リーマスとジュード殿下
ーーーーー私がアレスに説教をされている頃。
リーマスお兄様はジュード殿下の待つ応接間に来ていた。
応接間の入り口には護衛が二人、ノックをしてからジュード殿下の許可を貰い入室すれば…中にも数名の護衛がいた。
ソファーに座るジュード殿下は、リーマスを向かいのソファーへ座るよう促す。
「それで…?」
「お寛ぎのところ申し訳ございません。ジュード殿下に少しお伺いしたい事がございます。」
ジュード殿下はリーマスに用件を話すように声をかけると、リーマスは頭を下げつつ話しかけ…ジュード殿下が頷いたのを確認すると本題に入った。
「ある程度の事情はリリアより聞いておりますが、ジュード殿下は今回の…いや、侍従が何をしようとしていたのかをご存知でしたか?」
リーマスは今回の事件…と言いかけて止めた。
リリアのように、ジュード殿下を信じてはいないからだ。
もし…ジュード殿下が本当はロマネス殿下側の人間だったとしたら、事件のことは迂闊に話せないと思った。
「…本人から直接聞いた訳ではないが、恐らくクリスティア家に入り込み領地の情報を狙っていたと思われる。アイツはクリスティア領が繁栄してる事に疑問を持っていたから…。」
ジュード殿下の回答は全てでは無いだろうと感じた。
恐らくジュード殿下は人身売買の件をまだ悟られていないと思っている。
公爵家でもある我が家に…もしかしたら侍従は違う理由でも潜入していたのかもしれない。
例えば、貶める為…とか?
「やはり…私はリリアのようにジュード殿下を信用する事は出来ないようです。」
それまで表情を作る事なく話していたリーマスだが、いつものように微笑んだ。
そう、完全なる作り笑いを顔に貼り付ける。
「リリアやリオンはまだまだ貴族としての勉強が不足しているようです。…ジュード殿下、貴方も。」
ニヤリと笑うとジュード殿下は眉を寄せリーマスを見た。
「そのように直ぐに顔や態度に出してはいけません。ジュード殿下が嘘を言っていない事は認めますが、全てを話して頂けている訳でもないのでしょう?」
リーマスはジュード殿下が直ぐに顔に出てしまう事に対して注意し、そして先程の答えに対しても指摘した。
するとジュード殿下は目を見開き、慌てて顔を戻す。
「学園の卒業まではあと2年半はありますから、それまでに王族らしい振る舞いを身につける事をお勧めします。」
リーマスの言葉に頷く事はせず、ジュード殿下は黙ってリーマスを見た。
リーマスは更に言葉を続ける。
「本来ならば…貴方は既にそれもマスターしていてもおかしくは無かった。貴方の成長を止めたのは捕らえた侍従です…貴方を最初から利用するのが目的だった彼に同情など必要は無いのですよ?」
リーマスの表情は変わらないが、声は先程よりもキツイように感じ…ジュード殿下は俯き黙り込んでしまった。
こんな風に諌められるのは久しぶりなのだろうか?
それとも、初めてなのか…。
「…僕は王族では無くなるのだから、今更学ぶ必要など無いだろ?」
俯いていたジュード殿下が顔を上げると切なそうな笑みを浮かべ、反論する。
だが…
「それを決めるのは貴方では無いはずです。」
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少し短めですみません。




