兄妹と家族会議
『ハーイ!皆んな元気ー?リリア・クリスティアだよ。今夜は“簡単!悪役令嬢“の作り方を教えるね!まず用意するのは……ゴフッ!?』
お父様が閉幕の挨拶を済ませ、私とリオンはゲストを見送っている最中…私の脳内は何故か料理番組を妄想していた。
今まさに説明しようとしたところで、何故か隣にいたリオンに脇腹を小突かれ…現実へと引き戻される。
『…馬鹿な事を考えてないでよ。さっきの事…後で説明してくれるんだよね?』
リオンは笑顔でゲストを見送りながら、テレパシーで私にツッコミを入れる。
これ…後でお説教パターンだ。
全てのゲストを見送ると、私もリオンも一旦は部屋に戻る。
直ぐに着替えを済ませるとリビングへ向かった。
「失礼します。」
ノックをし中へと入れば既にリオンとリーマスお兄様…アレスもいた。
いつもならリシェ様も此処にいるのだが、今夜は王城に泊まるそうだ。
そんな事を思いながら私は中に入ると、直ぐにリナリアも入室する。
「お姉ちゃん!どういう事!?」
リナリアは私を見つけると凄い勢いで詰め寄ってきた。
懐かしい呼び方に思わず顔が綻びそうになる。
「あー…っと、計画してたのと違う形で何故か計画通りになりました?」
なんと説明しようか悩みながら…何故か語尾に疑問符をつける。
当初の予定では、一旦フリーになった私はジュード殿下の前でクロード殿下や他の婚約者の居ない方々と仲良くし…ジュード殿下にヤキモチを妬かせ、私に夢中になるように仕向けて周囲の令嬢から反感を買いチャミシル様を引き摺り出す予定だった。
…今考えるとかなり無理があるな。
それはジュード殿下が私に恋してるのを前提として考えた計画だった。
今回、意図せず彼の気持ちを聞き出してしまった私は計画が失敗したと思っていたのだが…。
違う形で良い具合に周囲が勘違いしてくれた。
…巻き込んでしまったジュード殿下には後日、何か良い物をお贈りします!
そして…妹から婚約者を奪った悪役令嬢的ポジションになった私。
それも機転を利かせたリナリアのファインプレーのおかげである。
ありがたやー…。
って事を侍従を捕らえた事も含めて簡単に説明すると、この部屋の時間が止まった。
誰も動かない…息してる?
え?私だけ動ける世界に来ちゃった感じかしら?
「…お姉ちゃん…。」
沈黙を破ったのは、未だに動揺を隠さず私を“お姉ちゃん“と呼ぶリナリアだった。
リナリアは私の顔を見て…深い溜息を吐く。
…そんなに私は酷い顔かしらと不安になってしまうではないか。
「お姉ちゃん…いくら自分よりも体格が良い男性だからって急所を狙うのはどうかと思う。」
「「「そこ!?」」」
リナリアの言葉に男性3人がツッコんだ。
そんな男性陣を横目にリナリアは私に「淑女はしてはダメ!」と念を押す。
素晴らしい淑女代表に言われ…私は大人しく返事をした。
「僕達が知らない所で事件が起こり過ぎてて、脳内の処理が追いつかないよ。」
今度はリーマスお兄様が溜息を漏らす。
それに深く同意するリオンとアレス。
…そして、私もウンウンと頷くと何故か三人に睨まれてしまった。
事件は私のせいじゃないのに。
「因みに、ジュード殿下ですが…この邸に残ってます。」
「「「「はぁ?」」」」
お伝えしてなかった事を思い出し伝えれば、口をあんぐりと開けたまま固まった。
顔…凄い事になってるよ?
ジュード殿下の侍従が捕らえられてしまっているので…代わりの侍従が到着するまで我が家でしっかりとお護りしている。
侍従が捕らえられた事はロマネス殿下には知られたくない事なので、ジュード殿下は先に帰ったと思わせていたのだ。
「そろそろ、ジュード殿下は帰られると思いますが…お会いしておきますか?」
お見送りとなると物々しくなりそうだ…と、立ち上がると固まっていたリーマスお兄様が慌てて私を止めた。
「…まだ邸にいるのなら、直接話を聞く。今日が難しいのならば後日に話ができる様に都合を聞いてくる。」
そう言ってリーマスお兄様は一人で部屋を出て行ってしまった。
「ジュード殿下の事はリーマスお兄様に任せるとして、問題は侍従だね。出来たら僕とリリアで話が聞ける様にお父様に頼んでくるよ。」
リーマスお兄様に続いてリオンも部屋を出た。
リナリアは「私も…。」とリオンに続いて部屋を出て行ってしまった。
部屋に残ったのは私とアレスだけ…。
チラッとアレスを見ると、見惚れてしまうほど良い笑顔で私を見つめていた。
「…リリア、少し話をしようか。」
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少しばかり風邪気味です。
明日はもしかしたら更新出来ないかもしれません。




