罪の深さ
応接間に暫しの沈黙が流れる。
ジュード殿下が再び俯いた事で、リーマスは話を続けた。
「ジュード殿下が国王陛下の元へ行く事を、リリアは止めましたよね?」
「…あぁ、少し待つように言われたよ。」
リーマスの問いにジュード殿下は俯いたまま答える。
「どうやらリリアはジュード殿下を救おうと思っているようだ。…だが、私は反対です。」
リリアは…いや、リオンもそうだ。
二人は今まで様々な人を救ってきた。
…リシェブール王太子殿下は本心を暴かれ、罪を犯すギリギリのラインで止めていた。
だが、ジュード殿下は違うと思っている。
「貴方は侍従の罪を知っていながらも…止める事はしなかったですね?それが、どういう事なのか貴方自身は理解していますか?」
リーマスはジュード殿下から目を離す事なく問いかけた。
その問いにジュード殿下は顔を上げると、リーマスが見つめていた事に気づき俯きかける。
「ジュード殿下…貴方はワインバル王国の公爵家で侍従とロマネス殿下、そしてチャミシル嬢が話す事を聞いていましたね?」
俯きかけるジュード殿下を睨むように見つめると、ジュード殿下は深く頷いた。
「…貴方は人身売買の件をご存知でしたか?」
リーマスは悩んだ末…やはり聞いておくべきだと判断し、ジュード殿下へ問いかける。
ジュード殿下は目を見開き、すぐに顔を戻すと頷いた。
「…あぁ、話を聞いて知っていた。」
ジュード殿下の答えにリーマスは深い溜息を漏らすと…再び話し出す。
「国家間の問題に発展する事は勿論、予想出来ましたよね?ワインバル王国とオステリア王国…そしてエスティアトリオ王国が三つ巴の戦争になる事までは想像できませんでしたか?…もし、そうなっていたらエスティアトリオ王国の一人勝ちですけどね。」
…人身売買はどこの国でも重罪だ。
まして…最強と謳われる獣王国から人を攫うなど…。
魔法や剣では獣人の力やスピードには太刀打ち出来ない事は誰でも分かる事だ。
そして…人身売買のルートをオステリア王国が手助けしたとなれば、ワインバル王国だけでなくオステリア王国とも戦争になる。
更にオステリア王国は巻き込まれた事でワインバル王国とも戦う事になるだろう。
結果など分かっていたとしても、戦わなければならないオステリア王国の中で…更に内乱が起こるかもしれない。
「貴方のした事は…オステリア王国を潰す行為です。クロードを王太子にしたいから?それなら辞退すれば良かったのです。…それとも戦争を引き起こし、極刑を覚悟していたのですか?」
そこまでの覚悟など無かったのだろう…。
ジュード殿下は見るからに狼狽え、そして今にも泣きそうな顔でリーマスを見た。
だが、そんなジュード殿下にリーマスは顔色一つ変えず言葉を続けた。
「万に一つも極刑を免れたとして…それでも貴方は国民全てから恨まれる覚悟はありましたか?」
戦争まで行ったとして…果たして国王陛下がそんな温情を与えるとは思えないが、それでも助かった場合。
今度は国民が許さないだろう。
「それだけの事をした償いを貴方にはして頂きたい。国王陛下に告げた上で、残りの膿を出すために私達に手を貸して下さい。」
ハラハラと涙を流すジュード殿下にリーマスはそっとハンカチを差し出すと、深々と頭を下げるのだった。
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今日は一日中…リーマスが私の頭の中で激怒してました。
今も…言い足りないのか怒ってる感じで、脳内を占めています。




