失敗…でもない
「ねぇ、リオン?」
夜会から数日、私達の計画はそれなりに進んでいる…と思っている。
ジュード殿下とは朝の挨拶から始まり、お昼はランチ、放課後は一緒に騎士団で訓練し…帰りは公爵家まで送って頂きお茶をする所までがセットだ。
実際はお茶会ではなくお勉強会だったりもするが、そんな事は邸に居なければ分からない事なので誰も知らないけども。
…と、それは昨日までの事で…。
今現在、私は自身の机を見つめ…そしてリオンを見た。
机というのは所謂ホームルーム的な事をする為の教室で使用してる物で、1日に一度は使っている机だ。
…そこには所狭しと落書きがされていた。
「…これってヒロインが遭遇するイジメじゃないのかなって思うの。」
悪役令嬢を目指す私としては…逆かなって思ってる。
そんな疑問をリオンにぶつけると、リオンは同じように首を傾げた。
「そう…だね。…でも、確かに今のリリアは微妙だよね。あと、ここのスペルは間違っているし…ここもちょっとニュアンス的におかしいかな?」
落書きを眺めながら間違いを指摘するリオンを見て、私も同じように落書きを見つめた。
「あっ!此処も違う…これじゃ“リリア“じゃなくて“ラリエ“になるわ。…微妙ってどういう事?」
何故か落書きの間違い探しに夢中になってしまったが、リオンの言葉が気になったので聞き返す。
…私の立場が微妙なのかな?
それとも…私の悪役令嬢が微妙って事なのか…?
「誰から見ても交際するのに問題ない二人が、ただただイチャイチャしてるだけに見えてるんじゃない?…夜会ではリナリアから奪った悪女みたいで上手くいくかなって思ったけど…今のリリアの行動は後から来た奴が自分の獲物を掻っ攫っていったようにしか見えないし、それをよく思わない人が落書きしてるのかな…とは思う。」
…そのまんまじゃん。
リオンの指摘に、自分の行いを省みる。
「…計画は失敗って事?」
上手くいっていると思い込んでいただけに、かなり刺さる。
今から新たに計画を練らなければならないのかと落胆し始めた頃…リオンは私の机に手を翳し、ゆっくりと撫でた。
微量の魔力でサッと落書きを消したリオンは何やら考えているようだ。
「とりあえず、このままで良いと思うよ?」
考えが纏まったのか、うん!と満面の笑みで私を見たリオンに…私は困惑気味に頷くと、ホームルームが始まる鐘の音が鳴り響き…慌てて席へと着いた。
それから数日…ほぼ毎日のように落書きは増えた。
そしてそれは、リオンによって消され続けた。
…他のイジメは特になく、裏庭に呼び出される事もない。
それが逆に面白くないなと思い始めている自分はかなり捻くれているのかもしれない。
誰か私を裏庭に呼び出してみてよ…受けて立つから!と気合いばかりが空回りしている。
仕方ないから、ジュード殿下ともう少しイチャイチャしてみた。
そしたら今度はロマネス殿下が超不機嫌な顔で割り込んできた。
もしかしたら、そっちの気があるのかとドキドキしながら様子を見る。
「ジュードと二人で話があるから、席を外してもらえるか?」
いつものようにカフェでランチをしていた私達の前に、ロマネス殿下は腕を組んで人を見下ろすような態度で私を睨みつけている。
そして…その後ろにはチャミシル様が隠れているのが見えた。
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