尋問て難しい。
私の呟きに面白くなさそうな顔で睨むライル。
明らかにイライラしているのが見てとれた。
「教えて欲しい?ならば、ハンザン・マッコリン氏が今何処にいるのか教えなさい。」
再びライルの向かい側に座り、ライルへ話す様に促す。
ライルは逡巡するも…諦めたのか、話し始めた。
「ハンザンはマッコリン子爵家の別荘にいる…。行ったところで扉には魔法で細工してあるから鍵が無ければ入れない。」
ふんっと鼻を鳴らし嫌な笑みを浮かべるライルは、私達が別荘に行ったところで救出は出来ないと思っているようだ。
「そう…なら、鍵があれば良いのね?鍵は貴方の実家であるメイカー公爵が持っているのかしら?…因みに、他にも幾つかの建物に何かを隠していたりする?」
顎に人差し指を当てながら笑顔で問いかけると、ライルは眉を寄せ怪訝な顔で私を見る。
「…どうして、そんな事を聞く?」
疑うような表情で私達を見るライル。
それに対し、私とリオンは笑顔を崩さない。
「うーん…どうしてかな?」
「あれじゃない?鍵の束を見たからだよ!」
私が惚けていると、リオンが隣から話しかける。
私達の会話に更に訝しむライル。
「鍵の束だと?何処で見たんだ!」
「何処だっけ?…それで、どうなの?他にもあるの?」
ライルの質問には答えず、逆に質問を返すと再び黙るライル。
…尋問て難しい。
刑事ドラマの犯人は…所詮はフィクションなのね。
ベラベラ喋る…なんて事は有り得ないんだよ。
「教えてくれたら、僕達がどこで何を見たのか…それ以上の事を教えてもいいよ?この際だから全部話してくれたら、僕達も同じ対価を支払う。」
リオンの提案に黙っていたライルの瞳が揺らぐのが分かった。
…リオンは取引が上手いようだ。
同じ双子なのに…私は直球になってしまっていけないな。
「…全部だと?それだけの対価があるとは思えないが?」
探るような目でリオンを見るライルに、リオンはニッコリと笑う。
その顔は私から見ても何を考えているのか分からない。
「信じないなら構わないけど…いいの?少しでも罪を軽くしようとかは思わない?今なら助かる命も…貴方が捕まった事で危険になる事は無い?そうしたら貴方の罪は更に重くなると思わない?」
リオンの問いかけにライルは俯くと、葛藤しているのか頭をガシガシと掻く。
私はというと、よく刑事ドラマで言うやつー!と思いながらリオンを見つめていた。
そんな私にリオンは笑顔を向ける。
それが何故か「うるさいよ?」と言われているように思えたのは気のせいではないだろう。
「…マッコリン子爵家の倉庫と、チャミシル辺境伯の領地の外れにある建物…ワインバル王国のメイカー公爵家の別荘に同じくメイカー公爵家の本邸の離れの4つに獣人を入れる檻や薬がある。人命に関わるとしたらハンザンだけだ。」
ライルが話した建物の数と鍵束の鍵の数は恐らく一致するだろう。
ハンザンだけを救出すれば、とりあえずは大丈夫そうだと安堵する。
「話してくれてありがとう。鍵の束はメイカー公爵家で見つけたんだ…メイカー公爵の捕縛の時にね。獣人達の保護も済んでいるし、リシェブール王太子殿下からも事情は聞いている。」
ザックリとだが、既にメイカー公爵がワインバル王国で捕縛された事を伝えた。
勿論、リシェ様の事も…。
ライルは衝撃に耐えられなかったのか机へと頭を打ち…茫然と空中を見つめた。
その表情は無感情のように見える反面…とても感情的にも見える。
「…そんな…俺は…何の為に…?」
ライルはそう呟くと…絶望したのか、瞳からは涙が溢れ出した。
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今日も遅くなって申し訳ないです。
なんか…上手く書けなかったです、すみません。




