まさかの渾名と尋問
勢いよくライルの居る部屋まで来たものの…。
此処まで来る間に頭が冷静になってしまった私とリオンは、部屋の前でどうしたものかと悩む。
勝手に尋問しちゃ…マズくない?
でも聞きたいし…うーん。
…大五郎さんでも探すか…?
そんな事を悩んでいると、突然…目の前の扉が開いて中から大五郎さんと記録係の方が出てくる。
「大五郎さん!」
「おっ?リオン様にリリア様、どうかされましたか?」
丁度よかった!と思って大五郎さんに声をかけると、目の前で吃驚した顔の大五郎さんが私達を見て問いかける。
「ライルに聞きたい事があるの!でも…勝手に私達だけで聞いたらダメでしょう?一緒に聞いてもらいたいんだけど…。」
ライルを尋問するのに付き合って欲しいと懇願すると、大五郎さんは「お安い御用です。」と笑顔で頷く。
そして今出てきたばかりの部屋の扉を開ける。
大五郎さんはクルリと此方に向き直ると、不思議そうな顔で私を見た。
「…ところで、大五郎さんとは…俺のことです?」
あっ…ヤバッ!
こ…心の中で呼んでいた名前だった…!
私がアワアワとしてると、大五郎さんはクシャっと顔を綻ばせる。
「懐かしい名で呼ばれて驚きました。昔…聖女様からその様な渾名で呼ばれていたんです。」
「…へ?聖女様も?」
何故か嬉しそうにする大五郎さんに対し私の頭はかなり混乱していた。
だって…普通は聖女様と面会する事なんて難しいし、まして渾名で呼ばれる仲なんて。
「えぇ、騎士団に在籍していた時にリチャード様と聖女様の護衛に当たった事があって…その時に“どう見ても大五郎だろ!“と仰って。」
昔を懐かしみながら、何故か上機嫌の大五郎さんは私達を部屋へと促す。
聖女様…私と同じ感性なの?
ま…まぁ、本人が嫌がらないし…このまま呼んでも問題無いのかな?
なんか…申し訳ないです。
部屋に入れば…ブスくれたライルが頬杖をつきながら、私達を睨んでいる。
…もう股間を蹴り飛ばした事に対する怯えはない様で安心?した。
「貴方に聞きたい事があるんだけど…ハンザン・マッコリンって知ってる?」
私はライルの向かいに座り、ど直球で質問する。
隣に座ったリオンがギョッとした顔で私を見たけど…気にしない。
回りくどいのは好きじゃ無いし、取引する訳でも無いから。
だが、ライルは睨んだまま質問に答える気はない様だ。
そんな彼の前に、私は先程の姿絵を差し出す。
「本来…貴方じゃなくて、この方が王城へ勤める予定だったのよね?この方は今は何処にいるのかしら?」
姿絵にピクリと眉を動かしたが、それでも答えようとはしないライル。
私は…ど直球で行きすぎたかなと少しばかり後悔する。
「…彼、魔法薬研究所に勤めていたみたいなの。とても優秀な研究員だったらしいけど…知らない?」
頰に手を当て、ほうっと溜息混じりに問いかけるが…彼はそっぽを向いてしまった。
「そう…仕方ないわね。…チャミシル様にでも聞こうかしら。」
私は姿絵をヒラヒラとさせ、困った顔で呟くと…スッと席を立つ。
そんな私をライルは目だけ動かして見ていた。
「ちょっ…ダメだよ、リリア。…今はチャミシル嬢は…!」
「あっ…そうね、そうだったわね。」
席を立った私の腕をリオンが慌てて掴んで留める。
…しかも、よく分からない事で。
でも、何かあるのかと適当に言葉を返すと目の前のライルが明らかに動揺した。
「おいっ!ジェ…いや、チャミシル嬢に何かあったのか?」
ガタガタと机を揺らし、ライルは私とリオンを交互に見る。
その顔は動揺と不安が入り混じっていた。
「…そんな事を知っても、捕らわれている貴方には何も出来ないでしょ?」
コテンと首を傾げ、私とリオンは互いに顔を見合わせると…ライルは更にガタガタと音を立てて私達へ迫る。
「どういう事だ!ジェシカに何があった!?…無事なのか?」
ライルは声を荒げ、更に暴れ出した。
…本当に心配なのね。
そして、チャミシル様ってジェシカって名前だったのね。
「そんなに心配なら…犯罪なんか犯さなければ良かったのに。」
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今日も遅くなって申し訳ないです。
切れ目が見つからず、中途半端な終わりです。




