素晴らしい演技力
昨日217部を書き直しました。
さらに夜中に218部を更新しました。
ジュード殿下と共に邸へ戻ると、私達の姿を見た令嬢方が騒めきだす。
どうしたのだろう…と、目をパチクリし…やらかした事に気づいた。
私とジュード殿下とアレス。
だが、アレスは使用人の変装をしている。
つまり傍から見たら私とジュード殿下が二人きりで庭園に居たのだと思われてもおかしくない。
内心…かなり狼狽えているが、顔には出さないようにし笑顔を作った。
すると、リナリアと目が合った…かと思ったら何故かリナリアは私とジュード殿下の傍まで寄ってくる。
そして美しい所作で頭を下げ、私を見つめた。
その顔は気丈に振る舞っているように見えただろう。
元婚約者と…姉。
「久しいな、リナリア嬢。まさか…君が夜会にいるとは思わなかったよ。」
少し辿々しく話を振るジュード殿下に、リナリアは困った様に笑む。
「本来ならば夜会に参加出来る年齢ではございませんが、お姉様を祝う夜会にどうしても参加したいと父に頼んだのです。」
そう告げたリナリアは今度は私へ顔を向けた。
……言われるまで気づかなかった。
確かにリナリアは夜会に参加できる歳ではなかった…と、リナリアを見た。
リナリアは私の目線に気づき微笑む。
だが、その顔はどこか切なそうにも見える。
「おめでとうございます。……お姉様はその…ジュード殿下と何をお話しなさっていたのですか?」
お祝いの言葉に続け、リナリアは私へと問いかける。
その意図に気づき、私は口角を上げ…出来る限り嫌味に見える笑みを作った。
「ありがとう…だけど、貴女の質問に答える道理はなくてよ!私が誰と何をしていても貴女には関係ないでしょう?」
周囲に聞こえるよう少しだけ声を張ると、私はジュード殿下の腕に腕を絡ませ…ては無いけど周囲にはそう見える様に近づいた。
ジュード殿下はビクリと体を強張らせたが、周囲には気づかれていなかっただろう。
何故なら、すぐに周囲が騒めき出したから…。
会話らしい会話は届かないが、ヒソヒソと何かを話している声が聞こえ…リナリアは周囲を見渡す。
そして、瞳に涙を溜めると私とジュード殿下を交互に見て…唇を噛み締める。
「し…失礼…致しました。」
震える声で一礼すると、リナリアは私達から逃げる様にし会場を出て行った。
素晴らしい演技力だ!
今すぐにでも女優として彼女は舞台に翔けるだろう!
リナリアの演技力に心を打たれた私だが、慌てて我に返り…ジュード殿下へ顔を向ける。
「ジュード殿下、今夜は楽しいひと時をありがとうございました。」
微笑みながら告げれば、周囲は一層…騒めいた。
主にメアリ様のお仲間方が騒ついている。
「ああ、僕もとても楽しかったよ。」
ジュード殿下はいつもの少し嫌な感じに見える笑みを私に向けると、会場を後にした。
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