっぱり物語では定番なのかな?
「助けて頂かなくても結構でしたのに…。」
私がメアリ様方の背中を見つめていると、ボソリとチャミシル様が呟く。
思わずチャミシル様を見ると…何故か怖い顔で睨まれた。
そして、チャミシル様は私に一礼すると…メアリ様方と同じ方向へ歩いて行ってしまった。
「別に…助けたつもり無いんだけど?」
私は一人、首を傾げる。
そして…誰もいなくなった中庭で、再びジュード殿下を待った。
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更新が遅くなって申し訳ないです。
ちょっと上手く書けてない気がするので、もしかしたら書き直すかもしれません。
すみません。




