見失っていたもの
私の叫びの後…話が中断してしまった事に対して謝罪すると、皆様方は気にする事なく和かに微笑んでくれた。
とても良い人達だと思う。
私はもっとしっかりしないといけないけども…。
リオンもリーマスお兄様も話が終わり…再び沈黙が訪れそうになったが、それを阻んだのはクロード殿下だった。
「僕から…というか、ジュードから皆に話があるそうだよ。」
そう言うとクロード殿下はジュード殿下に話すように促す。
気まずそうな面持ちで、どう話そうかと悩みながらもジュード殿下は意を決して声を出した。
「僕は罪を犯しました。その罪を償う為、昨夜…国王陛下へ罪の告白をしました。」
ジュード殿下の言葉に私達は驚き…目を見開いた。
だが、よく見れば…クロード殿下とリーマスお兄様は知っていたようだ。
「…お兄様?」
昨夜、私はジュード殿下に罪の告白を待って欲しいと告げて了承して頂いた。
その話はリーマスお兄様にも話していた…。
「…リリアがジュード殿下を救いたい気持ちも分からないでも無いよ。だけどね…罪を犯した人間を裁かない訳にはいかないでしょ?」
リーマスお兄様は優しい口調で私に語りかける。
だが、その内容に私は同意しかねる…。
「私は罪の告白を待って頂いただけです。…他の方々を捕らえる為に協力して頂きたくて…。」
私の言葉にリーマスお兄様は緩く首を振る。
そして笑顔を消した真面目な顔で私を見た。
「リリア、それでは救えないんだよ。ジュード殿下が罪を認めたのならば、それはすぐに国王陛下に告げるべきだし…その上で協力を願うべきなんだ。…罪を償うチャンスを君が奪ってはいけない。待たせた事でジュード殿下の立場が更に悪くなったらどうするつもりなの?」
リーマスお兄様の言葉に私は唇を噛んだ…。
…そんなつもりでは無かった。
だが、確かにリーマスお兄様の言う通りなのだと理解出来る。
理解出来るけど…だけど…!
「リリアのそれは同情に見えてしまうよ?…よく考えてご覧。ジュード殿下の犯した罪で傷ついた獣人達は、僕らを信じて任せてくれてるのでは無いの?ワインバル王国からの使者が来ないのもそうだろう?その信頼を裏切る事は出来ないんだよ。」
続いた言葉に…私は瞳を伏せた。
脳裏に浮かぶ人達を思い出し、その時の自分の気持ちも思い出す。
捕らえられ…怯えた獣人達は、今は領地で過ごしている。
…だが、未だにその姿は完全獣化のままだ。
ゆっくりと瞳を開き私はリーマスお兄様を見つめ一つ頷いた。
「ジュード殿下、昨夜は申し訳ございませんでした。私の浅はかな考えで…ジュード殿下の償いを妨げる所でした。」
私はソファーから立ち上がると…床に両膝をつき深く頭を下げ、ジュード殿下の言葉を待った。
「いや、そもそも僕のせいなのだから頭をあげて欲しい。」
そろそろと頭を上げれば狼狽えながらも私を見るジュード殿下がいた。
ジュード殿下の言葉に一息付くと、互いに肩の力が抜けたように思う。
「…もう良いかな?僕からもジュードに言っておきたい事があってね。」
私達の遣り取りを真剣な目で見ていたクロード殿下は一度溜息を吐くと、ジュード殿下に声をかける。
ジュード殿下はビシッと体を硬直させ、クロード殿下に体を向けた。
その間に私はリオンとアレスに立たされ…座らされた。
勝手に動いて大丈夫かと不安になったが、特に何も言われないし…見向きもしてないので大人しく座る事にした。
「僕はね、ジュード。人に施されるのが嫌いなんだよ…僕達は王族だからね、施す側で無ければいけないと思っているんだ。」
クロード殿下の言葉はとても優しい声だったが、その顔は決して笑う事がなく…とても冷たい目でジュード殿下を見つめていた。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。




