魔法学の先生
「リリアさん、此方をどうぞ。」
翌日の午後、ランチを終えた私は学園の演習場へ来ていた。
そして…何故か和かに笑う魔法学の先生からプリントを一枚渡される。
当初の予定では、今日の午前中に模擬戦を行う予定だったが…昨日中に変更になった。
騎士団で鍛錬していた私の元に、魔法学の先生が予定の変更を告げに来たのだ。
…そもそも、模擬戦などの予定は無かったという説明から始まり。
ロマネス殿下の相手が私だと聞いた先生方が会議を行い…。
そして…午前の授業ではなく、時間に余裕がある午後にしよう!となったらしい。
なので、午前中は経済学の授業が受けられました。
あと…一番気になっていた“本気で“の部分だが、先生に確認したら「ロマネス殿下が言ったのなら良いんじゃないか。」という結論になった。
それでも不安になった私は、邸に戻ってリシェ様に相談すると…リシェ様は「じゃあ、僕も観戦に行くよ!」と意味不明な事を返された。
リシェ様が観戦に来ると何か変わるのかな?と疑問に思いながらも、リシェ様の安全を考えてリオンにリシェ様の事をお願いした。
これでもし、流れ弾が飛んでいってもリオンが何とかしてくれると思う…多分。
そんな訳で…現在、目の前にはニコニコしながらプリントの説明をする先生がいるのだが…。
「出来る範囲で良いので、このリストの魔法を使ってもらいたいんです。」
「はぁ…。」
リストには上級と思われる魔法が火から順に二種類ずつ並んでいる。
どうやら、模擬戦で使用して欲しい魔法のリストのようだ。
「今日の午前の授業で説明した魔法です。ぜひ、リリアさんに実際に使ってもらって生徒達には正しく理解してもらいたいんですよ!…出来ないのはありますか?」
出来る前提で話が進んでいるのは気のせいでは無いよね?
…私、魔法学上級の授業は受けてないんだけどな。
まあ…リストにあるのは既にお祖母様から教わっていたものだから問題は無いけども。
「いえ、問題ありません。」
「そう?じゃあ、お願いしますね!リリアさんの事は何年も前から知っていてね、初等部のマキシアから君たち双子の噂は聞いていたから楽しみにしてます!」
私の返答を聞くなり目を輝かせて嬉しそうに手を振りながら去っていく先生を私は無表情で見ていると、演習場の入り口が何やら騒がしくなった。
リシェ様が手を振りながら現れたのだ…。
…アイドルなのかな?
リシェ様は直ぐに私に気づくと嬉しそうに更に激しく手を振った。
それを見ていた他の令嬢は鋭い目付きで私を睨む。
…怖いんだけど。
ただでさえロマネス殿下と対決をする私は目立っていると言うのに…嫌がらせに来たのだろうかという気持ちでスンッとなった。
それが表情にも出たようで、リシェ様は近づきながら苦笑する。
「兄上!?…まだ、オステリア王国にいらしたのですか?」
リシェ様と私の間に割って入るように、ロマネス殿下が駆け寄ってきた。
「ロマネスが模擬戦に出ると聞いてね、折角だから観戦してから帰国しようと思ったんだよ。」
リシェ様は和かに笑って答えると、ロマネス殿下は今にも舌打ちしそうな表情で「そうですか。」と返した。
「ふふっ、他にも大勢の生徒が観戦するようだね。二人の本気の戦い…とても楽しみだよ。」
嬉しそうに笑ったリシェ様はロマネス殿下と私を交互に見ると、踵を返して観客席へと歩いて行く。
「リリア嬢!昨日も言ったが本気で構わない、僕も本気を出させてもらう!!」
明らかに不機嫌になったロマネス殿下は、私へと向き直るとそう宣言して戦いの準備に入る。
どうやらこれがリシェ様の策だったようだ。
…大丈夫かな?と、思いながら私も戦いの準備に取り掛かった。
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